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自動化できない物流センターで細かな工夫

 物流面でも一見非効率なことをしながら、付加価値を創出している。アズワンは、埼玉県杉戸町と大阪市の2カ所に、それぞれ敷地面積1万3000平方メートル超の物流センターを持つ。

●アズワンのビジネスモデル
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 アズワンが扱うビーカーや試験管などの商品は、「作業を機械化すると割れてしまう」(物流部の和泉健一・大阪物流センター長)。ピッキングはすべて手作業だ。しかもボルトなどは箱単位ではなく、わざわざ小分けにして1個単位で販売する。バーコードを付けられない商品が全体の約7割を占めるため、検品も手作業になる。大阪物流センターでは、1日約5000件の受注をこなすために、ピーク時で70人もの人手をかける。

 それだけに、少しでも作業をスムーズにするための工夫を凝らす。ピッキング担当者は受注システムと連動した携帯端末を持ち歩く。ここに表示される商品コードと棚位置を見て、商品を取りに行き、顧客別の青い箱に入れる。棚位置は固定せず、販売データを踏まえて、売れ筋商品が担当者の定位置から近くなるよう、2週間ごとに配置を変える。ビーカーなどは違う商品でも見た目が似ているため、同種の商品は隣り合わないように配置するなど、細かな工夫をしている。

 在庫があれば、夕方17時までの注文分は19時半までに出荷する。翌日午前にはディーラーに届けなければならないからだ。ディーラーは早ければその日のうちに大学などの顧客に商品を届ける。

 アズワンの棚卸資産回転日数は29.1日。アスクルの16.6日などと比べて在庫は多い。一方で、受注に在庫で対応して即日出荷できる比率(ヒット率)は約9割に上る。在庫効率よりも、即納の利便性を重視しているわけだ。「サプライヤーには中小メーカーが多く、2カ月先の発注を出して買い取るケースもある」(商品購買部の池谷尚紀(いけやひさのり)・商品購買グループ次長)という事情もある。

 アズワンとサプライヤーは、専用ウェブサイト「I-COM Web」を通じて情報共有する。サプライヤーは、アズワンにおける日々の在庫数、販売実績、受注動向などを見て、各種の判断に活用できる。「我々が気づかないような売れ行きの変化に気づいて知らせてくれることもある」という。

顧客の声生かし、独自商品を開発

 品ぞろえの面でも、効率よりも付加価値を優先する考え方が徹底している。「当社にとって、カタログは営業活動そのもの」と井内英夫社長は言う。顧客を飽きさせないために、1~2年に1度のカタログ改定のたびに、商品の1割以上を入れ替える。そのたびに在庫は廃棄しなければならない。

 自社企画のプライベート・ブランド(PB)商品の開発にも積極的。年間約200商品を発売している。アズワンの「カスタマー相談センター」には、顧客から「こんな商品を探している」といった問い合わせが月に約1万2000件来る。例えば、「液体の粘度を簡単に調べられないか」という問い合わせをヒントに、粘度の違う10種類の液体との比較で大まかな粘度を計る「粘度比較計」を考案した。一般的な粘度計に比べて構造が簡単なため安価に販売でき、ヒット商品になった。

 PB商品の粗利益率は約4割で、全体平均の約3割よりもうかる。ただ、「PB商品ばかりのカタログは顧客にとって面白みがない」(井内社長)。PB商品の売上高構成比は3~4割の水準を維持する方針だ。


井内 英夫 社長
いうち ひでお氏●1941年生まれ。64年関西学院大学社会学部卒。68年、井内盛栄堂(現アズワン)に入社。69年に28歳で社長に就任し、以後36年間にわたって社長を務める

もうからないことはせず、利益率を追求

 当社は1970年ごろにカタログ販売を始めた業界の先駆けだ。カタログ販売では、新分野に参入しても店舗を建てたりする必要はなく、リスクが小さい。今後も、ニッチな新市場を狙っていくつもりだ。

 ただし、「もうからないことはするな」と社内でいつも言っている。当社の主力である科学機器、産業機器、病院・介護の3分野は参入時期が違うが、利益率はほぼ同じだ。新分野に参入するから利益率が低くてもいいという考え方は、当社では通用しない。参入した後に、思うように利益が出ず縮小した分野もある。もうけることは難しいが、もうからないことをやめるのは簡単だ。

 1億円といった高額の受注は狙わない。高額の受注を取るには経費がかかる。売り上げが大きくても、利益率が数%では意味がない。利益率を犠牲にすればもっと売り上げ規模を拡大できるかもしれないが、それは私の考えに合わない。

 IT(情報技術)投資には年間5億~6億円をかけている。翌日配送を実現しつつ、わずか270人の従業員で400億円の企業を運営できるのは、ITあってのことだ。まず、受発注や在庫管理など業務効率化のための投資をしたが、最近はカタログ電子化など、投資の幅が広がっている。今はまだ紙のカタログが使いやすいが、10年後は電子カタログのほうが便利かもしれない。 (談)