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 米Adobe Systemsが,リッチ・クライアントの開発環境「Adobe Flex 2.0」を2006年6月に出荷開始(日本語版は2006年8月発表)してから数カ月が過ぎた。Flex 2.0は開発者に浸透しているのか,米Adobe SystemsのFlexエバンジェリストであるTed Patrick氏に話を聞いた。

米Adobe Systems,Flexエバンジェリスト Ted Patrick

■Flex 2.0の提供以降,開発者の数やユーザー事例は増えているのか。

 旧版のFlex 1.5では,コーポーレート・ライセンスを所有している企業が約500社あった。そのほとんどはイントラネットで利用されており,一般公開されているものは少ない。Flex 2.0以降は,Flexを使ったプロジェクトや開発者の数がぐっと増えている。中小の企業からエンタプライズまで幅広く採用されている。エンタプライズ・レベルで1000社ぐらいだが,ミドル以下の規模を合わせるともっと多いだろう。そのためFlex開発者の需要が増えている。

■ユーザー/開発者はFlexの何を評価しているのか。

 一番は,マルチプラットフォームにある。開発したアプリケーションが,サーバー,ブラウザ,OSの違いにかかわらず,広く対応できる点が大きい。また,Flexはコンポーネント・ベースでアプリケーションを作れるため,比較的短時間で開発できる点も喜ばれている。コンポーネントは自前で作ることも可能なので拡張性も高い。

■Flexでアプリケーションを作るためには,どの程度のスキルが必要か。

 HTMLを知っていて,JavaScriptの知識が多少あれば,Flexでアプリケーションを作ることは可能だろう。Javaや .NETなどの構造化プログラミング言語に精通した開発者であれば,ずっと早い段階から生産性は向上する。一般にWebページを作る場合,CSSを使ってレイアウトし,JavaScriptで動きをつける。Flexアプリケーションの開発も基本的にはそれと同じ。ただし,Flexでは格段に表現力の高いアプリケーションを作れる。

■PhotoshopやIllustratorなどを使っているデザイナでも作れるのか。

 グラフィックスのデザイナーが,アプリケーションを作るということはないだろう。一方で,FlashのユーザーがFlexに移行するのは難しくない。GUIの開発ツールであるFlex Builderは,FlashのデザイナとWebプログラマの境目をつなぐのりとしての役割を果たす。

 素材のデザイナーは,Flexを使ったアプリケーション開発のメンバーとして参加すれば十分に力を発揮できる。アドビは,Creative Suiteでグラフィックスの素材を作り,FireworksやDreamweaverを使ってWebページを作るといったワークフローでは,すでに一定の強みを持っている。これにFlexのプログラマが加わる。素材のデザイナ,Flashのデザイナー,プログラマが連携して作業ができるのが,Adobeが考える新しいワークフローだ。

■今後,Adobeの製品は統合されていくのか。

 ツールが融合していくことが望ましいとは思わない。Photoshop,Illustratorなどのデザイナは,今後もそれらを使ってベストなものを作っていくのが良い。しかし,ツール同士の連携はより密接になっていくだろう。例えば,Photoshopのファイル,Flashのファイルなどのやり取りがツール間で自由にできるようになる。デザイナーやプログラマの役割分担,連携,データのやり取りといったWebアプリケーション開発のワークフローを,Flexを核として統合していく。

■開発中のApolloはどんな製品か。

 Apolloは,デスクトップで動作する新しいアプリケーション実行環境だ。2007年中のリリースを予定している。Flash Playerのランタイムの機能に,HTMLのレンダラ,スクリプト・エンジン,Adobe Readerなどの機能を統合したものになる。デスクトップ用アプリケーションとWebアプリケーションが全く同じように動作するのが特徴だ。OSのファイル・システムにアクセスできるし,インターネットのWebサービスとも連携できる。

 Windows VistaのWPF(Windows Presentation Foundation)に似ているが,Apolloは最初からマルチプラットフォームで動作する点が違う。現時点ではWindowsとMac OS Xに対応し,その後Linuxにも対応する。Apolloがインストールされていれば,一つのバイナリ・ファイルを異なる環境で実行できる。現在のFlash Playerと同じように,最初にApolloアプリケーションを実行するときに,ダイアログが出てインストールを許可すると自動的にその環境に組み込まれるので,ユーザーはApolloをあまり意識することはない。

 開発者にとって,Flexを使うことで,Webとデスクトップのアプリケーションを同じように開発可能になる。現時点では,Flex BuilderのアプリケーションをパッケージングすることでApollo用に変換しているが,将来的にはFlash,Flex,Dreamweaverのそれぞれの開発者がApolloのアプリケーションを作れるようになるだろう。