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 小泉前総理とともに「聖域なき改革」を展開してきた竹中平蔵氏。小泉内閣総辞職と,自身の議員辞職の前日にあたる9月25日,本誌のインタビューに応じ,1年間の通信・放送改革を振り返った。

(聞き手は山根 小雪=日経コミュニケーション

通信・放送分野の改革にどういう思いで取り組んだのか。

  インタビューに応じる竹中平蔵前総務大臣(写真 稲垣純也)
  インタビューに応じる竹中平蔵前総務大臣(写真 稲垣純也)

 通信技術の進化に社会が付いていっていないという認識を持っていた。世界一安くて速いブロードバンド・インフラがありながら,その利活用が進んでいない。最大の原因は,コンテンツ流通の枠組み整備が遅れていることだ。コンテンツの議論は必然的に「通信と放送の融合」や放送コンテンツの活用,伝送路としての通信インフラの利用という問題にぶつかる。これらの問題はすべてつながっているという意識で議論を始めた。

達成度を聞かせてほしい。

 一つの政策を完成させるには最低でも2年,できれば3年の時間が必要だ。「通信・放送の在り方に関する懇談会」では,今までにない包括的な議論ができた。だが,懇談会の提言をいかにして法律にするかは次の政権に委ねるしかない。道半ばというよりも,道に端緒を付けたという状況だ。だが,良い端緒が付けられたと感じている。

政府・与党合意や工程表など,政策決定に導くレールを敷いた。

 民主主義社会の政治プロセスを経なければ政策決定には至らない。必要となるのが与党との合意だ。そして,その合意に基づいて行政が進めていく。

 通信・放送分野は既得権益者と結びついた政治勢力が非常に強い。この人たちの反対を抑えるため,まず与党と合意して,その合意事項を閣議決定することで政治勢力に“縛り”をかけた。この過程で本当に苦労した。

 一方の行政を縛るために,工程表をまとめた。骨太方針が決まってから(小泉内閣総辞職までの)2カ月半で,できる限りのレールを敷いた。しかし実質的な判断は次の政権,次の大臣,そして総務省官僚が判断すること。できる限りしっかりやってもらいたい。

今後に何を期待するのか。

 当面は競争政策の推進が重要だ。新競争促進プログラム2010を遂行してもらいたい。1985年のNTTの民営化以降,競争政策は順調に進んできた。だが,メタルから光への転換期になって東西NTTのシェアが上がってきた。これをなんとかしなければならない。

 これまでの競争政策は海外に先例があった。だが今は日本がトップを走っている。最先端の政策を作るのだという野心を持ってやってもらいたい。

通信と放送の融合を阻むものは何だったのか。

 反対するのは,いつも民間だ。金融の時も,郵政の時も同じだった。民間が政治に圧力をかけ,族議員が動く。族議員と一部の役所が結託して阻んでいる。日本経済団体連合会は政府の規制改革が進まないと批判する。しかし反対しているのは経団連に所属する一部の業界。改革は民間の問題なんだと言いたい。

 改革に対して社会全体が前向きになってもらいたい。みんなの意見を聞いて,みんなが納得するようにまとめたら,現状維持にしかならない。