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4月1日の組織再編で,固定通信事業者や移動体通信事業者向けの機器の開発・販売,さらに通信事業者向けソフトウエアの提供など,“一気通貫”でキャリア・ビジネスに対応する体制を整えたのがNECのキャリアネットワークBUだ。NGNの「トランスポート」を担うBUの責任者である広崎膨太郎執行役員専務に,その戦略を聞いた。

NGNで何が変わるのか。

 NGNは20年,25年に一度の大変革だ。従来の通信事業者のネットワークは,あくまでも電話が中心。インターネットも,電話のためのネットワークを使って作られたものだ。しかしNGNでは,データやコンピュータ系アプリケーションを中心としたネットワークに変わる。

 通信と放送の垣根も融解する。NGNによって,本当に通信と放送が融合する土台が現実のものになってきた。また,コンピュータ・ネットワークのアーキテクチャも変わると見ている。NGNでは,1ビット伝送するのにかかるコストが激減する。クライアント/サーバー型のような分散型のシステム環境から,集中化する方向に動き出すだろう。

 つまり,単にインフラが大容量になるだけではなく,全く新しい社会やビジネス形態,それをサポートする環境が実現すると認識すべきだ。

キャリアネットワークBUはNGNのどういった部分を手掛けていくのか。

 NGNを大きく二つの領域で考えている。一つはNGNの「トランスポート」。光伝送装置やルーターなどインフラを担う通信機器の市場だ。この市場に向けて固定と携帯両方の製品を投入する。もう一つがNGNの「サービス基盤」。名前の通り,サービスを乗せるための基盤となる要素だ。IMS(IP Multimedia Subsystems)を構成するサーバー,ソフトウエアやアプリケーションを動かすためのミドルウエアなどがこれに当たる。

 トランスポートの部分はキャリアネットワークBUが手掛けていく。サービス基盤は,官公・公共・金融・通信ソリューションBUなども関係するが,我々もかなりの部分を手掛けていく。NECのほかのビジネス・ユニットと連携することも考えている。例えば放送関連のソリューションを手がけたり,コンテンツ・プロバイダなどを対象に新たなサービス基盤を提供していくことなどだ。

通信事業者向けNGNソリューションの市場規模はどの程度と見ているか。

 正直なところ,我々もすべては把握できていない。従来の統計データによると,全世界の通信事業者の設備投資額の合計は12~15兆円。このうちの何割がいつまでにNGN向けになるのだろうか,という見方しかできない。

 個人的には,3年後の2009年にトータル規模の2割くらいはNGN向けになると想定している。仮に母数が15兆円ならおよそ3兆円だ。

 市場の中でも,最も伸びるのはサービス基盤の部分だと思う。我々が提供するトランスポートの部分にNECオリジナルな管理機能などを入れることで,サービス基盤との連携を取りやすくする。こうすることで,トランスポートとサービス基盤をまとめて獲得していきたい。

NGNはコンピュータ技術が通信ネットワークに入る。IT系企業などとも競合するのか。

 NGNに関する製品,ソリューションをトータルで提供できるサプライヤは非常に限られる。そのためトータルで提供できるプレイヤーと,特定の分野に特化した専業プレイヤーが住み分けるようになるだろう。

 例えば仏アルカテルがサービスまで含めた全分野を提供できるかといえば,そうではない。交換機などネットワークに特化したサプライヤだからだ。米IBMや米ヒューレット・パッカード,アクセンチュアといったITベンダーと提携しない限り,トータルなソリューションを用意できないだろう。逆にIBMやヒューレット・パッカードは,ネットワークのサプライヤと組まなければならない。

 これに対し,NECは30年近くC&C(Computer & Communication)の標語の下で,コンピュータと通信の両方の技術を培ってきた。NEC単独でトータルなシステムを提供できる素地を持っている。無論,全てを我々だけで提供できるとは思っていない。パートナーシップは必要だと思っている。だが,トータルに考えられること自体がNGNの時代には強みになると思っている。

 しかも,過去30~40年で海外も含めて400社以上の通信事業者とビジネスをしている。このつながりも,NGNソリューションにおける“資産”となる。

コア・ルーターなど,NECが自前では持っていない製品もあると思うが。

 通信事業者の今後の設備投資は,単なるネットワーク機器からサーバーなどを包含した「システム」へシフトしている。これは,重視されるポイントがハードウエアからソフトウエアへと移り始めていることでもある。

 確かにコア・ルーターやエッジ・ルーターは,NGNでは重要な製品。しかし通信事業者が求めるのは,コモディティに近い“プレーン”なルーターではない。NGNに必要なサービス機能,例えばセキュリティやQoS(quality of service)などの「トッピング」のノウハウが重要になる。

 NECの競争力や価値の源泉は,こうした一般的なルーターにNGNに必要な機能をトッピングするノウハウや,コア・ネットワーク上で動くサービス基盤の構築技術力,さらにこれまでの経験で得た実績だ。こうした技術やノウハウを,米ジュニパーネットワークスやアラクサラネットワークスのハードウエアと組み合わせて顧客に提案している。今のNGN関連の商談では,自社製品を持たないことが不利になることはない。

通信事業者に対しては,他社製品を含めてNECがインテグレートするということか。

 そうだ。ベンチャー企業で,非常に優れた製品を持っているところもある。しかしベンチャー企業には,突然他社に買収されてしまうリスクが常にある。通信事業者は,長期にわたりネットワークを維持・管理するのが責務。製品の供給やサポートが突然停止しては,非常に困ったことになってしまう。

 そこで,我々がベンチャー企業の製品をインテグレートすることで,そういったリスクをヘッジする。実際の商談でも,「インテグレーション能力を持った信用のできるサプライヤの配下に,ベンチャー企業を付けてほしい」という話はよく出てくる。