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 2006年7~9月期の業況判断指数を見ると、ITサービス市場は完全に上昇基調に乗った。ユーザー企業のIT化投資意欲が増加し、日本版SOX法など内部統制の商談も具体化してきそうだ。



図1●ITサービス業界の業況DIの推移

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 ITサービス市場は、これまでの緩やかな成長過程から、完全に上昇基調に乗ったと考えてよい。2006年7~9月期の業況DI(ディフュージョンインデックス)は、前回(2006年4月~6月期)の32から今回は31と横ばいだったが、次回(2006年10~12月期)の見込み値は37となるもようだ(図1)。

 売り上げDIも、前回の48から今回は44とやや下がったが、これは前回の予測通りの数値。次回は48になると期待されている。

 特に目立つのが粗利益率DIの回復である。前々回の32から前回は10へと大幅に下がったが、今回は18と上昇。次回は26になると予測されている。まだ手放しで喜べる状態ではないが、業況は着実に上向いている。

 こうした傾向を見ると、ここ数年でITサービス市場は、回復基調から新しい成長段階へと確実に発展していることが分かる。ユーザー企業のIT化投資意欲を見ても、「高まっている」との回答が、前回の60%から67%に上がっている(図5)。

 注目されるのが、いわゆる日本版SOX法を中核とする内部統制ソリューション。これまで内部統制については話題先行で、実際の商談にはなかなか結び付かなかった。それが現実の商談として、手応えを感じ始めたソリューションプロバイダは多い。現状ではコンサルティングの段階がほとんどだろうが、今後はいよいよ具体的なシステムの販売にもつながると期待が大きい。それだけに単なるシステム提案ではなく、企業統治(ガバナンス)などユーザー企業の中枢にも踏み込むような提案が求められている。

ますます「質」が問われる

 今回の調査の自由意見欄では、内部統制ソリューションへの期待とともに、不安を示す回答も少なくない。

 例えば、「内部統制に対する関心が高まってきており、セキュリティや情報管理分野のソリューション需要が増加している」(販売会社)、「内部統制はITツールの販売よりも、まだコンサルティングのニーズが大きい。今後、具体的なガイドラインが発表されると、この分野のニーズはさらに加速するだろう」(販売会社)といった声だ。

 内部統制となると、これまでのシステムの販売とは売り方も変わってくるだろう。「内部統制に関するソリューションとして、IT全般への注目が高まってきている。システム担当者だけでなく、業務改革の一環としての提案を早期段階から検討するユーザー企業が多く、業務担当者や戦略推進部などの部署からの引き合いが多くなっている」(販売会社)といった声も出ている。「ユーザー企業のIT化投資意欲は向上しているが、サービス品質やセキュリティ、内部統制への意識が高まる中、経営の視点によるガバナンスも視野に入れた“本物の提案”が求められている。これからは業界の寡占化が強まる傾向にある」(ソフト会社)といった見方もあるほどだ。

 そうなると、ソリューションプロバイダからの提案をチェックするユーザー企業の目は、ますます厳しくなる。これからは内部統制ソリューションといっても、単にシステムを販売すればそれで終わりというわけにはいかない。ユーザー企業の導入メリットを真剣に考えた提案でなければ、商談は進まなくなるだろう。

 自由意見欄では、「ユーザー企業の目線に沿ってシステムを提案できなければ、どんなサービスも製品も受け入れられない。たとえIT化への投資意欲が高まっていても、価格や品質、内容が満足されるものだけがユーザー企業の投資対象となる」(ソフト会社)という声もあった。

業界の構造転換を急げ

 ただし上昇基調が明確になると、さまざまな課題も浮かぶ。特に心配されるのが、SEの数が需要に追いつかないことだ。

 「SEの確保が非常に困難になっている」(ソフト会社)ことに加え、「保守サービスの人員も不足しており、取り合いが起きている状態」(販売会社)にもなっている。こうした声は“うれしい悲鳴”ではなく、ソリューションプロバイダの成長を妨げる危険もある。「2008年ごろまで要員が確保できれば、さらなる業績アップにつながる」(ソフト会社)からだ。

