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■アウトソーシングは目的にはなり得ない。とはいえ、BPRを始めるよいチャンスになることは確かだ。業務改革のきっかけとしてアウトソーシングを利用している自治体の例として会津坂下町を紹介する。

※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第13号(2006年10月1日発行)に掲載された特集「どうする? 基幹系アウトソーシング」の一部を再構成したものです。

■当初の計画を変更しアウトソーシングを導入

村山 隆之氏
会津坂下町
総務部情報防災班
情報管理担当
村山 隆之氏

 人口1万8000人の福島県会津坂下町では、2005年7月~2006年3月にかけて、基幹系システムのアウトソーシングを完了した。契約先はエー・アンド・アイ システム(A&Iシステム)。電算のパッケージソフトを中心にシステムを刷新した。コストは5年間で約3億円。

 アウトソーシングの決定から稼働まで約9カ月。会津坂下町が1年にも満たない短期間でプロジェクトを進めたのには理由がある。実は同町ではシステム更新にあたり、従来使用していた汎用機ベンダーのパッケージを導入し、機器は従来通り自庁内で管理することでほぼ内定していた。しかしそのベンダーの対応に「納得のいかない点があった」(会津坂下町総務部情報防災班の村山隆之情報管理担当)。このため、急きょプロポーザルで第2位だったA&Iシステムの提案を採用した。両社ともほぼ同じ金額の提案だった。また、A&Iシステムは隣接する喜多方市でのアウトソーシングの実績があったこと、汎用機からのデータ移行を自分たちでコストをかけずにできるメドが立ったことなどから、事業者の変更を決断した。

 村山情報管理担当は「事業者を切り替える前は、古いシステムをリプレースすることしか考えていなかった。アウトソーシングを機に業務改善を進めていこうと考えた」という。

 会津坂下町では、可能な限りカスタマイズを排して業務パッケージを導入する方針とした。また、アウトソーシングを機に、帳票の出力は各業務主管部門が直接データセンターに依頼するようにした。

 こうした“システムに業務を合わせる”やり方は、職員の反発を招きがちだ。しかし、会津坂下町ではそれほど大きな不満は出なかったという。村山情報管理担当らの熱意や、採用した電算のパッケージソフトの使い勝手が良かったことも大きいが、事業者を急きょ変更した事情を職員が承知していたため、結果的に求心力が高まった面もあるようだ。

 「キックオフの会議の時、これからは各職員が責任をもって仕事をするようお願いした。まずはそこから考え方を変えていこうと呼びかけた」と村山情報管理担当は振り返る。

 また、村山情報管理担当はアウトソーシングに伴う業務改善効果をこう説明する。「従来は、担当者の“好み”でカスタマイズをしていたため、担当者が変わるとむしろ使いにくくなることもあった。情報部門の担当者が出張に出ると、帳票出力が滞ることもあった。現在は、各部署が自分たちのスケジュールに合わせて業務ができるようになったので、むしろ便利になっている」。

 システムの運用や帳票出力から解放されたことで、情報部門の職員は今までできなかった新しい仕事にも取り組めるようになった。少しずつだが、成果も出てきている。例えば同町では7月に、中央公民館にFREESPOT協議会の「FREESPOT」を利用して高速の無線LANを導入した。「これまでは時間に余裕がなく、新しい案件については『ベンダーから提案があれば検討しようか』という意識だった。今回は職員からの発案で、それをきちんと実現できた」(村山情報管理担当)。

■アウトソーシングを機に文書管理のルールを策定

 アウトソーシングを好機と捉え、セキュリティや情報システムの庁内体制も刷新した。今年3月には、セキュリティポリシーの全面改定を実施した。これまでは県から送られてきた標準文書に、自治体名を入れただけだった。しかし3年が経過し、環境が変わった上に実態にそぐわなくなっている部分もあった。作成作業の際は、ISMS認証を取得しているA&Iシステムに指導を受けた。「ポリシーの内容は、県内でもレベルが高い方だと自負している」と、村山情報管理担当は胸を張る。

 情報管理も強化した。「情報の分類と管理に関する手順書」「ソフトウェア/ハードウェアの購入及び導入手順書」「セキュリティインシデント(緊急事態)報告・対応手順書」など23項目の手順書を作り、対応する9種類の様式を新たに整備したのである(写真1)。これまでは口頭でのやり取りが多く、仮に情報漏えい事故が起こっても、原因を追跡するのが難しい状態だったのを改めるためだ。

■写真1 会津坂下町ではアウトソーシングを機にシステムやセキュリティに関する様式を整備
会津坂下町ではアウトソーシングを機にシステムやセキュリティに関する様式を整備

 情報システムの管理・運用体制も整備した。システムの調達方針「情報システムの企画および調達に関する基準」を策定し、個別システムの管理を強化した。すべてのIT調達について、企画段階から情報防災班が関わる仕組みとすることで、当初の参考見積りから10%以上のコスト圧縮を目指す。適正な査定を行うことで全庁で12人の「ITマイスター」を各部署に置いて、各原課とのコミュニケーションの円滑化も図っている。

 そのほか、「ITマイスター」には、主に若手のIT関連の知識やスキルのある職員を任命。それぞれの所属先でパソコンの設定変更などの作業を実施するほか、現場の意見を集約する役割も果たす。「業務アプリケーションについては、情報部門より各職場のITマイスターの方が詳しい場合もある。マイスターとは毎月議論の場を設けて、システムの機能や使い勝手などに関する意見を集約している」(村山情報管理担当)という。