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 IT業界にある数多くの職種の中で、とりわけプロジェクトマネジャー(PM)はスキルの前に「人間力」が問われる職種だ。プロジェクトを主体的に取り組み、どんな苦労でもいとわずやり遂げたいという意思が必要になる。PMの資質として真っ先に挙げたいのはこれだ。

 次に大事な資質は、困難を乗り越える熱意だろう。プロジェクトでは予算や期限を顧客に約束し、それを守るという高いリスクが伴う。不確実性の中でリスクを背負ってでもやり遂げるという熱意がなければ成功しない。さらに、組織や業務、人に関心があるかどうかも大切になる。PMが組織や業務、人に関心を払わなかったため失敗したプロジェクトは少なくないからだ。また、当事者意識があるかどうかも重要な資質だ。問題を把握したら、それを自分自身の問題として受け止められなければプロジェクトは成功しない。

 PMの力量は資質に左右される面が大きいが、日々の仕事やプロジェクトで経験を積むことによって、こうした資質は身に付けられる。これまでの判断を振り返ると、良い判断もあれば悪い判断もあったはずだ。その悪い判断を反省し、「次はこう改善しよう」という意識があれば、PMの資質は徐々に備わってくる。

基礎知識の習得は第一歩

 人間力が大きく問われるとはいえ、PMに必要な基礎知識の習得はやはり最低限必要だ。PMI(プロジェクトマネジメント協会)が認定するPMP(Project Management Professional)、情報処理推進機構(IPA)の情報処理技術者試験プロジェクトマネージャはぜひ取得しておこう。

 資格取得を通して得られた知識は登山家にとってロープワークのようなものだ。ロープワークを知っていても滑落してしまうことがあるように、資格を取得しただけでは半人前だ。というのも、PMの仕事のうち原理原則に従って対応できるものは全体の15%くらいしかないからだ。プロジェクトは応用問題の塊で、わずかな確信しか得られなくても決断しなければならない場面がある。

 その際、決め手になるのは、バランス感覚とリーダーシップだ。妥協すると改善は進まないが、理想を追い求め過ぎると失敗する。よい落としどころを見極めるためには、バランス感覚が不可欠だ。また、不確実なものに対して尻込みしがちだが、そんなときにリーダーシップがないと部下を引っ張っていけない。

 日々の仕事に正面からぶつかり、たとえ困難な事態に直面しても逃げず、誠実に生きることで人間力は磨かれる。裏返せば、困難に直面したときに、熱意を持って立ち向かえる人であれば、優秀なPMとして活躍する可能性はある。人間力の向上に役立つ書籍をあえて挙げれば、江戸時代に率先して倹約に励み、藩財政を立て直した上杉鷹山を描いた歴史書などだろう。先人の生き方や熱意を知ることは決して無駄にならない。

林 衛 (はやし・まもる)氏
IT戦略とプロジェクトマネジメントのコンサルティングを手がけるアイ・ティ・イノベーションの創設者で社長。プロジェクトマネジャーのための情報マガジン「ザ・プロジェクトマネジャーズ」の主執筆者