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ユーザー企業の立場からは,おサイフケータイはマーケティングに活用できる魅力的なITツールと言える。しかしこうした活用法は,顧客となるエンドユーザーが実際におサイフケータイを利用してくれることが前提だ。エンドユーザーの利用が拡大するかどうかは,おサイフケータイの魅力がどれだけあるかにかかってくるだろう。実はおサイフケータイには,意外と知られていないメリットがあるのだ。(神尾寿=通信・ITSジャーナリスト)

 おサイフケータイは業界最大手のドコモが注力することもあり,その認知度は高い。2006年4月にNTTドコモが公開した「ドコモレポート」によると,おサイフケータイの認知度は98%。一般調査会社の資料でも,認知度は軒並み90%台に乗る。しかし,その一方で利用率の伸びは振るわず,例えば最新の「NIKKEI NET」のネット調査で7.1%,他の調査リポートでも3~4%程度にとどまっている。

 ドコモの主力ラインアップに標準搭載され,au,ソフトバンクモバイルでも搭載機種が増えるおサイフケータイが,なぜこうもユーザーに「使われない」のか。

 よく言われる理由としては,紛失・盗難といったセキュリティ面への漠然とした不安や,対応アプリの導入が必要といった煩雑さ,対応店舗が現時点では不十分といった点が挙げられる。しかしこれらは既に解決済みだったり,近いうちに解決するものが多い。おサイフケータイの利用拡大に立ちふさがる最大の壁は,プラスチック・カード型FeliCaに比べてどんなメリットがあるのか,あまり理解されていないことであると筆者は考えている。

いったん使い始めるとやめられないおサイフケータイ

 おサイフケータイが搭載する非接触IC「モバイルFeliCa」は,プラスチック・カードに搭載するFeliCaを携帯電話向けに進化・拡張したものだ。だが,“かざして使う”という基本的な機能は,FeliCaカードとおサイフケータイで変わるところがない。

 例えばJR東日本は,カード型の「Suica」とおサイフケータイ用の「モバイルSuica」の両方を提供しているが,そのどちらでも「電車に乗る」,「電子マネーを使う」といった基本的な機能に差はない。実際の利用者数を見ても,サービス開始時期が早く,利用方法が分かりやすいFeliCaカード型のSuicaの方が普及している。2006年12月時点におけるSuica全体の発行枚数約1827万枚のうち,モバイルSuica利用は約20万にとどまっている。

 では,FeliCaカードとおサイフケータイの差は本当にないのか。そんなことはない。実はおサイフケータイには,FeliCaカードにはない利便性や安心感,特典がある。この“FeliCaカード+アルファ”の価値がいまだによく知られていないため,認知度は高くても利用率が振るわないという現状になっていると言える。

 おサイフケータイの「良さ」を実感している人々は確実にいる。事実,NTTドコモの調査によると,おサイフケータイを使い始めたユーザーが今後もずっと利用し続けたいとする継続利用率は,99%と極めて高水準だ。さらにauやソフトバンクモバイルでも,一度おサイフケータイを使い始めたユーザーは,その後もおサイフケータイ対応機種を選ぶ傾向がある。「(おサイフケータイ利用者から)おサイフケータイ対応機種を増やして欲しいという声は確かにある」(KDDI)という。

 おサイフケータイは今後も利用者が減ることはなく,むしろ,そのメリットが理解されるようになれば,ユーザーは着実に増えていくだろう。もし,自分の携帯電話がおサイフケータイであるにもかかわらず,一度も使ったことがないなら,とにかく使ってみることをお奨めする。そうすれば,おサイフケータイが秘める発展の可能性を感じられるはずだ。

おサイフケータイの安全性は現金やFeliCaカードより高い

写真1 暗証番号を入力しない限りFeliCaサービスを利用できなくする「FeliCaロック」(ICカードロック)機能
写真1 暗証番号を入力しない限りFeliCaサービスを利用できなくする「FeliCaロック」(ICカードロック)機能 [画像のクリックで拡大表示]

 では具体的に,おサイフケータイゆえのメリットとは何だろうか。その要素は数多いが,大きく分けると「安全性」,「利便性」,「お得さ」の3点に集約される。

 一つめの安全性については,実はおサイフケータイの方がFeliCaカードよりもずっと高い。おサイフケータイのほぼ全機種が,FeliCa機能を通常状態で停止する「FeliCaロック」を備えているからだ(写真1)。この機能を利用した状態では,電子マネーやFeliCaクレジット決済,会員証といったFeliCaサービスを使おうとするとパスワードの入力が求められる。入力しない限りは利用できないので,仮に携帯電話を紛失したり盗難されたりしても第三者に不正利用される恐れは少ない。

 ほかにも,紛失・盗難時に無くした端末に電話をかけて,FeliCa機能を無効化する「遠隔ロック」を使うという方法もある。この機能は事前の初期登録が必要だが,盗難・紛失後に不正利用を防げる。さらにNTTドコモのおサイフケータイの最新機種ならば,事前登録なしで利用できる「おまかせロック」機能が用意されている。ユーザーがNTTドコモのコール・センターに申請すれば,遠隔操作でおサイフケータイ機能を停止できる。

