NECは2006年春,業界に先駆けてNGNへの取り組みを発表した。通信機器やコンピュータ,ソフトウエアのベンダーとして,そしてシステムとネットワークのインテグレータとして,いずれの分野でも大手であるNECは,NGNでその総合力が大いに期待されている。NECの国嶋矩彦執行役員常務に,同社のNGN戦略を聞いた。
NECは2006年春の新社長就任とともに,いち早くNGNビジネスへの参入を宣言しました。
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2006年3月に弊社の矢野薫が社長に就任し,すぐにNGNに向けた新体制を発表しました。元々NECには企業文化として,「C&C」(コンピュータと通信の融合)を提唱して,ITとネットワークの融合を進めてきたという経緯がありましたので,NGNへのベクトルがまとまったと思います。
弊社とNECビッグローブは,NTTの「NGNフィールド・トライアル」にも参加を表明しており,ITとネットワークの両方に実績がある企業として,NGNのすべての領域で貢献するつもりです。
NGNのインパクトについてどのように捉えていらっしゃいますか。
すでにインターネットはオープンで便利なネットワークとして定着していますが,NGNは,さらに高速,高信頼,高品質により,「安心・安全」「便利・快適」な環境を提供するといわれています。「いつでも,どこでも,だれとでも」というユビキタス社会の到来が以前から言われていましたが,その実現に向けて加速してくれるのがNGNではないでしょうか。ユビキタス時代の膨大で多様化する情報を誰でも快適に利用できるために,欠かせない社会インフラになると思います。
人々の行動様式が変わってきた
現在,消費者の行動がネットワークを抜きには考えられなくなってきました。ほとんどの人が,インターネット通販を経験していて,インターネットでしか物を買わないという人まで現れてきました。人々の消費行動が変わるなかで,これまで店舗を持って消費者と接していた企業も変わらなければならないのは当然でしょう。
企業のシステムはどのように変わりますか。
セキュリティや信頼性の向上,パケットに優先順位を付けるQoSなどは,企業ごとに個別に対応しています。しかし,NGNによってこれらはサービス・プラットフォームとして共通的に提供されるので,企業にとって,より柔軟なシステムが,より短期間でできるようになります。
さらに,認証や決済基盤などの仕組みがサービス・プラットフォームとして提供されることで,企業間のシステム連携も進めやすくなるでしょう。消費者を起点に金融,流通,製造などの分野で異業種連携が進み,NECが従来から提唱している『ダイナミックコラボレーション』がさらに加速していくと考えています。
NGNに向けて新体制を整えた
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NECは具体的にどのような体制で,NGNビジネスに参入するのでしょうか。
NGNを意識した新組織体制として象徴的なのは,キャリア向け市場のビジネスユニットを新設したことでしょう。また,ネットワークソリューション部隊とITソリューション部隊を一つにまとめ,企業や官庁,公共,金融,通信など,関連するお客様ごとに一枚岩で対応できるようにしました。
NECビッグローブなどグループ企業の体制はどうですか。
NECビッグローブは分社化により意思決定スピードを速め,サービスの多様化に向けて,さまざまな企業とのコラボレーション力を強化しました。またこれからは,ネットワークを通じてコンテンツやサービスやアプリケーションを提供するASPやSaaSと呼ばれる分野で,大きな成長が期待できます。NECビッグローブには,これまでのBtoCビジネスに加えて,サービス・プラットフォーム事業によるBtoBtoCビジネスを強化し,NGNを舞台にしたプレーヤーとして活躍してもらいたいと思います。
グループ企業では,合計1万5000人以上の従業員がいるソフトウエア会社が,ITとネットワークに精通したシステム・インテグレーションで力を発揮してくれると思います。
2007年にNGNはどのように展開されると見ていますか。
2007年から,すでに投資が始まっているネットワーク・インフラに加えてサービス・プラットフォームの投資が始まり,後半から徐々にNGNが立ち上がってくると思います。早くNGNがフィールド・トライアルから,商用化に移行してもらいたいですね。
ライバルが多いNGNですが,NECの強みは?
NGNを見据えて,我々もいろいろな手を打って行くつもりです。シン・クライアントやRFID,ブロードバンド・オフィスなど,弊社の手掛ける多くの領域で,NGNによりその活用がさらに広がると期待しています。BIGLOBEで培ったBtoCサービス提供ノウハウ,キャリア向けの豊富な実績,R&D技術開発や実践を通して,強みであるITとネットワークの融合したNGN対応の製品やソリューション,サービスを早期に強化してまいります。
また,企業にとっては,NGNの本格的到来に備えて,今からシステム環境を整えておくことが重要です。ネットワークの統合やデータ/サーバーの集約など,社内システムの最適化を進めておく必要があります。
弊社では,このような"NGN時代を迎える準備"を「NGN Ready」と呼び,NGNを見据えたお客様のイノベーションを支援してまいります。
NGNにより個人と企業の関係や企業間連携が密になり,弊社が提唱する『ダイナミックコラボレーション』が加速するでしょう。弊社はそのお手伝いをしたいと考えています。