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 米Microsoftは自らの企業カルチャーを「ダーウィン主義(Darwinian)」と呼んでおり,適者生存の考え方に則って,相手を取り込んで死滅させるか利用するかしない限り,競合の存在を容認してこなかった。しかしMicrosoftは最近,OSやアプリケーションの相互運用性を高めてユーザーがMicrosoft以外の製品を使えるよう支援する方が,自身の利益にかなうことを悟ったようだ。

 Microsoftはきっと,他のプラットフォームから新しい顧客を獲得するには,「ハエを捕まえるには酢よりも蜂蜜(You can catch more flies with honey than with vinegar.)」という古いことわざが有効だということを思い出したのだろう。ハエを捕まえることが自身の生死にかかわる問題であり,かつ捕まえたハエを手元においておきたいのであれば「酢よりも蜂蜜」というメッセージは重要になるだろう。

 Microsoftが「酢」を使っていた当時,MicrosoftのCEO(最高経営責任者)であるSteve Ballmer氏は,Linuxに対して脅迫状を突きつけていたものである。それとは対称的に,Microsoftは現在Linuxに対して「蜂蜜」作戦を採っている。Microsoftの製品ライン全体に,甘いエサが仕込まれているのだ。

Linuxとの相互運用性を重視したWindows CCS 2003

 例として,ハイエンド製品である「Windows Compute Cluster Server(CSS) 2003」を見てみよう。Windows CSS 2003は,これまで万人が「ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)分野の主役」であると認めてきたLinuxとの相互運用性と共存を重視して設計されている。

 MicrosoftのHPC担当ディレクタであるKyril Faenov氏は,「ハイ・パフォーマンス・コンピューティングが,ヘテロジニアス(異機種混合環境)を前提にしており,多面的であることをわれわれは十分理解している。われわれは,パートナがWindows CCS 2003で動作する製品を開発できるように配慮しているし,相互運用性にも十分投資している。例えばわれわれは,ジョブ・スケジューラの大手ベンダーである米Platform Computingと提携しており,Microsoftのジョブ・スケジューラが他のスケジューラと通信できるようにした。Windows CCS 2003の「Microsoft Message Passing Interface」も,MPI2標準の参照実装を基盤にしており,既存の並列実行型アプリケーションを移植しやすくしている」と語っている。

Windows Server 2003 R2の相互運用性

 2006年にリリースされた「Windows Server 2003 R2」にも,多くのユーザーが活用できる相互運用性と共存のための機能が多数搭載されている。筆者が最近行ったWindows Server 2003 Enterprise Edition R2に関する取材の中で,Windows Server&ツール担当グループ・プロダクト・マネージャのRik Wright氏はこう語った。「Windows Server 2003 R2での相互運用性には注目してほしい。Windows Server 2003 R2では,UNIXユーザーがMicrosoftプラットフォームをより理解しやすくなり,相互運用もより簡単になる。中小企業用に,UNIXマシンと連携するツールも提供している」(Rik Wright氏)。

 実際にWindows Server 2003 R2には,どのような相互運用技術が搭載されているのだろうか。Rik Wright氏は「1つはディレクトリ・サービスで,Windows Server 2003 R2では,Active Directoryのケルベロス認証対応を拡張している。もう1つは,SUA(Subsystem for UNIX-based Applications)で,クロス・プラットフォーム管理機能を搭載した。SUAを使うと,WindowsとUNIXを問わず,同じスクリプトをすべてのドメインで実行できる。他にもSUAには,UNIXアプリケーションをリコンパイルして,Windows上で実行する機能も追加されている。さらにNFS対応機能も強化しており,WindowsとUNIXをまたいで,ファイル共有やプリンタ共有ができるようになった。このほかWindows Server 2003 R2には,パスワード同機能も追加されたので,UNIXドメインとWindowsドメインで同じパスワードを使えるようになった」と述べている。

Virtual ServerのLinux対応も「蜂蜜作戦」

 MicrosoftがVirtual ServerでLinuxをサポートしたことも「酢を蜂蜜に変えた」例に挙げられるだろう。Virtual Server担当グループ・プロダクト・マネージャであるJim Ni氏は,「Windows Server 2003 R2ではLinuxをゲストとしてサポートしています。Virtual Server上の仮想マシンをLinuxにすることもできます」と述べている。

 Microsoftによる異機種混合環境を受け入れるという新たな方針は,管理製品にも拡大している。Rik Wright氏は「われわれはプラットフォーム(OS)だけでなく,『System Center Operations Manager』(現在の『Microsoft Operations Manager』)や『System Center Configuration Manager』(現在『Systems Management Server』)といったシステム管理製品でも,管理対象としてLinuxをサポートしている。System Center Operations Managerで採用するプラグイン・アーキテクチャを利用して,サード・パーティ製のLinux用管理パックが使用できるのだ。またSystem Center Configuration Managerでは,米Quest Softwareの『Vintella』というツールを利用して,Linuxにパッチを適用できる。加えてVirtual ServerがLinuxに対応することで,Windowsに限らないx86とx64のインフラストラクチャすべてを,統合的に管理できる」と述べている。

 自然界では,環境の変化に臨機応変に順応できる者が最も強い。Microsoftの変身は遅すぎるようにも思われるが,それでもよく変化したと言えるだろう。Microsoft製品以外の製品が混じっている環境であってもうまく動作するようなツールをユーザーに提供することは,Microsoftにとって革命的進化であるといえる。