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アイ・ティ・アール(ITR) シニア・アナリスト 金谷 敏尊 氏 金谷 敏尊 氏

アイ・ティ・アール シニア・アナリスト
大手ユーザー企業に対してIT戦略立案やベンダー選定などへのアドバイスを提供する。ITインフラ、システム運用、セキュリティ分野を専門に幅広く活躍する。

 企業がITを調達するルートは多様化しているが、情報システム子会社が介在することが多いのは国内市場における大きな特徴の一つであろう。1980年代から、事業スキームの再構築や人事施策を見据えた大手企業による情報システム部門の子会社化施策が活発化し、今もなおその余波は続いている。しかし、当の情報子会社からすれば、突然ステアリングを渡されて、これからは自分で運転しなさいと命じられたに過ぎず、経営課題が山積するケースは後を絶たない。そんな情報子会社が直面する課題の本質を探ってみよう。

 多くの情報子会社の経営者にとって、外販比率の向上は最大の関心事の一つだ。情報子会社の中には着実な外部市場の開拓で競争力を獲得するところもあるが、多くの場合はまだまだ親会社への依存度が高い。グループ企業である以上、突然供給を絶たれることはないだろうが、経営者が常に緊張感にさらされているのは間違いない。

 ITRが観察した結果、このような経営課題を抱える情報子会社には共通する特徴がある。一部のビジネス機能が不足していると言い換えてもよく、それは特に自己評価機能とマーケティング機能といえる。自己評価機能には、市場/技術リサーチ、コストベンチマーク、実績管理などが挙げられる。またマーケティング機能としては、企画提案、サービスレベル管理、ユーザー調査、渉外活動などを指す。要するに職人はいても「商売する」スキルやセンスが必ずしも十分ではないということだ。

商売感覚あれば職人も生きる

 情報子会社に商売のスキルが不足するのは自明の理といえる。なぜなら、そのような人材の供給が少ないからだ。IT部門として親会社に属していた時代に商売について考える機会はまず少ない。では子会社化された時はどうか。親会社は商才豊かな人材を好んで供給するであろうか。自社の商品販売へ優先的に投入するであろう。では、ITビジネスで儲けようと考える若者が情報子会社を志望するだろうか。大手ベンダーやITベンチャーを目指すのではなかろうか。さらに、誤解を恐れずにいえば、IT業界には、外交的というよりは内向的な人が多い。こうした背景を考えると情報子会社に商売のスキルが不足するのは当然のことなのである。

 欧米では主に社内IT部門が情報子会社に似た役割を担うが、そこでもビジネス機能の補完は課題である。このため、ビジネスリレーションシップやITコスト管理、In-House SLA(社内ユーザー部門向けSLA)など顧客志向の取り組みが活発化している。特にIn-House SLAを用いたサービスレベル管理は国内でも普及するとITRは予想している。ビジネスセンスを培い、顧客志向の事業組織となることは、もはや情報子会社特有の課題ではなく、あらゆるIT組織に共通の課題といえるだろう。ITILで、ユーザー部門の責任者をエンドユーザーと区別して「顧客」と定義しているのも納得がいく。

 情報子会社の未来は決して安泰とはいえないが、業務知識や経験の豊富さなどアドバンテージも少なくない。正確な事実を把握し、不足を補えば十分勝機はあるはずだ。それには、まずビジネス機能の補完に取り組むことではないだろうか。商売が成り立ってこそ職人も生きることになる。