PR

 紳士服販売最大手の青山商事は2006年8月に、若者向けの専門店「THE SUIT COMPANY」(TSC)の銀座数寄屋橋店(東京都中央区)において、約2400着のすべてのスーツに無線ICタグを張り付け、商品のこだわり情報やサイズごとの在庫情報の提供を開始した。青山商事は、紳士靴を対象にしたICタグシステムを2005年9月から稼働させている。それをスーツにも適用し、同様の効果が得られるかを検証する狙いがある。

 紳士靴の場合、サイズごとの在庫情報の提供に大きな価値がある。靴は通常、店頭に一つのサイズしか陳列されておらず、サイズ在庫を確認するには店員に尋ねる必要がある。サイズがなかったり、好みに合わなかったりした場合には、別の商品の在庫を探してもらうが、それも「3回が限界」(青山商事執行役員IT・システム部長の長谷川清秀氏)という。店員に手間をかけさせることに、顧客が心理的な負担を感じるためである。ICタグ対応のキオスク端末があれば、顧客が自ら在庫をチェックできる。何足でもチェックして、希望のものが決まってから店員に尋ねられる。顧客も店員も手間が省ける。

 このようなサイズ在庫の表示は、スーツの場合にはそれほど効果が見込めない。TSCのスーツは通常、サイズごとに陳列棚が分かれており、顧客は自分のサイズの棚の中から商品を選ぶからだ。サイズ在庫が便利なのは、服のサイズが合わなかったときに、一つ上や下のサイズを示す場合などにとどまるとみられる。それでもスーツにICタグを適用するのは、「実際にやってみないとICタグの効果は検証できない」(青山商事の長谷川氏)からだ。実際の顧客に試してもらい、その反応を見たうえで今後の展開を検討する。期待するのは、商品のこだわり情報を提供することで購買意欲を高められることである。

 ICタグは値札などと一緒に、スーツのボタンなどにつり下げる。ICチップの周波数帯は靴用と同じ13.56MHz帯を採用し、独自の単品番号を格納する。キオスク端末はスーツ向けの専用製品を開発した。スーツをつり下げた状態で、画面でこだわり情報などを表示できる。アンテナはデザイン面を考慮して、日本板硝子のガラス製製品を採用した。

靴売り場では店員を3人から2人に削減

 紳士靴が対象のICタグシステムに関しては、2005年9月にまず東京・上野店に導入し、そのあと銀座と新宿、横浜、梅田などに展開している。今後も店舗のリニューアルなどのタイミングに合わせて導入店舗を増やし、2006年9月までには「さらに2~3店増やす予定」(青山商事の長谷川氏)だ。

 靴を対象にしたキオスク端末は、実際の店舗で調べてみると、来店した顧客の4人のうち3人が利用しているという。アンケートによる調査結果も非常に好評だ。上野店の靴売り場では店員の業務が効率化されたことから、ピーク時に3人いた店員を2人に減らしたという。

 ちなみに同様のシステムを導入している三越の場合、東京・日本橋本店では顧客が自らキオスク端末を触ることはほとんどなく、店員が端末を使って顧客の前で在庫をチェックしている。ただし同じ三越でも銀座店では比較的顧客層が若いが多いためか、顧客がキオスク端末を使う割合が高いという。同じシステムでも、客層によって使い方が変わるようである。



本記事は日経RFIDテクノロジ2006年6月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです。