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 一般的なオフィスでは,席の配置などが元々決まっており,自由にカスタマイズできないことが多いだろう。では自由にカスタマイズしてよいと言われたら,皆さんはどのような配置にするだろうか? 今回はTRICHORDチームで実施しているプラクティスの一つ,ワークスペース・メイキングについて解説する。

 多くのオフィスでは,部署やチーム・メンバーの机を向き合わせて「島」を作る,いわゆる「島」スタイルのレイアウトを採用している。ではなぜ島スタイルで席を配置するのだろう? オフィス・レイアウトは専門の業者に頼むため,特別な理由がない限り島スタイルの配置になる,というのが本当のところではないだろうか。

 島スタイルの席配置は,「限られたオフィス空間に効率よく机を配置する」「人の動線を適切に確保する」「上司が部下を監視できるようにする(上司の席が島全体を見渡せる場所にある場合)」といった目的では一定の効果を上げていると思う。しかしこのレイアウトが,TRICHORDチームのような少人数で構成されたチームにとって作業しやすいかというと,必ずしもそうではないと感じている。

 一番の理想は,プロジェクトごとに専用の部屋(プロジェクト・ルーム)で仕事をすることだ。とはいえ,それができるほど恵まれた環境で働く人は少数派だろう。今回は与えられた制約の中で,いかに効率良く作業できる空間を作るかという点に絞って紹介する。

 まず席の配置については,背中合わせにするのがベストである。一見,「互いの顔が見えないのでは?」と思うかもしれないが,そもそも目の前の仕事に集中しているときに互いの顔を見ることはない。「島」スタイルでも,向き合った机の間を低いパーティション(ついたて)で区切って互いの顔が見えないようにしていることが多いはずだ。

 この点,背中合わせなら,必要に応じて全員が背中側を向くことで,間に障害物を挟むことなく互いの顔を見ることができる。つまり純粋な人の輪ができるのだ。このため,ちょっとしたミーティングなら会議室などに移動しなくても,全員がふりむくだけで行うことができる。実際,TRICHORDチームはほとんどといっていいほど会議室を使わずに,“ふりむきミーティング”で日々の作業をこなしている(写真1[拡大表示])。


写真1 TRICHORDチームのワークスペース
座席を背中合わせに配置しているため,ふりむくだけでミーティングができる。

[画像のクリックで拡大表示]

 またこのようなレイアウトにしておくと,互いのディスプレイを見る際に障害物がない。そのため,別のマシンにあるソース・コードをちょっと確認したいといった場合でも,わざわざ移動することなく,すぐに見ることができる。連載第20回に紹介したバグレゴも,ちょうど全員がふりむいたときに目に入る位置に置いてある。

 もう一つ大事な点は,壁が近くにあることだ。壁は,カードや付せんを張ったり,ホワイトボードを設置したりするなど,全員で共有したい情報を掲示するのに必要になる。もちろん,チーム全員が無理なく見える位置にあるのが望ましい。朝のスタンドアップ・ミーティングでは,この壁の前にチームのメンバー全員が集まることになる。

 現在のTRICHORDチームのオフィスは一種のプロジェクト・ルームとなっているため,ある程度自分たちの都合に合わせて環境をカスタマイズできる。対して以前のオフィス(永和システムマネジメントの東京支社)では「島」スタイルの机の配置になっており,配置の変更は難しかった。このような場合は,プロジェクト・メンバーの席を島ではなく,島と島との間に割り当てたり,オフィスの端の方に割り当てたりすることで理想に近づけることができる(図1)。


図1 島形式におけるプロジェクトの席配置の例

 以前のオフィスでは,プロジェクトごとにどのあたりの席を使いたいかをプロジェクト・リーダーが申請できた。リーダーによっては,壁が近くにあり,背中合わせという立地条件を好んで選ぶため,取り合いになることがあったほどだ。

 最後に,このプラクティスを実施するメリットをもう1つ挙げておきたい。それは,チーム全員で考えて行う共同作業であるために,チームの絆(きずな)が深まる点である。TRICHORDチームは今まで2回ほどオフィスの引越しを経験している。そのたびに与えられた制約の中で,机の配置を考え,机を移動し,壁に物を張り,自分たちがこれから仕事をする環境を作り上げるという作業を行ってきた。この作業自体が,新しい環境で最初に行う共同作業になるのだ。加えて新しいメンバーがいる場合は,この作業を行うことで,チームに溶け込みやすくなる,というメリットもある。

懸田 剛

チェンジビジョンでプロジェクトの見える化ツール「TRICHORD(トライコード)」の開発を担当。最近,ハックという言葉よりも“工夫”という素晴らしい日本語があることを再認識した。工夫の積み重ねが“功夫”になる。個人サイトはhttp://giantech.jp/blog