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 「売上高が1000億円を超える国内のITサービス企業は、グローバルなデリバリーネットワークを構築すべき」。こうITサービス企業の海外進出を説くのは、アクセンチュア日本法人の程近智社長である。国内で1000億円がしきい値だとすれば、本誌の「ソリューションプロバイダ売上高ランキング」で33社が該当し、600億円以上の予備軍は15社にのぼる。

 程社長の持論は、「世界から高い評価を受けている日本の製造業から示唆を受けたり、学ぶことがたくさんある」というもの。“グローバル・デリバリー・ネットワーク”も、日本の製造業の開発・製造・物流(デリバリー)のそれぞれの取り組みがグローバル展開可能なように整合的に行われているところから、ITサービス産業にもその応用が利くと指摘したものだ。

 日本の製造業の強さや価値は突き詰めると、顧客ニーズに応じた多種多様な製品を、他国のメーカーに比べコストパフォーマンス良く、世界市場に提供できていること。それで貿易収支の黒字は、輸送用機械が12兆円、電気機械が7兆円、一般機械は6兆円だ。ITサービス産業もそれにならい、次代の日本を支える産業に進化することが期待されているはず。だが現状は「工業化以前の段階」(程社長)。今のうちにプロセスをきちっと確立しないと、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)諸国など追い上げ国のダイナミズムについていけず、将来、屍の山を築くか、BRICs企業の前にくつわを並べることになるかもしれない。

 世界の上場ITサービス企業のパフォーマンスを、アクセンチュアは次のように分析する。従業員1人当たりの売上高はドイツと日本がトップで、米国の1.3倍、中国の3.3倍、インドの5.3倍だ。しかし営業利益率は、インドの22%を筆頭に、米国16%、ドイツ15%、中国7%に対し日本6%。生産性が極めて低く、日本の上場システムインテグレータ(SIer)の中で、売上高と収益性が比較的高い企業は10社程度と少ない。しかも、トップ10社のSIerが中小の協力SIerに発注する割合が50~90%と独特の深い階層構造が横たわる。業界のコスト吸収力は既に限界に近いとみられる。

 そのほか、定員割れのIT関連学科の出現やIT企業の就職人気の下降、情報処理技術者試験の受験者数の激減など、人材のフロー面にも赤信号が点灯し始めた。つまりITサービス業界が低生産性、階層構造であるために「利益が出ない」、その結果「教育できない」、そうするとイノベーションができず「業界が魅力的でなくなる」。この“悪のサイクル”にはまっている可能性がある。

 程社長は、製品開発、製造プロセス、デリバリーの時間軸で、ITサービス産業は製造業から学べると強調する。製品開発では、効率的に多種多様なものが作れ、かつマネし難い製品を作る取り組みだ。これは、ソフトのモジュール化と再利用、カスタムソフトとパッケージの使い分け、IP(知的財産)強化やSOA(サービス指向アーキテクチャ)の先取りとなる。製造業の系列化からは、協力SIerの力量や特性から系列に任せるか内製化するかの見極めや、いかに工数をかけずに高品質なものを作るという、従来の工数指標からの脱却、国境を越えるコラボレーションが学べる。

 製造プロセスでは、グローバル部品表やプロセス標準化の考え方が参考になる。部品表に相当するスキルとコストのマップを作り、上流設計から開発・テストまで地域特性を加味して対応させたバリューチェーンが作れるはずだ。日本の製造業は国内を高付加価値品生産や研究・開発拠点として位置付け、海外と国内を同時に強化している。これも高付加価値領域の見極めや企業改革の徹底面に学ぶところは多い。しかし、それだけではインドや中国、米企業には勝てない。

 「現場力などの日本の個性、組み込みソフトなどの日本の強み、マスカスタマイゼーションなどの日本的なイノベーションを加味してこそ、日本的グローバル・デリバリー・ネットワークが構築できる」。程社長はこう結んだ。