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 いくら良いWebサイトを作ったとしても,注目してもらうのは至難のワザだ。やみくもにアクセスを増やすだけではなく,サイトの達成目標と開設目的に合ったエンドユーザーを獲得する必要がある。それには,「Webサイト」の企画だけではダメで,「Webサイトの宣伝方法」を企画しなければならない。

 また,Webサイトを放置すると,やがてエンドユーザーは減っていく。Webサイトの更新やブログの開設,それらのメンテナンスも支援して,エンドユーザーと末永く良好な関係を保つ必要もある。

 さらに,Webサーバーにデータが蓄積されたなら,これも活用しなければ意味がない。

 顧客にとっても制作者にとっても,Webサイトの開設は始まりであって終わりではない。実制作後の宣伝とサポートまで手がけようとする意欲が,顧客のWebサイトを生かした業務継続につながっていく*1。そして,水面に落とした小石が波紋を描くように,Webサイトからユーザーの輪が広がっていくのである(図1)。

*1 第1回目の図「企画に際して必要な,最低限の作業」を参照。

図1●開設したWebサイトからユーザーの輪が広がる

プレスを使った宣伝で,サプライズを呼ぶ

 Webサイト宣伝の企画に際しては,小規模事業者ならではのフットワークの軽さや地域性を逆手にとって生かすことがポイントである。次に,筆者が過去に実践して成功してきた方法をベースに,いくつかの方法を挙げてみた。

 顧客の経営者には,マスコミや,知名度のある会社や人物に滅法弱い人も多い。特に,地方ではその傾向は顕著だ*2。東京在住者は理解に苦しむかもしれないが,開設したWebサイトが記事として取り上げられたり,取材を受けてマスコミに露出するということは,地方の顧客にとっては一大事なのだ。それが全国紙でなくても,地方紙や地方局やラジオであってもだ。

*2 連載「コラボレーションから始めよう!」「第12回 顧客の先入観と誤解に負けるな!」を参照。

 そこで,Web公開のタイミングに合わせて,市役所などにある記者クラブを利用して,プレス発表をセッティングする。C.I.から手がけた場合は,ロゴを前面に打ち出し,Webサイトに関する発表だけでなく,C.I.の発表も兼ねて,当日の名刺やC.I.マニュアル(詳細は,次回以降解説)をプリントして用意しておこう。

 そして,知名度のある企業や人物に,祝電メールを書いていただけるよう依頼し,いただいたメールは,プレス用資料に掲載する。

 知名度のある企業や人物から,激励のメールをもらえれば,顧客への「サプライズ」にもなる。Web開設後,顧客側担当者とエンドユーザーとの間で,営業時の話題のひとつにもなるので,喜ばれること請け合いだ。ただし,知名度だけで内容がともなわない会社や人物と接続したり,祝電メールの依頼によって相手の気分を害しまっては元も子もないので,依頼相手の選択には十分に注意する必要がある。

 このようにしてプレス発表を行うと,波及効果でそれを知った顧客の業界の機関紙や広報誌,ローカル局などからの,取材申込みを期待することができる。先に述べたように,とりわけ地方の顧客にとって,マスコミ露出は絶大な意味を持つ。いくら紙媒体が低迷しようと,まだまだ新聞は有効だしテレビの力は大きい。

 また,逆に制作者にとっても,それはプラスに働く。地域で,取材を受けるようなWebを制作したとなれば,実績としてPRしやすいうえに,それ以降に手がけるWebサイトについても,実績をネタに宣伝効果を発揮できるからだ。

 とはいえ,起業したばかりの小規模事業者が,プレス発表の場をセッティングすることは難しい面もある。その場合はSOHOの団体や組合を頼ったり,顧客自身に尋ねてみよう。どのような顧客も,何らかの業界団体や地域の団体(商工会議所や青年会議所や同業者の組合)に所属しているものだ。その団体名義で調整をはかることのできる場合がある。また,直接プレスにネタを売り込む方法でも通用することがある。話題性があると判断されなければ取材してもらえないから,制作物のクオリティと売り込み方は重要だ。顧客と顧客の商品をよく知り,PRすべき点を明確にしなければならない。

 顧客が中規模以上の企業や老舗だった場合は,記事を知った広告代理店から,新聞や雑誌広告の掲載を打診されることがある。費用対効果を考えて,効果のほうが大きいと判断したなら,顧客と相談してみよう。

