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熊倉健介氏

 グーグルに勤務する熊倉健介氏は、国内のインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)をはじめ、ポータルサイトやニュースサイトなどを運営する企業に同社の検索エンジン技術によるサービスの提供をサポートする業務を担当する。パートナー企業の担当者とグーグルの技術者を結ぶ橋渡し役で、技術とビジネスの知識が不可欠になる。


ある日のスケジュール

学生時代にネット事業に興味
最初の就職先は大手ISP

 現在のような理系と文系の双方の知識を必要とする業務に大学生のころから就きたいと考えていた。大学に入学した1994年はインターネットの勃興期。インターネットに興味を持っていた熊倉氏は理工学部でコンピュータプログラムに関する知識を習得した後、ビジネスに関する知識を身に付けようと思い、大学院政策・メディア研究科に進んだ。

 「大学生時代にWebの制作やインターネットの使い方を啓蒙する教材の作成といったアルバイトをしていました。このときインターネットのサービスを企画する担当者と制作する担当者が分かれているのはおかしいと感じたので、大学院ではビジネスについて勉強し、両方が分かるようになりたいと考えました」(熊倉氏)。

 大学院を卒業した2000年、当然のように大手ISPに就職した。大学時代からやっていたインターネットの仕事を社会人になっても続けたいと考えていたためだ。入社後、配属されたのはサービスの企画やマーケティングなどを担当する部署。学生時代にアルバイトでやっていた仕事に近く、ほぼ希望通りの職種だった。

 熊倉氏にとって転機となったのは、インターネットの先進国である米国に2003年から駐在したことだ。次にヒットしそうなサービスを探すことが主な役目で、米国で新しいインターネットの動きを調査するには、様々なIT企業の担当者と意見交換する必要がある。検索エンジンの分野で注目を浴び、破竹の勢いで急成長していたグーグルは今後のインターネットの動向を知るうえで欠かすことができない存在。グーグルの社員とも知り合うことができ、交流を重ねた。

熊倉健介氏
夢があれば、その実現に向けて自分が納得できるまで努力しておくべきです。チャンスが来たときにチャレンジできます

 「グーグルはとりわけ優秀な人たちが働いている会社、という印象がありました。知り合ってみると、実際にそうでした。『こんな会社で働ける彼らがうらやましいなあ』というあこがれはありましたが、私自身がグーグルで働くことなど夢にも考えていませんでした」(熊倉氏)。

 あこがれたのは、社内の雰囲気がよく、従業員が前向きに働いていたからだ。しかし、自分を売り込むことはしなかった。そもそも実力面でグーグルの社員には歯が立たないと思っていたし、勤務していたISPでの仕事が充実していた。米国駐在中にブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の流行を目の当たりにした熊倉氏はブログ事業の立ち上げなどに大きく貢献した。勤務先のISPに対して不満は全くなかった。

 そんな熊倉氏の運命を大きく変えたのは1本の電話だった。ある日、外出先から自宅に戻ってみると、留守番電話に「当社の面接に来ませんか」というグーグルの人事担当者の誘いのメッセージが残っていた。熊倉氏は驚いた。電話の相手はあこがれのグーグルである。チャレンジしたいと思うと同時に、自分が転職できるわけがないという不安な気持ちも高まってきた。

 最大の不安は英語力だった。熊倉氏は英語があまり得意ではない。米国での仕事に支障を来すと考えていた熊倉氏は、普段から英会話を習っていた。グーグルの面接の日まで2週間ほど時間の余裕があったので、その英会話の先生に模擬面接をしてもらい、猛特訓を受けた。その甲斐あってか、グーグルに転職することができた。

 それでも、熊倉氏の不安は解消されなかった。入社して3カ月間は試用期間である。「グーグルの社員と同じようにやっていけないとクビになる」という不安は試用期間中にずっと抱き続けていた。入社後の仕事は、以前勤務していたISPでやっていたサービスの企画やマーケティングの仕事とは全く違う。英語だけでなく、グーグルで働くのに必要な技術の勉強も始めた。

検索エンジンに関心を持ち
暇を見つけて趣味で作成する

 新しい技術を習得する際に最も役に立ったのは、趣味として取り組んでいたプログラムの作成である。熊倉氏は日曜大工ならぬ日曜プログラマ。グーグルへの入社とは関係なく、米国駐在中にブログ専用の検索エンジンに興味を持ち、暇を見つけては趣味で作成していた。「趣味でやっていたので、すぐに役立つという水準に達していませんでしたが、このときの経験が役立ちました」と熊倉氏は明かす。グーグルの技術職の社員の大半はプログラムを作成でき、趣味にしている社員も少なくない。熊倉氏が日曜プログラマであったことも、現在グーグルで活躍している下地になっているのだろう。

 自ら行動を起こして転職したわけではないが、偶然訪れたチャンスをものにすることができた背景には、熊倉氏が日ごろからコツコツと勉強していたことがある。「転職するかどうかに関係なく、あこがれているものがあれば、その実現に向けて自分が納得できるまで努力しておくべきだと思います。そうしておけば、いざチャンスが来たときに思い切ってチャレンジできます。たとえそれが趣味のレベルであっても、なにがしら得るものはあります」(熊倉氏)。単なるあこがれで終わるか、それとも現実のものにできるかの差はこのあたりにあるのかもしれない。

熊倉健介氏 Kumakura Kensuke
グーグル
1975年生まれ。慶応義塾大学卒業後、同大学院を2000年3月に卒業。同年4月インターネット・サービス・プロバイダに入社。2004年4月グーグルに転職。現在、パートナーサービス&オペレーションテクニカルアカウントマネージャー