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■今回からは、「場」をいかにコントロールするか。コミュニケーションにおいては、人そのものへのアプローチだけでなく、「場」に対するアプローチも大切です。「場」の空気をいかにコントロールするか。第1回目は、会議などの「場」での意見の引き出し方です。

(吉岡 英幸=ナレッジサイン代表取締役)


 コミュニケーションにおいて重要なのは相手との相互の関係性だが、「場」というものもコミュニケーションを左右する重要な要素。同じ相手でも「場」によってコミュニケーションがうまくいったり、いかなかったりする。

 相手と良好なコミュニケーションをとるためには、商談や会議、社内のちょっとした打ち合わせなど「場」に応じて、その「場」をコントロールする力が求められる。

 それでは、「場」に起こるエネルギーをコントロールする、「場ヂカラ」といったものを身につけるにはどうしたらいいのだろうか。今回から何回かに分けて「場ヂカラ」について解説していきたい。

「場」によって違う「承認」のハードル

 それぞれ1対1だと活発に議論できるけれども、集団になると意見が出ない。あるいは職場での雑談ではみんな元気なのに、会議になると、同じメンバーに囲まれているにも関わらず、急にみんな押し黙ってしまう。そういうことはよくある。

 これはいったいなぜか。

 会議などまじめな場で発言できるようなまじめな意見がないから、というのもあるだろう。しかし、一番の要因は、このコラムでも何度か取り上げている「承認」に対するハードルの問題だ。

 普段同僚と雑談したり、飲みながら話したりする場合、相手が聞く姿勢になっており、利害もあまり絡まないので、自分の話をある程度受け入れてくれるとわかっている。相手に「承認」の態勢ができているわけだ。

 一方、同じ相手を前にしても利害が微妙に絡んだり、難しいお願いをしたりする際は話しづらい。無条件で承認を得られる状況ではない。会議の場合も、さまざまな人の利害が絡むので同じだ。

 「承認」が保証されないと人はとても臆病になる。または、承認を得ようとするあまり自己防衛本能から饒舌になってしまって、脈絡のないことばかり言ったりする。普段はそうでもないのに、会議になるとやたら話が長い人がいるのはそのためだ。

 だから、会議で「意見をだせ」とか言われても、なかなか出にくくなるのだ。

 会議でできるだけ全員から活発な意見を引き出したい場合は、「承認」のハードルを思い切り下げる努力が大切だ。意見を言いやすい雰囲気、人の意見を否定しないスタンスなどだが、これがけっこう難しい。そこに参加する人たちのヒューマンスキルに負うところが大きいからだ。

フリップを使った「大喜利形式」で公平に意見を出させる

 それならば形から入る手もある。自分にとっての承認のハードルというのは、相対的なものだ。他の人に比べて自分だけが承認のハードルが高いと感じると臆病になるが、全員が公平なハードルの高さだと感じられると勇気が出る。

 私がよくやるのは「大喜利形式」と言って、全員にA4のフリップを1枚ずつ配り、そこに意見を書かせるのだ。そして全員の書いたフリップを「せーの」で一斉にオープンにする。テレビのクイズ番組などで回答をそれぞれフリップに書いて、一斉に「はい、どうぞ」とやる、あの要領だ。

 これにはたくさんのメリットがある。まず、A4の紙1枚に書くことで、必然的に言葉が絞られてきて、意見がより簡潔に、核心に近いものになる。

 しかも、一斉にオープンにされたフリップを見るだけで、ひと目で全員がどんな意見を持っているかがわかる。これを一人ずつ順番に意見を言わせようとすると、「一言でいうと・・・」と言いながら、平気で10分ぐらいしゃべる人が出てきて収集がつかなくなることが多い。

 そして、もっとも重要なのは、エライ人でも、若手でも、頭のいい人でも、話の長い人でも、声の大きい人でも、小さい人でも、フリップ1枚という同じ土俵に立つことができる。

 つまり「承認」のハードルが皆公平になるのだ。口頭ではとてもじゃないけど言えない大胆な意見も、フリップに書くことで表に出しやすくなる。

 私は、多人数が集まる会議や、初めて同士の人が多くて、なかなか突っ込んだ意見が出にくい場などでは、このようなフリップを用意して、一斉に意見をオープンしてもらうやり方をよくやっている。お客様との打ち合わせでもよく使う。

 時間の短縮と公平な参加、そして大胆さを誘うとても効率的なやり方だ。ぜひ、会議や商談などで皆さんも試していただきたい。


著者プロフィール
1986年、神戸大学経営学部卒業。株式会社リクルートを経て2003年ナレッジサイン設立。プロの仕切り屋(ファシリテーター)として、議論をしながらナレッジを共有する独自の手法、ナレッジワークショップを開発。IT業界を中心に、この手法を活用した販促セミナーの企画・運営やコミュニケーションスキルの研修などを提供している。著書に「会議でヒーローになれる人、バカに見られる人」(技術評論社刊)、「人見知りは案外うまくいく」(技術評論社刊)。ITコーディネータ。