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 Webサイトを構築をするにあたっては、完成するまでの間、いやそれだけではなく、完成後の運用・更新なども含めてさまざまなプロセスが存在する。アクセシブルなWebサイトを構築し、またそれを維持したままで(もしくはより向上させて)運用していく上では、各プロセスごとに考慮すべき事項がたくさんある。本連載では個々のプロセスに焦点を当てていきたいと思っているわけだが、まずは各論に移る前に、全体の流れを簡単に紹介していこう。

 今回はWebサイトの構築・運用をしていく際のワークフローについて、Webアクセシビリティの観点から考えてみることにした。特に、各プロセスにおいて、どのポジションの人がアクセシビリティについて考える必要があるのかといったことを確認していこうと思う。なお、以降はWebアクセシビリティはどんなWebサイトにも必要である、ということを前提としてのフローである。と書くと、「Webアクセシビリティなんて、一部のサイトだけで考えればいいんじゃないの?」と思う方もおられることであろう。しかし、第1回で述べたとおり、本連載において、Webアクセシビリティとは「Web(上の情報)にアクセス可能かどうか」にかかわること。どんなWebサイトにとっても、あたりまえに必要なのだ。

 ワークフローの前半部分は0から3までの4つのステップに細分化できる。各ステップで踏むべき内容は、制作者側と発注者側両方の立場別に以下の具体例が提示できる。

  • Step 0 (Web制作者)制作・構築前/(情報発信者)発注前
  • Step 1 (Web制作者)要求分析/(情報発信者)要求伝達
  • Step 2 (Web制作者)現状把握/(情報発信者)現状(再)確認
  • Step 3 (Web制作者・情報発信者)要件定義

それぞれの詳細は以下のとおりだ。

Step 0 (Web制作者)制作・構築前/(情報発信者)発注前

 さて、それでは早速フローを確認していこう。と、書いたものの見出しは「Step 0」である。アクセシブルなサイト制作(に限らず、本来何でもそうだとは思うが)は、サイトを実際に制作する作業に入る前から始まっているからである。それは何故か?前回の記事でも述べたように、目的と結果が大事だから、なのだ。Webサイトを制作したい(もしくは、リニューアルしたい)と考えたからには、必ず動機があるはずだ。これを可能な限り明確に関係者に伝えること、が重要なのである。この動機の確認がStep0にあたる。

Step 1 (Web制作者)要求分析/(情報発信者)要求伝達

 では、アクセシブルなWebサイトを制作するということは決まった、としよう。次のステップはどういった面でアクセシブルなサイトを制作するかを、情報発信者が制作者に伝えることだ。とはいえ、この時点ではまだ「アクセシブルなWebサイトを制作したい」ということが決まっているだけのことも少なくない。そして現段階で動いているスタッフは、制作側の場合営業を中心とした、いわゆるフロントスタッフが、情報発信者側ではビジネスに関わるスタッフがメインとなって動いていることだろう。アクセシブルなサイト構築、という観点からは、できるだけ早い段階からその方向性と内容を明確にしていくことが重要であり、また予算にも大きく関わってくる可能性がある為、理想(どこまでアクセシブルにすることができるのか)と現実(その為には予算がどのくらいかかるのか)について、お互いが理解しておくべきだ。そこで、情報発信側としては具体的な用件を、制作側としては用件の実現に必要なコストの確認などが求められる。

Step 2 (Web制作者)現状把握/(情報発信者)現状(再)確認

 このステップは、当然のことながらリニューアルなど既存のWebサイトが存在する場合にのみ適用される。したがって、新規にWebサイトを作成する場合は次の要件定義に進むことになる。前のステップにおいて、プロジェクトの方向性が固まってきたはずである。続いて、プロジェクトの要件を確定させていくことになるわけであるが、その前に現状、すなわち既存サイトの状況を確認しておかなければならない。いかにに完璧な要件定義を行ったところで、現在の状況や環境がそれを可能にするとは限らない。この段階では、制作者側はもちろんのこと、情報発信者側においても、技術的な内容を理解できる担当者が重要な役割を担うことになるだろう。

 また、既存サイトの把握もさることながら「既存ガイドライン」の有無と、その内容の確認作業がアクセシビリティのあるサイト制作では最大のポイントになる。既存の内容を継承することになるのか、維持しつつ向上させていくのか、それとも新しく作り直すのか、といったところを、制作者、情報発信者とも、アクセシビリティに関する主担当者がしっかりと確認しておく必要がある。

Step 3 要件定義

 続いてのステップは要件定義だ。ここでは設計および実装に入る前に、その要件を具体的に決定しなければならない。場合によっては制作途中で要件が変わる可能性はあるとはいえ、基本的にはここで決定した内容に沿って制作が進んでいくことになる。アクセシビリティに関連する要件定義において、最も重要と思われるのが、スコープの定義ではないだろうか。特に準拠することになるガイドラインにレベル設定がある場合などは、どのページがどのレベルまで対応しなければならないか、を決める必要があるだろうし、ガイドラインと呼べるものがなかったとしても、具体的にどのような内容を満たす必要があるのかを明確にしなければ、制作後に検証のしようがなくなってしまうからである。

次回は後編として、設計、実装、検証といったステップについて考えてみることにしよう。