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 能力を因数分解すると「知識」「資質」「技能」「協働」の4つに分類できると思う。知識は書籍などを通して身に付けられるもので、資質は持って生まれた素質で決まるもの。技能は学んだあとで実践を通して身につくもので、協働は仲間と協調して働くことで取得していくものだ。商談の能力を高めるのなら、この4つを磨くべきだ。では、知識、資質、技能、協働について見ていこう。

 まずは知識として商談相手の決断の仕方を知っておこう。を見てほしい。横軸を意思決定者の性格が独断的であるか協調的であるかという視点で、縦軸を意思決定の過程がオープンであるかクローズドであるかという視点で見ると、商談相手の決断の仕方は4つに分かれる。

 Aは独断的な性格だが、腹心の部下が調整役になる。これには調整役と連絡を密にして、良好な関係を築くのが効果的だ。信頼関係を築けば、よほどのことがない限りリピートしてもらえる。

 Bは独断的な性格で、意思決定のプロセスも把握しにくい。役に立つ情報を数多く紹介し、結論は相手に委ねるという姿勢が重要だ。テーマごとに発注先を決めるため、常にチャレンジする気持ちを忘れるべきではない。

 Cは協調的な性格で、意思決定のプロセスはオープンなタイプ。一見、対応しやすい相手だが、大規模システムの際には最終決定できず、タイプAやタイプBに意見を求めがちだ。実績を重んじ、以前担当した経験者をプロジェクトリーダーにするという工夫が必要だ。

 Dは協調的な性格だが、意思決定のプロセスはクローズドなタイプ。コンペでは詳細な評価項目を定めて合計点数で決める傾向があり、提案段階からシステム設計に取り組むような気持ちで要求内容を聞き、設計資料を提供するとよい。

得意な点を磨き、それで勝負

 次に資質。重要なのは対話力と見極める力だ。持って生まれたものと見られがちだが、不得意な点は先輩や同僚を手本にして改善、得意な点に磨きをかけ、それで勝負するという気構えが必要だ。

 対話力に関しては「きき役」になるという気持ちが大切だ。システムインテグレータにとって、何事にも興味を持って顧客の話を「きく」は基本。また、見極める力に関しては、コンペでの競合相手の提案内容、顧客の評価ポイント、技術面での実現性、スケジュールの実現性、商談相手の決断の仕方などを見極めるのが重要だ。1人で決めず、同僚と意見を出し合うのがよい。

 技能を通して高めておくのは提案力だ。これまでコンペに勝った提案について、どこが良かったのかを分析し、次の提案に生かすほか、負けた提案についても原因を分析しておくべきだ。顧客を訪問し窓口になった担当者に教えを請うと、支障がない範囲でコンペの結果を教えてくれることがある。また、内容が良くても、提案書の表現が下手で失敗することもあるので、同僚の提案書の中で配色や図表など表現力が高いものがあれば取り入れてみよう。

 協働としてはコミュニケーション力を磨くべきだ。今や商談で最も必要なものになりつつある。一見、対話力と同じように思えるが、コミュニケーションを図るには、会話だけではなく、ドキュメントの重要性が高くなっている。計算書・テスト計算書、操作マニュアル、ミーティング資料、議事録などシステムに関係するドキュメントを改善し、設計やテスト、運用などの品質を向上させる必要がある。

 伝えるべきことを洩れなくドキュメントに正しく書き切ることは、ただ漫然と年月を重ねるだけでは身に付かない。表現を中心としたスキルアップや記載書式の工夫が必要だ。この点にいち早く気付き、研鑽できる人材が商談でも成功する。

中村一世(なかむら・いっせい)氏
東洋ビジネスシステムサービス取締役 テクニカルダイレクター。武田薬品工業を経て、2001年10月に東洋ビジネスエンジニアリングに転職。子会社の東洋ビジネスシステムサービスに出向し、現職