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文・石井 恭子(日立総合計画研究所社会システム・イノベーショングループ 主任研究員)

 2006年8月、政府の各府省情報化統括責任者連絡会議(CIO連絡会議)は、2010年までの政府の電子政府に対する具体的取り組みを記した「電子政府推進計画」を決定しました。この計画は、7月に発表された「重点計画-2006」の中で策定することになっていたもので、IT新改革戦略で掲げている電子行政関連の目標達成に向けた詳細な施策集という位置付けにあります。

 計画では、(1)オンライン申請率50%以上を達成、(2)最適化の効果によりシステム運用経費や業務処理時間を削減、(3)さらなる最適化を推進、(4)情報システムの安全性・信頼性の確保、を2010年までに実現するという目標を立てています。その目標に基づき、「推進体制の強化」と「費用対効果等を踏まえた成果重視施策」の二つの施策群を実施することになります(表)

 推進体制の強化については、省庁横断的に最適化を図りながら進ちょく状況を随時確認し、必要に応じて軌道修正できるような体制を確立しようとしています。また、成果重視施策については、利用者が恩恵を感じられるような成果の実現を目指すと同時に、厳しい財政状況を踏まえてIT投資を厳正化することになりました。

■表 「電子政府推進計画」の施策の枠組み
施策群 具体的施策
推進体制の強化 PMO等各府省内の推進体制の強化
府省共通業務・システム等の最適化推進体制の強化
業務・システム最適化のモニタリング等
評価体制の強化
IT人材育成
費用対効果等を踏まえた成果重視施策 利用者視点に立ったオンライン利用促進
全体最適化を目指した業務・システムの最適化
評価、見直し等(オンライン利用促進、業務・システムの最適化など)
全体最適化に向けた諸課題への取組
電子政府の推進に当たっての関係機関との連携等の取組
出典:各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議「電子政府推進計画」

 政府は、2003年以降「電子政府構築計画」に従って電子政府に取り組んできており、今回の計画はその延長線上にあるとも言えます。従って、全く新しい施策が盛り込まれているわけではありません。ただし今回の計画は、以下の三点が強調されています。

 第一は、取り組み内容をより明確にしました。今回の「電子政府推進計画」は、“上位計画”である「IT新改革戦略」「重点計画-2006」との関連性が冒頭で明確に示され、政府としての取り組みの一貫性が見られます。また、オンライン申請の利用率を2010年までに50%にするという目標を定めるなど、分かりやすさを意識しています。

 第二は、PDCA(Plan:計画、Do:実施、Check:評価、Action:改善)サイクルの確立を意識していることです。計画に基づいて施策を実施した後にそれを評価し、必要に応じて改善を図って次の計画に結びつけることがPDCAサイクルです。これまでも、政府内の各部門の連携強化や外部の専門家の活用などの取り組みはありました。しかし今回は、評価体制を強化することで、着実にPDCAサイクルを回す仕組みを実現しようとしています。

 第三は、利用者(納税者)の視点を強化したことです。これまでも「利用者視点」という言葉は用いられてきましたが、具体的に利用者が恩恵を感じるような施策に踏み込んでいたとは言えませんでした。しかし、今回は違います。例えばオンライン申請では、手続きの簡素化・簡略化、手数料の見直しなどインセンティブを検討する、といった具体的な取り組みに言及しています。

 また、「費用対効果の観点等からみて確実に成果が上がることが認められる施策に限り行う」こととしているように、これまで以上に納税者を意識して、効果が「見える」投資を見極めていく姿勢がうかがえます。こうした取り組みにより、利用者がメリットを実感できるような電子政府の実現が期待できるといえます。