 掲載料は媒体と位置,色数,スペース等によって異なり,広告の文章には表現の問題(掲載基準)もある。エンジニアからの独立系事業者にはなじみのない作業だろうから,SOHOの団体などを通してデザイナーからの独立組に協力を求めよう。その際,注意しなければならないのは,アート・ディレクション経験の豊富なデザイナーを探すことだ。レイアウト専門のデザイナーは,広告宣伝の企画に関するノウハウを持っていない。

 ただし,エンジニアからの独立組であっても,出来上がった広告原稿の校正に対しては,真剣に取り組もう。新聞社は顧客のことを制作者ほどには知らないし,顧客は宣伝の表現まで言及しないからだ。的確な内容で,効果の出る宣伝文を書けるのは,制作者だけである。

 プレスを利用するメリットは,宣伝効果だけではない。顧客がWebサイトの運営と更新に対して,責任感を持ち始めることも大きい。

顧客サイトの宣伝に,制作者のサイトを利用する

 また,仕事で制作する顧客のサイトを成功させようと思えば,先に制作者の業務用サイトを構築しておくことが鉄則である。制作者のサイトが,意識的に特定の主義や趣味や嗜好をテーマとしているのでない限り,顧客サイトと制作者サイトの間に,垣根を設ける必要はない。文字通り,蜘蛛の巣のように張り巡らされた世界であり,ブログのトラックバック機能が登場してからは,Web間の壁など失せたも同然だ。

 顧客のサイトをPRするために制作者のサイトでの宣伝が有効なら,利用すればよい。むしろ,制作者のサイトが利用できないような代物であれば,そのほうが問題だ。

 制作者自身がメールマガジンを発行していたり,メーリングリストを主宰しているなら,これも活用して宣伝しよう。

リンク取付や開設告知メールを代行しよう

 Webサイトの開設直後には,相互リンク取り付けや開設告知メールを送るといった作業が発生する。

 有力サイトからの逆リンク取り付けは,顧客に歓迎される作業の一つである。ここでいう有力サイトとは,アクセス数の多いサイトや話題のサイトのことではない。顧客が取引を希望している企業のサイトであったり,将来のためにつながっておきたい研究機関や大学などのサイト,逆リンクによって顧客サイトの信頼性が増す,公的機関のサイトのことだ。

 先方からリンクを断られた場合は,顧客の顔がつぶれてしまうことになりかねないから,顧客にはリンクの希望先を尋ねないほうがよいだろう。顧客が望み,確実に了解を得られるか,たとえ了解を得られなかった場合でも,制作者が顧客のWebマスターの代理として依頼する限りは問題が発生しないリンク先をピックアップしよう。そして,あくまで制作者として,Webマスターの代理として,逆リンクのメリットを切々と綴ったメールを書いて依頼してみよう。

 また,制作技術系の展示会のデモンストレーションで,Webサイトのデータを利用してもらう方法もある。展示会の主催者がデモンストレーション用のデータを捜していたら,すぐさま提供を申し出よう。そういった情報をキャッチするには,メーリングリストやSNSに参加して,普段からアンテナを張っておかなければならない。そして,コレと思う情報をキャッチしたら即座に対応することだ。

 なお,開設告知メールの作成と配信は,手間のかかる作業なので,代行すると喜ばれる。重要な取引先や上得意様に対して,BCCの一斉配信だけで済ませるのは失礼だ。送信先別に内容の異なるていねいな文章を,Webマスターの代筆として書くのである。

 読者の皆さんがメールを受け取ったときのことを想像してみてほしい。それが大量発送の開設告知メールなら読まないかもしれないが,自社だけに宛てられた,自社のことにも触れた内容のメールなら,即座に削除することは出来ないはずだ。

 この段階で,先に書いた,顧客への取材が生きてくる。顧客の内情を知らなければ,代筆など出来ないのである。

 ここまで読んで,何か気づいたことはないだろうか。

 それは,企画という作業には,文章力が必要だということだ。企画書を作成するにも,Webマスターの代理として関係各所とやりとりするにも,要点をまとめて伝える技術が不可欠なのである。

 制作者は,デザインやプログラミングや営業の能力だけでなく,文章の表現能力も磨いたほうがよいだろう。

Webの運営やデータベースの活用を指南しよう

 さらには,Webサイトの活用方法を提案できれば,次の仕事へとつながっていくものである。

 皆さんは,商品販売や申込フォームのあるサイトで,問い合わせをした際,なかなか返事が届かないという状況を体験したことはないだろうか。筆者は,何度か体験している。顧客がメールをチェックしていないか,あるいは制作会社が窓口となってメールを転送するだけで済ませているかの,どちらかだろう。

