PR

 10月3日に,Windowsベースのソフト開発情報誌「Windows Developer Magazine」(翔泳社)が2006年12月2日発売号(2007年1月号)を最後に休刊になることが発表された。ITpro読者の中には,前身となる「Visual Basic Magazine」(1995年創刊)を読んだことがある方は少なくないだろう。当時のVisual Basic(VB)ユーザーから多大な人気を得ていた雑誌だった。

 VB MAGAZINEよりもさらに古い歴史を持つ「C MAGAZINE」(ソフトバンク クリエイティブ)も2006年4月号を最後に休刊となった。1989年の創刊以来,約17年続いたプログラミング専門誌の老舗だ。現在30歳台後半以上のUNIX系開発者の多くは何らかの形で,Cマガの記事を見たり読んだりしたことだろう。MS-DOS,Windows,インターネット,オープンソースなど,様々な時代の波を乗り越えて,CプログラミングのテクニックやOS/コンパイラの仕組みなどを解説し続けてきた。

 さらに,一時は群雄割拠していたJavaプログラミング誌も休刊や刊行ペースの変更を余儀なくされている。こうした状況は,同じ業界関係者として大いに考えさせられるものがある。

 記者が担当している「日経ソフトウエア」は1998年の創刊号以来,順調に巻を重ねて2006年6月号で通巻100号に達した。特定の言語やツールに依存しない,唯一のプログラミング総合誌として一定の地位を築いたと言えるだろう。しかし,前述のように競合誌は次々と減っている。ライバルが減って喜んでいるなんてことは決してない。現実はプログラミング誌の市場が縮小しているのであり,喜んでいる場合ではないのだ。

 プログラミング誌の市場が縮小した(読者が減った)理由はいくつか考えられる。誰でも思いつくのは(これはプログラミング誌だけに限らないが),Webから自分の目的にあった情報を検索して抽出することが一般的になったことだ。特にプログラミングの場合,入門段階では雑誌を読んでいたとしても,スキルが向上するにつれて情報ソースの比重がネットにシフトしていく傾向が強い。また,より専門性の高い情報が欲しい場合は,雑誌ではなく書籍を購入する方向に動く。

 IT系メディアの動向に詳しい舩津 章氏は,自らが運営するIT系メディア・ポータルの中で,「雑誌という他人の主観においてまとめられた情報パッケージ(編集物)との間に,言及の浅さや物足りなさといったズレが表面化してしまい,編集者ひいては出版社に対する満足度・信頼感が相対的に低下していることもある」と指摘する。「同じことはWebメディアにも言えるが,(Webでは)不要情報をはじいてしまえば時間もお金もかからない」というわけだ。

 まったく耳の痛い指摘である。しかし,雑誌という情報パッケージの役割は終わったわけではない。情報がネットを通じて押し寄せる時代だからこそ,一定の切り口で情報を切り分けて提示する雑誌に価値を見いだす人もいる。初級者/入門者にプログラミングの楽しさや喜びを伝えると同時に,普遍的な基礎技術を解説してきた日経ソフトウエアが生き残っているのも,そうしたニーズがあるからだ。ほかにもこの分野では弊社の「日経SYSTEMS」や「WEB+DB PRESS」「SoftwareDesign」(ともに技術評論社)といった好調な雑誌がある。

 ただ,編集担当として誌面でカバーできない記事を求める読者をなんとかしたいという思いはあった。「○○の特集をしてほしい」「△△がよく分からないので解説してほしい」──日経ソフトウエアには読者からのこうしたお便りが届く。これらは編集の企画にマッチすれば実現するが,例えばマイナーなツールに依存する,技術レベルが深すぎる,といった読者が限定されてしまう企画はなかなか通らない。その記事はやったばかりなのですぐにはできない,という場合もある。

 いまこうした読者に応えられる一番手っ取り早いメディアはWebである。実際ITに特化したWebメディアはたくさんあり,最新ニュースや解説記事の多くは無償で提供している。ITproもその一つだ。今年の3月にリニューアルして以降,急速にページ・ビューが伸びている。IT技術者の間で,主要なWebメディアとして定着したように思える。

 しかし,不満があった。ITproには,日経ソフトウエアの読者やソフト開発者が読むための分かりやすい入り口がないのだ。もちろん開発に関係する記事はたくさんあるが,あちこちに散らばっているので目的の記事を見つけにくいのである。そういう文句を言うと「じゃあ,おまえがなんとかしろ」と言われた。こうして,ITproと日経ソフトウエアの支援のもと,ソフト開発に特化したサイト「ITpro Development」を立ち上げることになり,本日の公開へとこぎ着けた。

 もちろんソフト開発系のWebメディアとしては後発であることは,重々認識している。もはや雑誌以上に,この分野には競合が多い。それに伍していくための方法はただ一つ。質の高い記事を圧倒的なボリュームで展開すること。幸いなことに,日経BP社にはそうした記事を持つ雑誌媒体がたくさんあり,優秀な書き手を抱えている。また,信頼できる執筆者とのパイプも多い。

 雑誌とネットの連動といった古くさいことは言わない。そんなことはもう当たり前なのだ。前述のように,雑誌を読みたい人もいるし,ネットで見たい人もいる。その両方の要望に,きっちり応えていくだけだ。出し惜しみすることなく,ばんばん記事を出していきたいと思う。

 今月は,RubyとWeb APIを特集している。そのほかに言語や分野別の記事を用意している。ITpro内の開発系記事も整理した。今後は,雑誌の企画としては難しかったディープな内容やマイナーな製品の記事も掲載する予定だ。ソフト開発に関心のある方はぜひ立ち寄って,よければブックマークしてほしい。

 やっぱりライバルが多い方が燃えるし,市場も活気づく。ひいては読者のためになる。メディアの形態は分化しても,そこが出版社の原点であることに変わりはない。