 このようにおサイフケータイは,携帯電話の端末機能や通信機能を駆使してセキュリティを確保している。本物の財布を落とせば,拾った人に悪意があれば現金が使われることを防げないし,FeliCaカードの電子マネーもチャージした分は使われてしまう。FeliCaクレジットに関しては,クレジットカード会社に届ければ不正利用分の支払いが免除されるが,それでも不正利用がすぐに防げない点は同じだ。現金やFeliCaカードに比べれば,おサイフケータイの方が断然,安全性が高いのだ。

おサイフケータイの本質は「ATMを持ち歩ける」こと

写真2 Edyのアプリケーション上でチャージが可能
写真2 Edyのアプリケーション上でチャージが可能
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 二つめの利便性は,電子マネーや公共交通のIC乗車券でその効果が顕著に現れる。周知のとおり,SuicaやEdyなど電子マネーやIC乗車券はプリペイド(前払い)式が主流であり,事前に入金(チャージ)し,残額が少なくなったら補充しなければならない。しかし,FeliCaカードだと利用時しか残額がわからず,チャージも専用機器で行う必要がある。しかしおサイフケータイならば,残額確認は携帯電話の画面上で行える上,チャージもオンラインで可能だ(写真2)。いわば,ATM(現金自動預け払い機)を身に付けているようなもの。いつでも,どこでも「お金」の引き出しが可能になる。電子マネーやIC乗車券の利用機会が増す中で,このメリットは大きい。

 利便性が高いのは,電子マネー/IC乗車券だけではない。全日空と日本航空では,おサイフケータイを航空券の代わりに利用できる「チケットレスサービス」を導入している。パソコンまたはおサイフケータイで航空券を予約・購入し,ICアプリを導入済みのおサイフケータイを航空券代わりにすれば,ケータイだけで飛行機に乗れる。また,予想以上に便利なのがレンタルビデオ店などの会員証だ。一度おサイフケータイにアプリを入れてしまえば,会員証をなくしたり忘れる心配とはほとんど無縁になる。

 さらに,今後の増加が期待できるのが,おサイフケータイを店頭でかざすと電子クーポンなどがもらえる「トルカ」だ。紙のクーポンや割引券と違い,紛失の心配はないし,かさばらない。対応店舗が増えてくると非常に便利になるはずだ。

マイルやポイントが2重,3重にたまる

 さらに三つめの「お得さ」という面でも,おサイフケータイには,実はあまり知られていないメリットがある。特に各種マイルやポイント・プログラムの連携は強力である。

写真3 全日空の「ANAマイレージクラブ」のアプリケーション
写真3 全日空の「ANAマイレージクラブ」のアプリケーション [画像のクリックで拡大表示]

 この分野で強いのが,電子マネー「Edy」と連携するマイル・ポイント・サービスだ。まず代表的なものが,全日空の「ANAマイレージクラブ」(AMC)との連携である(写真3)。おサイフケータイにAMCアプリを導入しておけば,Edyで200円の買い物をするごとに1マイルがたまる(店舗や商品によっては適用外あり)。Edyでのマイル蓄積はお得なので,おサイフケータイを使うなら是非とも設定しておきたいものの一つだ。

 おサイフケータイには,am/pmやサークルK,サンクス,マツモトキヨシ,ヨドバシカメラ,ビックカメラといった各店舗のポイント・プログラム用のアプリも用意されている。これらはポイントカードの代わりにおサイフケータイが使えるようになるため,いちど設定してしまえば,財布の中に何枚もポイントカード入れなくてよくなる。忘れたり,紛失するといった心配もないので,確実にポイントがためられる。

 また,おサイフケータイならではの“裏技”として,Edyを使ったポイントとマイルの重複蓄積がある。例えば,ヨドバシカメラなどの家電量販店では,Edy支払いの際のポイントカード還元率が現金と同じとなる。これを利用し,家電量販店で5万円まで(Edyの利用上限額)の買い物をする際におサイフケータイを使えば,Edyを使ってANAマイレージクラブにおけるマイルを得るのと同時に,家電量販店のポイントをためることができる。つまり,「Edy利用によるANAのマイル」と「家電量販店で現金と同率のポイント」が2重にたまるのだ。

 さらに,「ANA VISAカード」など一部のクレジットカードでは,おサイフケータイのEdyにチャージをする際にクレジットカード側のポイントがたまる。家電量販店での買い物に使うEdyをクレジットカードからのチャージとすれば,「Edyチャージによるクレジットカードのポイント」を加えて,3重のポイント/マイルを獲得できるというわけだ。

 このようにおサイフケータイは,よくよく見れば,安全で利便性が高く,さらにポイントやマイルでお得になるサービスが多い。ユーザー視点でも,とても魅力のあるサービスと言えるだろう。