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 無線ICタグなどの自動認識技術全般の標準化を進める「ISO/IECJTC1 SC31」の国内委員会委員長を務める柴田氏に、最近の標準化動向について聞いた。話題は米国のテロ対策や、米国によるIC タグ張り付け要請にまで及んだ。(聞き手は本誌副編集長・安東一真)

柴田 彰 氏
1947年生まれ。71年日本電装(現デンソー)に入社。80年ごろからバーコードリーダーの設計に従事し,日本初のPOS システムの開発に参加。95年ごろからQRコードの国際標準化を推進。2001年のデンソーウェーブ設立と同時に出向。ISO/IEC JTC1SC31 国内委員会委員長、日本自動認識システム協会研究開発センター長などを務める。

―IC タグの通信プロトコルでは、「Gen 2」の国際規格化が一段落した。その他のIC タグに関する標準化の動きについて教えてほしい。

 サプライチェーンで用いるコンテナやパレット、ケース、個品に張り付けるためのIC タグの規格や、コンテナセキュリティや電子シールのための規格の標準化が進んでいる。これらの規格はすべて、2007年に出そろう。これらの標準化が一気に進んだ背景には、「9.11 同時多発テロ」発生以降の米国政府の大きな方針転換がある。

―具体的な方針転換の中身は?

 米国はテロ対策として、人と物に対するセキュリティ対策を一気に進めている。先行するのが人への対策で、指紋などの生体情報をパスポートのIC チップに記録して認証するなど、すでに対策を進めている。

 その次に来るのが、物への対策である。重要なのはメーカーが作った個々の製品やケース、パレットなどに固有の番号が付いていることだ。現在は24時間前ルールに従って、日本を出る24時間前に輸出する商品の番号を電子データで提出することを求めている。ところが現在は、商社やコンテナ混載企業(フォワーダ)のコードなども混じっている。その代わりに、一意にメーカーを特定できるコードの標準化が進んでいる。そして、こうしたコードを素早くコンピュータ処理するのに、ICタグが有効と見られている。

 大事なのは、心配な貨物と信頼できる貨物をいかに素早く識別するかである。現在はCTPAT(カスタムズ・トレード・パートナシップ・アゲンスト・テロリズム)という二国間協定によって、日本を含むいくつかの国の各メーカーを米国が認定している。認定を受けたメーカーは、「グリーンレーン」に載って、検査期間などで優遇を受けることになっている。しかし世界に120カ国もあって、二国間協定では手間がかかりすぎる。この仕組みをISOで規格化して、認定機関は引き続き自らが担うというのが米国の戦略である。

 信頼できるメーカーのコンテナなら、中に混ぜものがあるとは考えにくいので、検査を簡単にできる。途中で第三国を経由しようと、物流業者の手に渡ろうと、元の商品を特定できれば大丈夫と米国は見ている。一方の商社やフォワーダのコンテナは荷物を混載するため、中身を保障しにくい。今後、商社などの負担は大きくなるだろう。

―テロ対策として米国が全貨物へのIC タグ張り付けを求めてくる可能性は?

 求めてこない理由が見つからない。関連する技術の標準化作業はすべて米国が牛耳っており、2007年に規格ができあがる。来年以降に具体化する可能性がある。

 米国防総省(DoD)はすでにICタグの導入を進めており、2007年からはすべてのケースへのICタグの張り付けを納入業者に求める。DoDは、200万アイテムという膨大な量を調達している。納入業者の60%は、日本企業という。DoDだけでも、サプライチェーン全体に与える影響は大きい。その次の標準化の焦点としては、物のロケーション管理がある。これらの規格がそろえば、人、物、ロケーションを管理する基盤ができる。




本記事は日経RFIDテクノロジ2006年6月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです。