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データベースで情報を共有

 翌2005年1月には社内で報告会を開き、調査結果を踏まえた改善活動がスタートした。この改善活動は具体的かつ多岐にわたる。「品質クレーム対応」や「営業活動プロセス」「商品のデリバリー」「情報の公開」など8つのワーキンググループが発足した。ワーキンググループはCS推進会議が定める方向性を定める活動の実働部隊となっている。

 さらにワーキンググループ5つを支援するために顧客情報を管理するデータベース「CRMサポートシステム」を導入した。顧客に納めた製品の型番や納入時期、修理や点検の履歴などが蓄積される。非常事態に迅速に対応するための機械ごとのカルテとなる。2005年10月に運用が始まっている。

CS活動を始めた永嶋弘和常務(右)と竹下次郎氏
CS活動を始めた永嶋弘和常務(右)と竹下次郎氏

 CRMサポートシステム構築の背景には同社の営業が抱える問題があった。顧客の情報が担当の営業マンの属人的なものとなっていたのだ。「個人の情報が組織の情報となっていなかった」と指摘するのは、JUKIヒューマンサポート(東京・調布市)の竹下次郎取締役人財開発部長だ。この6月までCRM推進室長としてCRMサポートシステムの構築と運用に携わってきた。


 顧客に出荷した製品に関する情報はこれまでファイルおよそ3000冊に納められていた。販売してきた数万台分の製品データだ。あくまで紙ベースのため緊急の修理などで対応しづらかった。「一番怖いのは担当者が異動する時。顧客の情報がきちんと引き継がれないことが少なくなかった」(竹下氏)

 顧客からの調査結果でもこうした点は指摘されていたという。3000冊分のファイルのデータをCRMサポートシステムのデータベースに登録する作業は急ピッチで進められたものの、4人がかりで3カ月も要した。

 結果、顧客から連絡があった際に即座に納入している機会の型番や修理の履歴などが検索できるようになり、修理や部品交換などに対する反応は向上したという。

 ほかにも従来はそれほど意識していなかった情報公開の分野に力を入れた。具体的にはホームページだ。専属の担当者を初めて置いた。商品のアピールに動画を用いたり、発信する情報量を増やした。

●CSの観点で改善した産業装置事業部のホームページ
●CSの観点で改善した産業装置事業部のホームページ

大阪にトレーニングセンター設置

 満足度調査を受けて設立した施設もある。大阪府吹田市の西日本トレーニングセンターだ。従来、購入したマウンタの操作を顧客が学ぶトレーニングセンターは、工場がある秋田県横手市にしかなかった。

 調査では西日本の顧客から「教育トレーニングの場所が遠い」という指摘が多かった。そこで産業装置事業部は、2005年10月に西日本トレーニングセンターを新設した。同センターでは今年2月からはメンテナンスのトレーニングも受けられるようになったが、これも顧客からの要望だったという。

 JUKIでは調査結果を受けて改善活動を行っているが、重点項目にメリハリをつけている。それを表すのが下の図だ。調査の結果、顧客の満足度が低いところは改善をしなければならい。

●改善項目にメリハリをつける
●改善項目にメリハリをつける

 それほど期待されていない分野であれば、同じ満足度でもより期待度が高い分野の改善を優先させなければならない。単純ではあるが、調査では満足度とともに期待度も調べている。その兼ね合いから優先度を決める。

 一連のCS活動では従来の業務を徹底的に見直すことが求められる。この際、「実は、ERP導入の経験が役に立った」と永嶋常務は明かす。

 JUKIは2002年10月、業績が悪化していた時期に全社一丸となってERP(統合基幹業務)システムを導入している。永嶋常務は当時、業務改革推進部長として導入を指揮した。「会社全体が部分最適に陥っていた。管理会計が現実にマッチしていなかった。ERP導入を全社改革に使った」。だからこそシステム導入の際、業務の見直しの大切さを何より感じていた。今回のCRMサポートシステムについてもシステム導入だけで成果が出るとは考えていないという。

ほとんどの項目で前回値超す

 永嶋常務は産業装置事業部について「最強の中小企業にしたい」と語る。意図するところは中小企業のような小回りの良さだろう。「作って売って終わりではない。顧客の要望をどれだけ生かせるかが勝負」と永嶋常務は強調する。

 昨年11月に2回目の顧客満足度調査を行った結果、「営業活動」の項目がわずかに下がった以外、すべての項目で前回を上回った。「まだまだ十分ではない」と永嶋常務は言うが、1年にわたる運動の成果が見えてきた。今年に入ってその結果を受けた社内改善運動へと産業措置事業部は動き出した。現在、第2期のCS向上運動の真っ最中である。

 第3次調査では国内の顧客だけではなく、海外のユーザー企業にアンケート調査を実施することも検討している。同事業部の国内売り上げは30%にも満たない。海外でのCS展開は重要なテーマになってくる。

 CRMサポートシステムで顧客情報を共有・活用する風土が醸成され、CS重視の精神がそこに乗ればJUKIの新しい成長戦略となるはずだ。第2の柱での成功体験が他部門へ水平展開される日も遠くないかもしれない。

●JUKIの改革のポイント
●JUKIの改革のポイント
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