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図1 総務省はデジタルデバイド対策のために周波数を確保して補助金を準備している  (クリックすると画面を拡大)
図1 総務省はデジタルデバイド対策のために周波数を確保して補助金を準備している

 無線ブロードバンドの商用化を検討する事業者は現在,KDDIやNTTドコモ,ソフトバンクなどの携帯電話事業者が目立っている。そのため無線ブロードバンドは,都市部で移動しながら利用するブロードバンド接続手段としての用途に脚光が当たっていた。しかし無線ブロードバンドは,デジタルデバイド対策を目的とするサービスにも適用できる。総務省や自治体などが熱い視線を送り始めている。

 デジタルデバイドとは,ADSL(asymmetric digital subscriber line)やFTTH(fiber to the home)などのブロードバンドが利用できない場所で生じる,地域や世帯ごとの情報格差のことを指す。総務省や内閣はこれを重大な問題ととらえ,ことあるごとに「2010年までにデジタルデバイドを解消する」という方針を示してきた。例えば日本政府のICT(情報通信)に関する国家目標を示した「u-Japan政策」においても,2010年までのデジタルデバイド解消を明言している。

2.5GHz帯は当初から固定用途も視野に

 そのデジタルデバイド対策に,2.5GHz帯を使う無線ブロードバンドが最適と評価する声が多い。デジタルデバイドが問題になる地域は,一般に人口密度が低い。有線だと個々のユーザーまでに引くアクセス回線の配線コストが高くなりがち。無線の方がコスト的に有利になる。

 デジタルデバイドに利用できる周波数は,無線LANで使われる2.4GHz帯や4.9GHz帯,無線ブロードバンド用の2.5GHz帯,FWA(固定無線アクセス)向けの18GHz帯以上のミリ波帯が代表的。「無線LANは,複数のユーザーや事業者が共用するので品質確保が難しい。それに対し2.5GHz帯は,免許が要る専用の周波数なので品質を確保しやすい」(今井清春基幹通信課課長補佐)。

 しかも,デジタルデバイド用途でも,都市部のサービスで利用する端末や基地局を流用できる。ミリ波帯のFWAでは高価な専用機器が必要だが,専用機が要らない2.5GHz帯の無線ブロードバンドでは,サービス全体のコストを低く抑えることが可能になる。

 デジタルデバイド対策に有効という評価もあったため,2.5GHz帯は当初から移動用途と固定用途の両方で検討を進めることになっていた。2.5GHz帯の無線ブロードバンドの技術的条件を議論する広帯域移動無線アクセスシステム委員会には,携帯電話などの移動通信を担当する移動通信課に加え,固定無線を担当する基幹通信課も参加している。「現在は移動用途に議論が偏っているが,今後固定用途についても議論しなくてはならないと考えている」(総務省移動通信課の新田隆夫課長補佐)。

民間企業もデジタルデバイド対策を商機と見る

 デジタルデバイド対策を商機と見た民間企業も登場し始めた。その一例が,三菱総合研究所,IRIユビテック,ジャパン ケーブルキャスト,インテルの4社が8月25日に設立した「WiMAX Japan Project」という団体。デジタルデバイド対策に敷設した無線ブロードバンドを利用して,防災や行政サービスなどの地域密着型サービスを検討する。その結果を会員で情報共有するほか,総務省や関係機関に提案することを目的としている。

 立ち上げメンバーである三菱総合研究所社会システム研究本部ITS・政策情報研究グループの杉浦孝明主任研究員は「自治体や地方のケーブルテレビ事業者から,予想以上の問い合わせが来ている」と明かす。国だけでなく,自治体や民間のレベルでも無線ブロードバンドをデジタルデバイドに活用したいというニーズは高そうだ。

デジタルデバイド対策向け補助金制度の整備が進む

 総務省が8月に公開した「次世代ブロードバンド戦略2010」も無線ブロードバンドによるデジタルデバイド対策の推進を後押しする。ここでは,無線ブロードバンドを有線ブロードバンドの補完に利用することを明記しているからだ。具体的には,有線ブロードバンドが未敷設の地域で,無線ブロードバンドを代替手段として使う。総務省高度通信網振興課の片桐広逸高度通信網推進官は「電波政策ありきだが,2.5GHz帯がデジタルデバイド対策に使えるならば是非使いたい」とする。

 しかも,デジタルデバイド対策に向けた具体的な方策や,自治体や通信事業者の実施すべきことを決める方針を示している。設備購入などの初期投資に対して補助金を交付することを明記。コスト面で有利な2.5GHz帯の無線ブロードバンドでインフラを整備し,その費用を国からの補助金で補う--。こうした自治体が登場しそうだ。