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岩城:対談の第2回パートナーは松下電器の次田さんにお願いしました。

 次田さん、こんにちは。さっそくですが、企業が自社サイトを持ち始めてから、早いところではそろそろ10年前後になっています。松下電器のサイトもおそらくそのくらい経っていますね。

 その間に変化の早いインターネットの分野では、技術や接続環境なども大きく変わりましたが、企業が伝えるべきメッセージというのはあまり変わっていないと思います。いかがですか?

次田
次田氏

次田:ええ、企業側としては「言いたいこと」は、そう変わらないですね。ただ、メディア環境の変化によって、「言い方」も変えていかないと伝わらなくなっていくのも事実です。

 企業のコミュニケーション担当者の多くが実感されているのではないかと思いますが、これだけネットが普及し、ブログやユーザーレビューなど、いわゆるCGMが製品や企業の評価を大きく左右するようになると、マスメディアでの「言い方」、企業サイトでの「言い方」もそれぞれ変化させていく必要があると考えています。特に企業サイトは、既存のメディアではできなかったコミュニケーションを開拓していく必要があると思いますね。

岩城:私が企業でサイトの運営をしていたときも、企業サイトとして他のメディアと差別化してネットユーザーに伝えるべき事は何か、企業自身についてだろうか、商品の優位性についてだろうかと悩んだ時期があります。

 もちろんそれらも重要ですが、他のメディアでも伝えられるので、もっとネットの特性に合うメッセージがあるのではないかと考えました。次田さんはどのようにお考えですか?

次田:私が企業サイトを手がけるようになったときにまず意識したのは、ネットの持つ「親密さ」ですね。メールもサイトも、基本は「個人メディア」だと思うのです。「マスメディア」とは「個人」でなくテレビ局や新聞社、いわば「社会」ですよね。

 マスメディア上の広告は、どんなに親密さを演出していても、どこかに「社会からのお達し」的な威圧感がありますよね。その「威圧感」をそのままネット上に移してこれまでのマス広告と同じように発信しても誰の心にも刺さらないと思うんです。

 企業がひとつの人格として、ひとりのユーザーに「親密」に語るのに適した企業メッセージ・・・私の場合は製品のマーケティングではなく企業ブランディングが仕事なので、「あまり知られていない、その企業独自のスゴさ」みたいなことこそ、企業サイトで発信するのにぴったりのコンテンツだと考えています。

岩城:そうですね。マス広告で発信することはある意味で整理された「たてまえ」であり、企業サイトから発信するのは、伝えたいけれど今まで良い方法が無かった、社内の思い入れに近い「本音」のようなものかもしれません。

 それは、ひと言で言うと「企業のコアバリュー」でしょうか。ここで言うコアバリューとは企業の商品やサービスの裏づけとなっている諸要素、つまり創立の理念、企業文化、事業の元になった技術などと理解していただければ良いと思います。松下電器の場合にはそれはどういうコンテンツでしょうか?

次田:私が4年前から手がけているのは「モノづくりスピリッツ発見マガジン・isM(イズム)」というWebマガジンです。いわゆる「開発物語」なんですが、「親密なメディアにふさわしいコンテンツ」にするために、けっこうこだわっています。ポイントは3つです。

 まず、「ネタの厳選」。たとえば私が社外の友人に「ねえ、知ってる。あの製品って実は、こんなことまでしてやっと生まれたんだって。・・・」と話をしたときに、友人が「すっげー!!」と喜んでくれる・・・そんなバリュー、物語があるかどうかでネタを決めます。逆にどんなに全社イチオシの商品でも、物語が語れないものはネタにしません。

 2番目に「最適の表現方法」。WebはFlash動画もOKですから、ネタに最適の表現手法を選んでいます。ルポ、漫画、動画のドキュメンタリー・・・ばらばらです。同じスタイルで統一したくなるのが人情ですが、それはWeb的ではないと思います。

 3番目は「外からの視点」。ネタごとに外部のさまざまなライターや構成作家にネタを投げかけ、おもしろがってくれる方に仕事をお願いし、その方の主観で描いてもらいます。主語が企業側だったり曖昧だったりすると、Webでは説得力が大きく落ちると思うのです。

岩城: なるほど、サイトを拝見してみましたがとても面白いですね。目からウロコの記事もありましたが、そういうものは既存媒体では発信しにくいので、これまであまり発信されてこなかったわけですね。

