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ソフトバンクテレコム 研究所の笠史郎部長(右)と田中伸哉アシスタントマネジャー(左)
ソフトバンクテレコム 研究所の笠史郎部長(右)と田中伸哉アシスタントマネジャー(左)
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 ソフトバンクテレコムは,次世代の基幹網の制御技術「GMPLS」(generalized multiprotocol label switching)を使った新サービスを構想中だ。そのために「LSPソケット技術」と呼ぶ技術を独自に開発した。専用のクライアント・ソフトをユーザー端末にインストールするだけで,セッションごとにアプリケーションの種類を判断し,通すネットワークを切り替えることが可能となる。ソフトバンクテレコム 研究所の笠史郎部長が本誌だけに明かしたサービス・プロトタイプをご紹介する。(聞き手は山根 小雪=日経コミュニケーション

――GMPLSを使う新サービスのプロトタイプについて聞かせてほしい。

 アプリケーションごとに通信品質を動的に変えるサービスを検討している。例えば,映像はSDH(同期デジタル・ハイアラーキ)網,通常のデータはIP網,機密性の高いデータは量子暗号化を使う別網を通すといった具合だ。通信事業者のGMPLS網につながるユーザーには,端末に専用のクライアント・ソフトをインストールするだけで提供できる。アプリケーション側の変更は一切必要ない。クライアント・ソフトがセッションごとにアプリケーションを見分けて,通すネットワークを決める。

 そもそもGMPLSとは,IPネットワークと光ネットワークを連携させた上で管理・制御が可能な技術だ。「MPLS」をIPネットワークだけでなく,レイヤーの異なる光ネットワークでも使えるように拡張し,SONET(光同期転送網)装置のタイム・スロットや光クロスコネクトの光波長を,IPルーティング情報を利用して制御する。言い換えればGMPLSは,SONET/SDH網やIP網といった複数のネットワークを動的に使い分けられる機能を有している。この機能を通信サービスに使えないかと考えたわけだ。

――具体的にはどのような技術を使うのか。

 当社が独自開発した「LSPソケット技術」を使う。LSPソケットとは,MPLSのラベルパス「LSP」と,TCP/IPを使うための仮想インタフェース「ソケット」を組み合わせた造語である。

 これまでのMPLS/GMPLSの通信は,MPLS対応ルーターでパケットにラベルを付与して転送していた。一方のLSPソケットでは,ユーザーの端末にインストールしたLSPソケット・ソフトウエアが,アプリケーション・レイヤーでパケットにラベルを付ける。MPLSがルーター間でMPLSのラベルパスを張るのに対して,LSPソケットはユーザー端末のアプリケーション間でMPLSのラベルパスが張れる。

 さらに,MPLSのラベルパスをどのネットワークに張るのかをGMPLSで制御する。MPLSの場合は,ラベルパスはIP網にしか張れない。だがGMPLSを使うことで,パケットを通すネットワークをIP網だけでなくSONET/SDH網などに動的に変えられる。

――どういった用途を想定しているのか。

 まずは大企業や大学・研究機関が対象だろう。例えば,IPネットワークにファイバチャネルを通すプロトコル「FCIP(Fibre Channel over IP)」の伝送などに適している。FCIPは,遠隔地にあるストレージを直接操作できる点がメリットだが,通常のIPネットワークを使うのは不安だという声をよく聞く。LSPソケットを使えば,通常のデータのやり取りとFCIPで使うIPネットワークを動的に別のものにできる。そのほか大容量の映像伝送もある。即刻送りたい映像もあれば,ゆっくり送って構わない映像もある。要求に応じて,ネットワークを切り換えればコスト削減につながる。

――商用化の計画は。

 商用化の時期は未定だ。まだGMPLSは単一ベンダーの装置でネットワークを構築しなければならない状況だからだ。通信事業者としては,複数のベンダーの製品を組み合わせられないのはリスクが大きい。だが装置がこなれてくれば,おのずと解決する問題だ。

 ユーザーの要求が高まれば,装置の開発も通信事業者の導入にもドライブがかかる。例えば,光クロスコネクト(OXC)の導入は,国立情報学研究所の「スーパーサイネット」がきっかけになり一気に進んだ。通信事業者のネットワークにルーターが1台も無かった過去を考えれば,GMPLSの導入がいつ加速しても不思議ではない。

 これまでGMPLSは,障害時の自動回復機能など通信事業者のネットワークに閉じた話ばかりだった。通信事業者のネットワークに閉じており,ユーザー側の端末やアプリケーションとは切り離されていた。GMPLSの導入を加速させるには,ユーザーにメリットを見せていくことが必要だ。