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Q: オープンソースにすると何が良いのですか

A: ソフトウエアの成り立ちを広く説明するのが簡単なことです

 この問いはよく,開発者に近い人に向けられる問いですが,今回は「ソフトウエアは誰のものか」という方向から考えてみます。これは一時期,新聞をにぎわせた「会社は誰のものか」という問いによく似ています。

 ソフトウエアは著作物ですから,直接的には作者のものです。しかし,使わなければ価値はありません。ソフトウエアは使って初めて価値が生まれるものです。つまりユーザーが存在しないと価値はないに等しいのです。もちろんユーザーと作者が同じこともありますが,それでも「使ってなんぼ」であることに変わりはありませんから,ユーザーの存在は不可欠であり,ソフトウエアはユーザーのものでもあるといえます。このように,ソフトウエアにはさまざまな利害関係があります。商用ソフトウエアにある「ソフトウエア開発契約」はその権利関係の明確化のためにあります。

 ところがコンピュータがいろいろなことに使われ,社会の一翼を担うようになった現在,ソフトウエアの利害関係者(ステーク・ホルダー)は「作者とユーザー」だけではなくなってきました。ソフトウエアのユーザーが何らかのサービスを提供している場合,その「ユーザーのユーザー」も利害関係者として無視できなくなります。

 例えば,「銀行のシステム」は開発者から見れば銀行がユーザーですが,「銀行のシステム」が止まった時には,「銀行の顧客」に被害が出ます。つまり,ソフトウエアに直接タッチしている「作者とユーザー」の利害関係だけでは済まないということです。このように考えると,公共に(つまりオープンに)サービスを提供しているシステムは,広く一般に利害関係者がいるということになります。ですから,そのソフトウエアに何かあれば,そのサービスの提供者は広くそのシステムの説明責任を負うことになります。

 広く一般にシステムを説明するとき,「オープンソースである」ということは非常に都合が良くなります。説明する側は「○○を使っています」「より詳しい情報やソフト本体,ソース・コードは,××から取得できます」と言えますし,説明される側はそれを見ればソフトウエアの成り立ちが分かります。「ソースがあるからすべてがオープン」というわけではありません。しかし,少なくともソフトウエアの成り立ちに関しての説明は簡単になります。

 企業の場合は競争原則がありますから,ノウハウの詰まったソフトウエアはオープンにできないこともあります。しかし,政府や役所,公益法人といった公共団体ではオープンにしない必要性はあまりないはずです。また公共性の高い資金(税金とか公益法人の予算)でソフトウエアを開発する場合,できればその成果を広く環元することが期待されることもあります。実際,NASTRAN(構造解析ソフトウエア)やMACSYMA(数式処理システム)といったソフトの原形はそうして公開されたものです。

 このように見てみると,公共性の高いソフトウエアは,広く説明しやすいオープンソースにしておく方が,「受益者」が増えることになります。公共性が高いと書くと「インフラを担う大規模システム」の話に見えますが,「ネットワークにつながっているパソコン」は他の機器と影響し合ってますから,公共性を意識しないといけないことをお忘れなく。

【修正履歴】本文中に「素状」とあったのを,「成り立ち」に修正しました。(2007年3月8日)