当たり前だが,マイクロソフトのOfficeはパソコン・ソフトである。ところが,米マイクロソフトはもはやそう考えていない。新バージョンを「2007 Office System」という名前にして,わざわざSystemという言葉を付けたくらいである。それではSystemとはなんだろうか。大企業の奥の院で密かに開発される難しい代物か。米マイクロソフトでOffice Systemの責任者を務めるクリス・カポセラ氏に,「Systemとは何か」,素朴な疑問をぶつけてみた。
なぜわざわざSystemと銘打ったのですか。
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米マイクロソフト:クリス・カポセラ氏(撮影:いずもと けい) |
企業の枠や地理的な境界を越えてコラボレーションできる,そして自社や個人の機密を守れるようにする。これがオフィスソフトにとって重要なテーマだと考えました。そこで私たちは新しいOfficeを開発するに当たって,組織内で情報を共有するためのソフト「SharePoint Server」や,ピア・ツー・ピア・ソフトの「Groove」など,コラボレーションのための製品を用意しました。そこでSystemという名前を付けたのです。
インターネットの技術を取り入れたのもそのためですか。
技術に関して,我々は今,大きな新潮流に遭遇しています。コラボレーションを実現する「コンシューマ・テクノロジー(消費者向け技術)」の登場です。IM(インスタント・メッセンジャー),ブログ,Wiki,RSS。いずれもインターネット上で広く受け容れられるようになったコンシューマ・テクノロジーです。コンシューマはこうした技術を普通に使うようになっています。一連の技術は,企業の中,企業同士,あるいは企業と個人がコラボレーションするためにも使えます。もともと消費者向けに作られた技術ではありますが,企業も使い始めています。そうしないと,若い社員が企業に入ったとき,「なぜ,ブログやWikiを使えないのか!」と不満を感じてしまうでしょう。
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また,電子メールや個人情報を管理するソフトの「Outlook」にRSSリーダーを追加しました。自分の仕事に関係する情報が入っているWebサイトが更新されたとき,自動的に知らせてくれます。常にOutlookを開いていれば,いちいちWebページを開いて新着情報があるかどうかチェックしなくて済むわけです。
このように新Officeは,新しいワークスタイルを可能にする仕組みを提供するものです。Office製品群という統一された土台の上で,様々なコラボレーションができ,しかも,誰がどんな情報を扱っているか,きちんと把握できるようになるのです。
便利になるような気もしますが,さらに機能が増え,かえって使いにくくなりませんか。
正直申し上げて,多くの利用者から,「Officeの機能の数%しか活用していない」という意見をいただいておりました。そこで,Office Systemでは,「リボン」とよぶ,まったく新しいユーザー・インタフェースを取り入れました。利用者はリボンを使って,今までできないと思っていたことができるようになります。これは,エキサイティングなユーザー・インタフェースです。ほとんどのマスコミは,この新しいユーザー・インタフェースに関心があり,それについて書くと思います。それはその通りです。飛躍的な変化をとげますし,本当にエキサイティングですから。でも,2007 Office Systemによって新しいワークスタイルを可能にしたい,と我々が考えていることも強調したいのです。