PR

 地方都市に本社を構える食品メーカーの東西日本食品は、業務効率化を図るために基幹システムの導入を検討していた。そこで、担当責任者となった経営企画部の黒沢部長は、システム開発の候補として挙がった大手システムインテグレータに説明に来てもらうことにした。

 約束の日、現れたのは40代の営業の大場さん。システムの概要や価格体系、導入までのおおまかなスケジュールなどひと通り説明を受けた後、しばらく雑談が続いた。

 IT関連企業にあまり詳しくない黒沢部長は、「御社は大きな会社だから多角的な事業展開をしているんでしょうね」と話を振ってみた。

 すると大場さんは、「わが社は同業者を寄せ付けず・・・」「親会社はすごい会社ですから・・・」「お客様から尊敬されていまして・・・」「わが社の社員はエリート大学出身者ばかりで・・・」とうれしそうに話し始めた。

 「それなら安心して御社にお願いできますね」と黒沢部長は答えた。

 大場さんはその言葉に勢いを得たのか、自身の身の上話まで始めた。

 「私は、これまでは親会社という大企業で活躍してきたので・・・」
 「海外生活が長く、日本のビジネスとは違い大きなスケールで勝負していたので・・・」
 「社内では私の部下がたくさんいまして・・・」

 黒沢部長はうなずいて聞きながらも、次第に不快な気分になっていった。

 このような例は、大手企業の親会社からIT子会社に出向、または転籍した人に多く見受けられます。

 営業が自社の紹介をする際に、会社の規模や成り立ち、どの分野での実績が多いのかなど、必要以上に格好よく話をしてしまう人がいます。財務基盤がしっかりしていて、導入実績も豊富なベンダーだということをアピールしたい気持ちは、わからないではありません。しかし、あまりに度が過ぎると営業員の”自慢話”に聞こえてしまうこともあります。

 「安心して御社にお願いできますね」と、顧客に言われているうちは、まだオーケーです。「すごいですね。だったら、当社以外でもっと大きなビジネスをされた方がいいですよ」となったら、要注意でしょう。顧客のココロが冷え込んできている兆しが見えるからです。

 ヒトの自慢話を喜んで聞く人なんているのでしょうか。そんなエラそうな人とは、できれば付き合いたくないというのがホンネだと思います。

 たとえば、世の中が認める有名人であれば「お近づきになりたい」と思われても不思議はありません。しかし、それが一般人の場合、間違いなくNGです。

 自慢を吹聴するほどのエラい人ならば、自分で会社を興して大成功させることだって不可能ではないはずです。でも、実際に成功した人は自慢話などしません。なぜって、自ら言わずとも既に周囲が認めているはずですから。

 逆にこんな例もあります。

 やはり、同様に客先担当者は営業担当者に向かって聞きました。
 「御社は立派な会社だから一流企業のお客さんが多いのでしょう?」

 すると営業は謙遜して言いました。
 「いえいえ、うちは大した会社ではないですから、一流企業とそうそうお付き合いはできません。身の丈に合った仕事しかしません」

 客先担当者は、「うちはどーせ一流企業ではありませんから」とムッとしてしまいました。

 自慢しすぎてもNG。謙遜しすぎてもNG。では、どうしたらよいのでしょうか? サービス導入の実績、顧客満足の声、顧客の導入効果なら、マイナス材料にはならないでしょう。

(川口 克己=日揮情報システム

著者プロフィール
1984年法政大学卒業後、日揮情報システムに入社。管理部門、営業部門、マーケティング部門を経験。現在、日揮情報システムと日揮情報ソフトウェアに在籍。日揮情報システムでは、営業本部J-SYSグループマーケティング統括部長。著書に『IT営業現場・面と向かっては言えない22のホンネ』(IDGジャパン)『面と向かっては言えない22のホンネ―知ってビックリ相手のキモチ』 (サンブックス刊)がある。