 一方で、「競争激化によってハードの価格ダウンが拡大するため、利益確保が難しい」(販売会社)など、今後はユーザー企業だけでなく、ソリューションプロバイダ自身も企業体質の転換が求められている。「抜本的なセキュリティ対策や重層的な請負構造など、ITサービス業界にも質的な転換が迫られている。量的な需要の拡大がある半面、質的な転換のための多面的な負担にどこまで耐えられるかが、今後の成長への大きなポイントになる」(ソフト会社)といった意見もある。

売り上げは伸び悩み

図2●業態別に見た業況DIの推移

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 図2では、ハード/ソフトなどの商品販売が主体の「販売会社(販社)」と、ソフト/サービスなど開発・提供が主体の「ソフト会社」など業態別に分けて、それぞれの業況DIの推移を示している。

 ソフト会社、販売会社とも上昇基調は明確だ。ソフト会社の業況DIは前回の35から、今回も35と横ばいだが、次回は38になると予測されている。販売会社の業況DIも、前回の23から今回は21とほぼ横ばいだったが、次回は33になるなど、それぞれ上昇が見込まれている。

 図3は、業態別に細かく売り上げDIと粗利益率DIを見たものだ。ソフト会社の場合は、粗利益率DIは前回の3から今回は24と大幅に増加した。販売会社では売り上げDI、粗利益率DIともに落ち込みが激しい。

 ソフト会社や販売会社の業種別に、ハード/ソフトの売り上げDIとサービスの売り上げDIの推移をそれぞれ示したものが図4である。販売会社のハード/ソフトの売り上げDI以外は、ほとんどの業種・部門で、売り上げDIが前回よりも上昇している。

図3●業態別に見た売り上げDIと粗利益率DIの推移   図4●業種別のハード/ソフトの売り上げDIとサービスの売り上げDIの推移

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投資意欲は好調だが…

図5●ユーザー企業のIT投資意欲に対する見方の推移

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 ユーザー企業のIT化投資意欲を見ると、業種別ではソフト会社の「高まっている」が前回は62%だったが、今回は73%と大幅に増加している(図5)。「変わらない」は、前回の37%から今回は27%に減っている。「低くなっている」という回答はゼロだった。

 ただし販売会社の回答では、「高まっている」は前回の55%から、今回は50%へとダウンしている。「変わらない」は前回の45%から、今回は50%になった。

 ソフト会社の回答に比べ、最近の販売会社の回答ではユーザー企業のIT化投資意欲に対して消極的な意見が多い。システムを売るだけではなく、いかに付加価値を示すかでユーザー企業のIT化投資意欲は大きく変わってくるはずだ。特に内部統制ソリューションとなると、コンサルティング会社などさまざまな相手と協業を推進することも重要だろう。ソリューションプロバイダは新たな戦略を積極的に打ち出し、需要を喚起しなければならない。

調査の概要
 「ITサービス業の業況調査」は、企業向けIT市場の景気動向のすう勢を把握することを目的に、本誌が四半期ごとに実施しているアンケート形式の調査。今回は2006年9月中旬から下旬に、上場しているシステムインテグレータやディーラー、それらに準じる会社約130社に対しアンケートを依頼し、87社から回答を得た。このうち、システムインテグレータや保守・サービス会社などサービス販売を主体とする「ソフト会社」が63社で、コンピュータ商社やディストリビュータなど製品販売を主体とする「販売会社」が24社だった。
 業況判断の指数となる「DI(ディフュージョンインデックス)」は、回答者の感覚的な判断を知る目的で使われる数値で、日本銀行が四半期ごとに発表している景気判断調査「日銀短観」でも使われている指標。本調査では、業況、売り上げ、粗利益率のそれぞれについて「良い」または「増える/増えた」と回答した企業の割合から「悪い」または「減る/減った」と回答した企業の割合を差し引いて算出している。