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■コミュニケーションにおいては、人そのものへのアプローチだけでなく 、「場」に対するアプローチも大切です。「場」の空気をいかにコントロールするか。今回は「場」における「気」について。活発にしゃべる人がいると場が盛り上がるかというとそうでもない。それはなぜでしょうか。

(吉岡 英幸=ナレッジサイン代表取締役)


 何人かで会議や打ち合わせをする際、活発にしゃべる人が一人いると、場全体を引っ張ってくれて議論が盛り上がるときがある。そうかと思うと、饒舌な人のほとんど独り舞台で、残りのメンバーは対極をなすかのようにしんみりしていることがある。

 営業がやってきて商談をする際、お客としては相手の営業にいろいろと聞きたいことがあるのに、営業が一方的にしゃべりまくるので、疲れてしまって聞きたいことを聞く気がしなくなってくる。そんな経験はないだろうか。

 「気勢をそがれる」という言葉があるが、まさにその通り。こちらのしゃべりたい「気」が相手に奪われてしまうのだ。

 しゃべる、アウトプットするということは、ある程度のエネルギーを要する。複数の人が集まって会話や議論をするときは、お互いが「しゃべりたい」エネルギーを持ち寄っているわけだ。「気」という言葉を使うと少々エキセントリックだが、感覚的にはしっくりくる。

「場」の「気」は仲良く分け合うもの

 「場」ができると、そこに参加する人全員の「気」が合わさって一つの大きな「気」が生じる。しかし、それは全員の合計分以上には増えない。一定の「気」を場の参加者で分け合うことになるのだ。

 たくさんしゃべる人が出ると、それだけ「気」のシェアを奪う。一人がその場の「気」の大多数を奪ってしまうと、他のメンバーは残り少ない「気」を分配するしかない。

 饒舌な人に負けまいと、さらに饒舌なライバルが現れることもあるが、全員が饒舌になることはない。二人の“気バスター”に大半の「気」を奪われて、他の人はいっそう静かになってしまう。そんな、一部の人が全体の8割の発言をしている会議というのをよく見かけるだろう。

 「気」は「場」に出た時点で、誰もが手にすることができる共有財産なので、早いもの勝ちだ。もともと自分が持ち込んだ「気」の量が多くても、それを先に他人に奪われてしまえば、自分の「気」の取り分は少なくなってしまう。

 しゃべる気まんまんで会議に参加したら、あまりにもしゃべり過ぎるやつがいるので、疲れてしまって寡黙になってしまった、ということがよくある。飲み会で、「さあ今日は思い存分飲んで酔っ払うぞ!」と思って臨んだら、先に超ヘベレケに酔っ払った人がいて、気持ちよく酔えなかったというのも同じ原理だ。

 商談でも、会議でもコミュニケーションの「場」においては、「気」の分配に配慮しないといけない。これをできないと、商談で独りしゃべりまくって、お客さんの声を全然聞けていない、場の見えない営業のようになってしまう。

 それでは、どのように「気」の分配に配慮し、他者の意見や声をもっと引き出せばよいのか。

「気」は短い時間で分配量が決まる

 1対1で対話する1時間の商談があったとしよう。最終的に30分ずつしゃべったとすれば、「気」は均等に分配されたことになる。しかし、「気」の分配率は最初の10~15分でほぼ決まってしまうのだ。

 最初の10分で自分が7分しゃべったとすると、たいてい1時間の商談のうち7割を自分がしゃべることになる。そうならないためには、最初の10分で均等に「気」をシェアすることに配慮するのだ。そうすると、1時間を通しておおよそ均等な「気」の分配率になる。

 そうは言っても話の流れや、相手との距離で最初から計算通りにはいかないだろう。その場合は、できるだけ間をとることで、こちらが「気」を圧倒的にシェアしている、と相手に感じさせないよう配慮する。

 一言話した後に、間をおいて相手に同意を求めたり、リアクションを求めたりする。そうすることで、相手は「気」を独り占めされていると感じないのだ。皆さんも、日常のコミュニケーションで「場」における「気」の分配にぜひ注意してみてください。


著者プロフィール
1986年、神戸大学経営学部卒業。株式会社リクルートを経て2003年ナレッジサイン設立。プロの仕切り屋(ファシリテーター)として、議論をしながらナレッジを共有する独自の手法、ナレッジワークショップを開発。IT業界を中心に、この手法を活用した販促セミナーの企画・運営やコミュニケーションスキルの研修などを提供している。著書に「会議でヒーローになれる人、バカに見られる人」(技術評論社刊)、「人見知りは案外うまくいく」(技術評論社刊)。ITコーディネータ。