次田:そう、コアバリューを既存媒体で発信するのはなかなか難しい。広告は「深い情報」を語る時間やスペースがとれないものですよね(それもカネ次第ではあるのですが)。一方雑誌記事やテレビ番組などのパブリシティは、コアバリューを美味く料理してくれるのだけれど、企業の意図通りにはなかなか取り上げてくれない。その点、企業サイトは時間や場所はある意味無制限で、好きなように料理できるわけですからね。しかも、ずっとアーカイブできる。ロングテールってやつですね。

岩城:私もWebサイトは、じっくりと時間をかけて企業のメッセージを戦略的に伝えるのに良いメディアであることを実感しています。言い換えると「企業のDNAを伝える事ができるメディア」なのだと思います。

 ただ、そういうコンテンツはすぐに販売には結びつかないので、それを実現するのは結構力のいる作業です。次田さんはどのようにして社内を説得しましたか?

次田:松下電器は幸いにも、宣伝活動に対して伝統的に理解のある会社でして、社内への説得は「データ」よりも「表現」を重視してくれるんですね。表現を見てもらえば「なるほど、このコンテンツなら効果があるな」と理解してくれる。コアバリューは経営者は皆、知っているネタであり、しかも発信できていないことを自覚していることが多い。なので「表現」に落としさえすれば「この発信は重要やな。効果あるな。」となるのです。もちろん理解していただけないこともありますが。(笑い)

岩城:なるほど、経営者に宣伝活動に対する理解があるかないかが問題だと。

 ・・・そのあたりは、別の機会にジックリ話し合いたいところですね。(苦笑)

 そのような企業内にあるコアバリューというのは社員の方々でも気がつきにくい側面があると思いますが、次田さんはどのように発掘したのですか。同じように自社サイトのコンテンツのプロデュースに悩んでいる読者の皆さんには参考になると思いますので、その秘訣を教えてください。

次田:秘訣と言うほどのことも無くて・・・社内で飲みに行ったりしたときに、ちょっと技術や商品や宣伝活動の話をしていると、「実は・・・」といろんな秘話が出てくるものですよ(笑)。大切なのは、「発掘のノウハウ」よりも、それを表現に落とし込める「メディアを持っている」かどうかだと思います。メディアとして社内で評価が高まり、広く認知されれば、ちょっとツツけば「あそこに載せてくれるのなら」とネタがこぼれ出てくる・・・4年もやっていればそんな状態になりますね。

岩城:「お宝は社内にあり!」ということですね!

 企業サイトは、自社媒体としてコンテンツづくりに社内の皆さんの関与が重要ということだと思いますが、その点では広告会社にお願いして制作していただくマス広告のコンテンツとは大きく異なっている部分でもありますね。

 それでは、「Webによる企業のコアバリューの伝達」については、このあたりにしておきたいと思いますが、次田さんの次の一手は何ですか?差し支えなければ読者の皆さんに教えていただけますか。もちろん、岩城もたいへん興味があります。

次田:イズムのように企業サイトの一部分がコンテンツの魅力をパワーアップして行けば行くほど、企業サイト本体との一体感が損なわれるという問題が生まれてきます。なので、様々なサイトやページのコンテンツ力を強化していく一方で、ディレクトリ構造、各ページやサイトの名前、ナビゲーション、デザインガイドラインなどをきちんと設計したり行政したりしながらひとつの企業サイトとしてのアイデンティティを表現する・・・この両立がどこまで可能なのか、チャレンジしようとしています。

 コンテンツのチカラとデザインのチカラによって企業Webサイトはまだまだ進化できると思っているので・・・ワクワクしますよね。

岩城:そうですね。企業サイトはまだまだ活用の可能性が秘められているメディアだと思います。

 次田さん、ありがとうございました。

 次回は、「企業の人格を表現するWebサイト」という、テーマです。対談のパートナーは、松下電器の次田さんに再登場願います。

次田寿生 Hisao Tsugita
大学で映像を専攻した後、松下電器産業・宣伝事業部に入社。入社後プライベートで制作した作品が「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリを受賞。博覧会や展示会の映像プロデュースやイベントプロデュースを経て、2001年より企業ブランディングWebコンテンツの開発・運用を担当。
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