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 前回までに,画面デザイン,ユーザー・インターフェースが著作権や特許権,意匠権でどのように保護されるのか,その保護の範囲はどうなっているかを見てきました。今回は,それぞれの保護の比較を通じて画面デザイン保護のまとめをしたいと思います。

著作権は特許権より有利だが保護範囲は限定される

 画面デザインを構成するプログラム(コード)という側面は,基本的には著作権で保護されます。権利化も容易です。著作権の場合,基本的に「著作物」としてのコードを創作すれば,出願しなくても権利として保護されるからです。また,保護期間も個人の場合,死後50年(法人の場合公表後50年)なので,保護期間が出願(特許として登録されてからではない)から20年の特許よりも長くなります。

表1●著作権と特許権の比較
  対象 出願の要否 保護期間
著作権 表現 不要 死後50年
特許権 アイデア 必要 出願から20年

 権利としては特許権よりも著作権の方が有利な点が多いと言えます。ただし,画面デザインの保護という観点からは,著作権による保護は十分でないというところがポイントになります。画面デザインの第1回で紹介したように,コードのレベルでは同じ機能を別のコードで置き換えられれば,著作権侵害の問題となりません。画面そのもののデザイン保護の範囲も,デッドコピーかそれに準じる範囲に限定されることになります。

 従って,画面デザインのユーザー・インターフェースという機能面に着目すれば,特許による保護がなじみやすいと言えます。ただ,特許は,特許庁への出願(当然ながら費用もかかる)が不可欠ですし,新規性,進歩性といった要件をクリアしなければならないのでそれなりにハードルが高いのも事実です。

適用対象で棲み分ける著作権と意匠権

 それでは著作権と意匠権を比較するとどうでしょうか。この場合も,基本的には著作権の方が出願・登録なしに長期間保護されるという点では有利ですが,その保護の範囲に限界があるのは前記の通りです。

表2●著作権と意匠権の比較
  対象 出願の要否 保護期間
著作権 表現 不要 死後50年
意匠権 物品の形状+物品の操作に供される形状 必要 登録から15年

 しかし,意匠権が保護の対象としている工業デザイン(応用美術)の分野は,原則として著作権では保護されません。従って,携帯電話,情報家電の画面デザインに関して言えば,意匠権でしか保護されない場合が多いと言えるでしょう。

 他方,前回説明したように,情報家電等が意匠権によって保護されるといっても,パソコンで動作するビジネスソフトなどの画面デザインは保護されないと考えられています。これに対して,限定されるとはいえ,著作権ではデッドコピーないしそれに準ずる範囲で,パソコンのソフトウエアの画面は保護されることになります。適用対象の範囲に関して言えば,著作権と意匠権の間で棲み分けが行われていることになります。

同一の対象が特許権と意匠権の両方で保護されることもある

 特許権と意匠権に関して言えば,どちらも特許庁への出願が必要であることから,権利の性質としては似た部分があります。ただ,保護の対象が,特許権では技術的なアイデア,意匠権では形状という視覚的なもの,というところに大きな違いがあります。そして,同一の対象が特許,意匠の両方の権利で保護される場合もあり得ます。意匠権で保護される対象が,原則として著作権では保護されないこととは,大きな違いがあります。

表3●特許権と意匠権の比較
  対象 出願の要否 保護期間
特許権 アイデア 必要 出願から20年
意匠権 物品の形状+物品の操作に供される形状 必要 登録から15年

 以上,画面デザインの保護について比較してきましたが,それぞれの権利で得手不得手があることが分かるかと思います。このことは画面デザインの保護のみの問題ではありません。知的財産権による保護には,それぞれの権利に固有の限界があります。どの権利により保護されるのか,されないかということを考えておくことは重要な問題です。

 また,画面デザインを保護してもらおうと考えた場合,権利者の立場から見ると,なかなか保護されない場合が多いことを頭に入れておきましょう。強い保護を得ようとする場合には,特許,意匠権による保護ということになりますが,その場合は開発段階から出願することを考えておく必要があります。例えば,特許の場合,出願前に当該製品を発表してしまえば新規性を喪失し,特許を取得できなくなってしまいます。このため,開発と並行した事前の準備が重要ということになります。


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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)

【略歴】
 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。
 2001~2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。

【著書】
 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。

【ホームページ】
 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。