 これでは信用を失うことになりかねないから,顧客には,エンドユーザーからのメールに対する即日返信の重要性を,とくとくと説明しておかなければならない。できれば,専任の担当者を決めてもらったほうがよい。もし,顧客が対応できないなら,制作者が対応する手はずを整えておかなければ,Webサイトの開設が,逆にイメージダウンにつながりかねない。

 もちろん,そこまでのアフタフォローを無料では出来ないだろう。定額のサポート費を,見積段階で提示しておかなければならない。アフタフォローに要する費用を,Web開設後に折衝することは,顧客にとっては「寝耳に水」になってしまうから,見積提出前に,顧客側の技術者の有無やそのレベル,Webサイトの運営にかける情熱を見抜いて,オプション料金として見積書に記載しておく必要がある。

 また,データベースの扱い方,活用方法の指南も,必要になることがある。Webサーバーに,ユーザーが入力した情報,例えば商品に対する感想などが蓄積されても,顧客側が,そのデータを活用できなければ情報蓄積の意味がなくなってしまう。顧客側の事情によっては,データベース・ソフトの操作指導まで踏み込まなければならないこともある。

 これらのことは,顧客側が自ら学び実践することではあるのだが,制作者側はかたくなにならず,歩み寄りの姿勢を見せたほうが,その後の業務につながるというものだ。顧客も,学ぶきっかけさえあれば共に成長していけるのである。

ブログやSNSから,顧客の人脈と販路を拡大しよう

 ブログを持っていて当たり前の現在,顧客側にも,Webサイトの1コーナとして,あるいは社員コーナとして,ブログを取り入れたいところだ。RSS配信で訪問者を獲得するには,できれば毎日,最低でも1週間~10日に一度は何がしかの更新を行う必要がある。その更新内容も数行程度ではダメで,エンドユーザーやエンドユーザー候補に,何らかのメリットを与える,濃い内容のテキストでなければならない。

 顧客に,更新の重要性を認識してもらい,ブログの文章作成や,コメントに対する柔らかく温かく適切な返事の書き方を指南する必要もあるだろう。定期的に顧客のブログを閲覧して回り,コメントやトラックバックを投稿したり,ヒートアップしている場合は収拾を図るといった支援も,アフター・フォローとして求められるだろう。

 SNSで,つながりたい事業者や人を探して,双方にメリットのある形で接続することも,これからは重要になってくる。そのためにも,制作者があらかじめSNSで幅広い人脈を築いておいたほうがよい。

 さらに,コンテスト等に応募して受賞すれば,顧客の業務に無関係な一般ユーザーの間でもサイトの知名度を高めることができる。Webページのコンテストではなく,写真や日記などの素材などを応募するのでもよいし,あるいは社員に文章を書ける人がいたら全社でバックアップして出版まで持っていくのも一手だ。

 掲載する写真についても,レンタルフォトや素材辞典の写真だけでなく,顧客側にプロに近い腕を持つアマチュア・カメラマンの社員がいたら,その写真を積極的に採用しよう。写真を担当した社員の家族や友人が閲覧することにより,口コミでの広がりが期待できる。家族や友人たちが,個人のブログや参加するSNSでPRすることによって,企業単位ではない,地域や家族単位での横のつながりが出てくる。また,地域の官公庁(観光課)や,観光協会で,風景や地域行事の写真を借りられる場合があるから,問い合わせてみるとよい。地域性を生かすWebでは,そのような写真の利用も,横のつながりを広げるのに有効だ。

 企業や店舗といった「法人」意識にがんじがらめになるのではなく,法人と個人のゆるやかな接続による宣伝方法を考えてみよう。

身近にいる,プランナーたちを手本にしよう

 Web制作の仕事量は,事業者の数に比例して増えているわけではない。差別化するには,顧客満足度を高めるしかない。プランナーへの一歩を踏み出せば,確実に何かが変わる。

 Webに限らず,映画や音楽でも,制作や創作の仕事では,必ずプランナーがいる。

 映画館で公開されるようなものでなくても,学生の自主制作であっても,だ。町には一人や二人は,ミュージシャンを招くために動いている人がいる。福祉や育児に関するイベントで,講師を招くために,企画から運営までを手がける人もいる。町の新しい観光行事を企画して仕切っている人もいる。彼らは皆,プランナーだ。

 身近な,その人たちのことを思い浮かべて,自分も近づくように努力してみるとよい。

 読者の皆さんにも,お手本にしたいプランナーがいるのではないだろうか? ぜひ「コメント」ボタンから投稿をお願いしたい。