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 受話器を上げて,電話番号をダイヤルして,呼び出し音が鳴って相手が出る---。毎日当たり前のように電話を使っていますが,電話にはネットワークの原点となる技術と工夫が詰まっています。今回,単行本『電話はなぜつながるのか』を編集して,改めて電話技術の奥深さを実感しました。電話の詳しい仕組みは本をぜひご覧いただきたいのですが,ここでは「へえぇ」と驚く電話のトリビアを少しだけ紹介します。

呼び出し音の「ルルル」はどこから来るの?

 ダイヤルすると,受話器から「ルルル」と相手を呼び出す音が聞こえてきます。この呼び出し音は,どこから届いていると思いますか?

 この音は,電話機が鳴らしているわけではありません。電話相手の近くの電話交換機が鳴らしています。例えば,東京都港区白金の友人に電話をかけたら,白金エリアの電話局にある電話交換機が呼び出し音を送ってきます。これは国際電話でも同じで,米国にかければ米国の電話交換機がはるばる海を越えて,呼び出し音を送ってきます。海外に電話をかけると,「ルルル」ではなくて「ツー ツー」など違った音が聞こえることがあります。それは日本と海外で電話交換機のタイプが違うことがあるためです。

 ちなみに,同じIP電話サービスを使う人同士の通話では,近くで「ルルル」と呼び出し音を鳴らしています。具体的には,自宅に置く「IP電話アダプタ」と呼ぶ装置が鳴らしています。相手のIP電話アダプタからSIP(Session Initiation Protocol)の「180 Ringing」(呼び出し中)という指令(メッセージ)が届くと,自宅のIP電話アダプタが「ルルル」音を作って電話機に送ります。

 ただし,東西NTTのIP電話「ひかり電話」から加入電話にかけるときには,着信側の電話交換機が発生した音を途中のゲートウエイがIPパケットに詰めて,IP電話側に送ってきます。ダイヤルしてから電話がつながるまでの間に,ゲートウエイがIPネットワーク側の音声と加入電話側の音声の変換作業を始めるからです。相手がIP電話なのか,加入電話なのかで,「ルルル」の音色が違うこともあります。

NTTの「ひかり電話」で見えるIPアドレスはニセもの!?

 東西NTTのIP電話サービス「ひかり電話」は,セキュリティ面の対策を施しています。通話内容が盗聴されたり,他人になりすまして電話をかけたりということができないようにするためです。

 ひかり電話では,「IP電話アダプタ」や「SIPサーバー」のIPアドレスをユーザーには隠しています。本物のIPアドレスを教えてしまうと,悪意を持ったユーザーがSIPサーバーや他のユーザーのIP電話アダプタに不正アクセスする可能性があるからです。

 ただし,IPアドレスがわからなくては,電話がつながりません。そこでひかり電話では,ユーザーに仮のIPアドレスを通知します。そして,ネットワーク内にNAT(アドレス変換装置)と呼ぶ装置を置いて,仮のアドレスと本物のアドレスを相互に変換しています。こうして,セキュリティを確保しながら電話がつながるようにしています。

携帯電話は無口な人が多いほど同時に使える人も多い!

 携帯電話は,限られた周波数の電波で少しでも多くのユーザーが使えるように,数々の工夫を凝らしています。その一つが,「無口な人が多いほど同時に使える人が増える」という仕組みです。

 この仕組みには,「AMR」(Adaptive Multi-rate)という音声のデジタル化方式(コーデック)と,電波を同時に利用する「CDMA」(Code Division Multiple Access)と呼ぶ2つの技術を使います。NTTドコモの第3世代携帯電話「FOMA」でも,この2つを活用しています。

 AMRは,電話の声をデジタル情報に変える方式です。特徴は,人が話している状況に応じて,デジタル情報の量を変えること。相手の声を聞いていてほとんど話していなければ情報量を小さくし,早口で話していれば多くの情報量でデジタル化します。1秒間に4.75k~12.2kビットの8段階でデジタル化します。

 CDMAは「コード」と呼ぶ不思議な鍵のようなものを声の情報に掛け合わせて,人の声を区別する手法です。携帯電話の端末がデジタル化した情報に,あるコードをかけて電波で飛ばすと,無線基地局には数多くの人の声が混じって届きます。混じった声に携帯電話端末で使ったそれぞれのコードを掛け合わせると,元の声が一人ずつ出てくるという不思議な仕組みなのです。

 ただし電波には,1秒間当たりの情報を多く送るほど電波のパワー(電力)が大きくなるという現象があります。電力が大きいと,ほかの人からはノイズが大きくなったように見え,ほかの人はCDMAのコードを使っても声が取り出しにくくなります。そこで,全体の情報量があまりに多いと,新たに電話をかけられないようにしてしまうのです。

 全体の情報量は,一つの無線基地局のエリアの中で,同時に話している人の声の情報を足したものになります。ですから,一人当たりの情報量が少なければ,人数を増やせることになります。そこでAMRでは,情報量を必要最小限に抑えているわけです。ただし,AMRで情報量が減らせるのは無口の人が多いときだけ。無口な人が多いと多くの人が通話できますが,早口でしゃべる人ばかりでは同時に携帯電話で通話できる人数は減ってしまうことになります。