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  図1 キーパーソンが考える今後の議論の方向性

 ユニバーサル・サービス制度に対しては,ユーザーはもちろん,通信事業者からも不満が続出している。しかし,現状では行政訴訟に発展する気配はなく,2007年1月からこのまま運用が始まりそうだ。ただ,現行の制度は3年後に見直す予定となっており,総務省は早ければ12月にも制度の見直しに向けた研究会をスタートさせる。今後の制度のあり方については,さまざまな意見がある(図1)。

「ユニバーサル・アクセス」の概念が浮上

 前回の制度見直しの際にユニバーサルサービス委員会の構成員を務めた慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所の菅谷実教授は,「今後はトリプルプレイで音声だけでなく,映像やインターネット接続がまとめて1本のアクセス回線で提供されるようになる。電話サービスだけを対象とすること自体が難しくなり,ユニバーサル・アクセスとしてまとめてとらえた方がすっきりする」という考えを示す。ただ,やみくもに対象を広げてもユーザーの負担が増えるだけである。「電話だけの利用者は負担額が少ないが,映像やインターネット接続の利用者は負担額を多くするなどして調整する方法もある」(同)。

 ユニバーサル・サービス制度に詳しいマルチメディア振興センターの田川義博・専務理事は,経済的発展性の観点から,対象をブロードバンド・アクセスに拡大すべきと主張する。「あらゆる産業のやりとりがブロードバンドを介して行われるようになってきており,今後はネットをいかに使いこなせるかが勝負になる。ブロードバンド・アクセスに対象を広げれば国民の知的レベルが底上げされ,地域の経済発展ひいては国際競争力の強化につながる。国の重要政策として真剣に検討していく必要がある」(田川専務理事)と見ている。

IP電話や携帯電話で代用する方法も

 同じくユニバーサルサービス委員会の構成員だった神奈川大学経営学部の関口博正助教授は,「現状のメタル回線の代わりに光ファイバやケーブルテレビ,無線といった他の手段で代用する方法もある。IP電話やケーブルテレビ電話,携帯電話の敷設コストや運用コストを検証し,メタル回線よりも安く提供できるのであれば取り入れる価値は十分にある」と指摘する。実際,「IP化で電話サービスを低コストで提供できるようになったにもかかわらず,コストが高い固定電話を維持するのはあまりにも非効率」(ある事業者)という意見は多い。

 関口助教授はさらに,基本料や公衆電話の通話料の見直しを挙げる。基本料は現在,級局ごとに料金が異なり,高コスト地域ほど安くなっている。「社会情勢を見ながらになるが,級局の格差をなくして平準化すべきという話は当然出てくる。現行の算定方式のままでは基本料収入が増えても補てん額は減らないので,算定方式の見直しとセットになる」(関口助教授)。公衆電話に関しても現在の昼夜間1分10円といった料金体系を見直せば赤字の拡大を防げる。

 このように「いくつもの考え方があり,こうあるべきというのはない。結局,どこに落ち着くかという問題になる」(慶応義塾大学の菅谷教授)。その一方,「ユニバーサル・サービス制度はいろいろな要因が関係しているので,ある部分を変更すると玉突きで他の部分に影響してくる。制度の見直しが難航するのは必至だ」(神奈川大学の関口助教授)。今後の議論が注目される。