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 ルーター開発の最前線の第1回目のテーマは「ルーターの省エネ化」です。3日間にわたって,通信事業者やインターネット接続事業者(ISP)のネットワークの中核を構成するいわゆる「キャリアクラス・ルーター」の省エネ対策について紹介していきたいと思います。今日は,まず最初にルーターの省エネ化が求められる背景について見ていくことにしましょう。

2010年,ルーターの消費電力が国内の0.4%を占める

 ICT(information and communication technology)技術の進展に伴うインターネット・トラヒックの指数関数的な増加を背景にルーターやLANスイッチの消費電力が急増しています。例えば,科学技術政策研究所が2006年6月に公開した「情報通信のエネルギー問題 ―求められる通信インフラの省電力化―」というレポートでは,通信インフラで利用される機器を対象に,2010年までの電力消費量の推移を予測しています。半導体部品による電力削減が従来通りの効果をもたらすと見込んだとしても,2001年時点で7.5億kWh/年だった国内のルーターの電力消費が,2010年に40億kWh/年に達すると予測しています(図1)。これは,国内の消費電力の0.4%に相当する量です。

図1●国内のルーターの総消費電力の推移
図1●国内のルーターの総消費電力の推移
従来トレンドでLSIの低消費電力化が進むと仮定した場合の推移予測。科学技術政策研究所が2006年6月に公開した資料を基に作成。

 その一方で,2005年2月に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減を目標とした京都議定書が正式に発効されました。これを受けて,ルーターやLANスイッチなどの情報機器に対する電力削減への要請が世界的に高まっており,省電力施策が各方面において検討され,実施されています。

 例えば,我が国では「トップランナー基準」による電子計算機などの電力規制が始まっています。トップランナー基準とは,省エネや燃費向上の際に設けられる基準で,現状の機器のうちエネルギー消費効率が最も良い機器(トップランナー)を基準として目標年度におけるエネルギー消費効率を設定する方法です。現在,ルーターやLANスイッチは「トップランナー基準」の規制対象外ですが,今後規制が世界に先駆けて始まるものと予想されます。

NTTは,2010年の商用電力購入量を1990年の水準に抑える目標

 また,通信事業者やインターネット接続事業者(ISP)も省エネを打ち出すところが出てきています。例えばNTT西日本では,2010年にNTTグループ全体で年間約100億kWhに達すると予想される商用電力購入量を,ルーターなどのブロードバンド関連装置の直流給電化や電力自給率の向上により,1990年の水準である年間34億kWhに抑えることを目標としています(参考ページ)。

 ルーターやLANスイッチの総消費電力が急増し,通信事業者やISPが電子機器の電力削減に取り組む姿勢を見ると,「ルーターやLANスイッチの消費電力を削減せよ」という社会的な要請がますます高まることが予想されます。

 そうなると,ルーター開発エンジニアとしては,これらの要請に応えて省電力化を推し進めることが必要となります。それでは次に,通信事業者やISPで使われる「キャリアクラス・ルーター」を省電力化するための取り組みについて紹介しましょう。

林 剛久(はやし たけひさ)
アラクサラネットワークスCTO

八木 司(やぎ つかさ)
アラクサラネットワークス第三製品開発部

矢崎 武己(やざき たけき)
アラクサラネットワークス技術開発部

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