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平本健二氏写真
平本 健二(ひらもと・けんじ)

ウッドランド執行役員/コンサルティング事業部長

慶應義塾大学理工学研究科修了。大手システムインテグレータでシステム開発、戦略立案などに従事。コンサルティングファームや官庁を経て、現職。ビジョン構築、IT戦略、IT投資管理、人材育成からシステム立案まで幅広く取り組む。政府の推進するCIO育成、EA構築、業績測定において中心的な役割を果たしている。

 前回・前々回は成果評価の実際と、あるべき成果評価のフレームワークについて解説を行った。今回はこのフレームワークをうまく運用していくための制約となっている「人材不足」の問題と、その育成の仕組みについて解説を行うこととする。

■成果評価のフレームがあれば評価ができるのか

 成果評価のフレームが整備されたとしても、活用するには基本的な知識や経験が必要である。これまでの国内外の電子政府の取り組みから明らかなことは、何かを行うためには「フレームワーク(考え方)」「経験」「知識」「ツール」「ベストプラクティス」それと「使いこなせる人材」のすべてがそろっていることが望ましい。

 前回書いたように、「フレームワーク」は整備されてきた。「経験」は一部の人による試行しかないのでガイドとしての整備が行われている。「知識」もガイドの中で記述されているし、基礎的な書籍は市販されている。「ツール」は複雑な業績評価を行うためには重要であるが、ツールを使わなくても評価が可能なレベルで現在のフレームワークが作られている。「ベストプラクティス」は、試行実施の中で作成されている。しかし「使いこなせる人材」というものが根本的に不足をしている。

 下のグラフは経済産業省の経済産業研修所で行うCIO研修に参加した人の経験と知識を研修受講前に調査した結果である。この研修を受けた後にCIO補佐官や情報システム管理で重要なポジションに就いた人も多い。2004年時点ではパフォーマンス管理やIT投資管理の領域は明らかに知識、経験ともに不足していたが、2006年に行った調査では、近年この分野が注目されていることもあり、知識、経験ともに充実してきている。(知識と経験が各5点で、10点満点で点数化している)しかし、まだ10点満点で5点に満たない項目も多く、実際に研修を行うと、パフォーマンス管理やIT投資管理を行う基本的なベースはできてきているが、フレームの活用などの応用面ではまだ改善の余地がある。

■図1 CIO研修の結果
CIO研修の結果か

 なお、このグラフの点数は、これまで情報システムの現場で業務を行ってきたうえで、CIOやCIO補佐官の職に就こうという人を対象とした研修での結果である。この研修を受けた後にCIO補佐官や情報システム管理で重要なポジションに就いた人も多い。つまり、研修に参加していないCIOやCIO補佐官が、必ずしも「既に実力が十分あるから研修に参加していない」というわけではないことにも留意が必要である。

■人材は民間企業のシステム部門にいる

 上のグラフの数値を見ると、国内にはフレームを使った成果評価ができる人がほとんどいないのではないかと心配になる向きもあると思われるが、そういうわけではない。民間企業を見てみると、成果評価も含むIT投資効果測定は、2004年度で言えば事前評価で19.1%、事後評価で7.3%の企業が実施している(日本情報システムユーザ協会「企業IT動向調査2005」)。しかも、省庁に相当する売上1兆円以上の企業においては、事前評価で64.7%、事後評価で29.4%の企業が評価を実施している。さらに一部実施を含むと事前評価で94.1%が効果測定を行っている。

 またそれらの評価手法では、投資対効果、主要業績指標とともにユーザー満足度調査が行われ、戦略などへの反映が行われている。そして、このとき多くの企業でバランススコアカードなどの成果評価のフレームが活用されている。つまりは、企業の情報システム部門には成果評価を実施できる人材はいるわけである。

 しかし、省庁では、ITの成果管理をこれまで本格的に取り組んでこなかった上に、人材のローテーションが激しいので、成果評価をできる人材はほとんどいないのが実態である。そのため、専門家としてCIO補佐官を採用したわけであるが、情報技術については専門家でも、成果評価に関する知識や経験が十分でなく、成果評価の基礎だけではなくフレームの活用など応用的に使いこなせる人材は多くない。