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 固定と移動の両事業を社内に持つKDDI,そして固定系のソフトバンクテレコム(旧日本テレコム)と移動通信のソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン日本法人)を傘下に抱えるソフトバンク。NTTグループと競合する両グループは既に,固定と移動を一体提供できるFMC(fixed mobile convergence)型の営業体制を整えている。

実は固定と移動の法人営業が分かれているKDDI

写真1:KDDIの田中孝司執行役員ソリューション事業統轄本部長  
写真1:KDDIの田中孝司執行役員ソリューション事業統轄本部長
 

 KDDIは,固定と移動の区分けがなかった法人営業を,約2年前に分割。固定通信系のソリューションを提案する「ネットワークソリューション事業本部(NWSOL)」と,移動通信系のソリューションを提案する「モバイルソリューション事業本部(MSOL)」が誕生した。

 もともと一体だった法人営業部隊をわざわざ固定系と移動系に分けたのは,それぞれのサービスが複雑化し始めたから。「どちらのサービスも,一人の営業担当者がすべて理解し,ユーザーに適切なソリューションを提案をするのは難しかった」と,KDDIの田中孝司執行役員ソリューション事業統轄本部長は振り返る(写真1)。担当を固定系と移動系に分けることで,それぞれの専門家として営業できるようにする体制に変更したのだ。

 一見,営業先が重複するなどで非効率に見えるが,「互いにユーザーの要望を共有しやすく,案件の取りこぼしが少なくなる。さらに,NWSOLが受注した案件から,MSOLの案件が派生するなどの相乗効果もある」(田中執行役員)。この場合,受注案件によってはNWSOLとMSOLの事業部に売り上げが分かれるが,KDDI一社として見れば特に問題がない。この点は,会社も株主構成も異なるNTTグループ内のNTTコムとドコモの連携では障害となりそうな部分。柔軟な対応が可能なKDDIの大きなアドバンテージと考えられる。

 現在,KDDIの法人営業体制は,NWSOL事業部もMSOL事業部も,ともにアカウント先の企業は数千社(重複企業を含む)を抱える。営業人員は,NWSOLが約1700人,MSOLが680人程度という。

 特に最近,戦略的に力を入れているのがMSOL事業部。携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)の開始に向け,営業力を強化してきた。ライバルのNTTドコモと同様に,ソリューションと連携させた携帯電話端末の販売で顧客の囲い込みを狙う。「現時点のauは,ドコモよりも端末の競争力がある。そこをフックに,一気にソリューション提案やLAN環境の構築にまでつなげたい」(田中執行役員)。多くのユーザー企業は,年度始めに大規模なシステム更改やネットワーク移行を実施する例が多いので,その時期に向け一層,提案力やサービス力を強化していく方針だ。

  写真2:KNSLの小川武志 取締役執行役員専務
 
写真2:KNSLの小川武志
取締役執行役員専務

 モバイルSOLの強化や,NWSOLとの連携作戦はうまくいっているようで,「大手企業の受注は特に順調。ここ2年間は売上高やユーザー数が年率5~6割のペースで伸びている」(田中執行役員)。今後の課題は中堅や中小企業への営業力強化。ユーザー企業の裾野を一気に広げるため,中堅・中小企業向けの営業を担当する子会社KDDIネットワーク&ソリューションズ(KNSL)を筆頭に,パートナー販売や,法人代理店もテコ入れしていく。

 中小企業開拓の中核となるKNSLが描くのは,PBX(構内交換機)の設定業務などを請け負う電設事業者との連携だ。現在,大手14社の電設事業者と手を組み,中小企業への営業力強化をもくろんでいる。「これまでは直収電話のメタルプラスを主に売ってきたが,電設事業者と連携しながら今後は,無線LAN機能を搭載した携帯電話端末を使うモバイル・セントレックスを売り込む」(KNSLの小川武志取締役執行役員専務,写真2)。全国津々浦々に存在する電設事業者は,PBXの設置や設定などで中堅・中小企業とのかかわりが深い。こうした電設事業者との協力関係を戦略的に広げて,メタルプラスやモバイル・セントレックスの拡販に挑む。東西NTTが特に強い,地方の中堅・中小企業ユーザーの獲得につなげる。

ベールに包まれたままのソフトバンクの法人戦略

 ソフトバンク・グループは,これまで法人営業を担当してきたソフトバンクテレコムが,ソフトバンクモバイルと連携して固定と移動の一体営業を目指す。ボーダフォン日本法人の買収後,ソフトバンクテレコム内にモバイル事業本部が誕生した。今後はソフトバンクテレコムが,ソフトバンクモバイルのサービスを調達し,ソリューションとしてユーザー企業に提供する形になる。

 ただ,ソフトバンク・グループの新たな法人営業戦略は,それ以上の情報が少ない。「ソフトバンクテレコムの営業人員が1000人規模で,法人向けに携帯電話端末を売る」(ソフトバンクの孫正義社長),「年内には,HSDPA(high speed downlink packet access)対応の通信カードを出す予定なので,それと併せて新たな法人戦略を打ち出す」(ソフトバンクモバイル)など,断片的な情報しか明らかになっていない。

 10月16日には,傘下の金融資産管理の会社を事業変更し,「ソフトバンクテレコム販売」と社名も変更。今後,「ソフトバンクテレコム販売が,法人向け携帯電話の営業などのためソフトバンクテレコムのサポートをする予定」(ソフトバンク)としているが,新たな人員拡充や,具体的な事業展開などについては未定。その実状はまだ見えてこない。