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業務請負という契約形態にもかかわらず、実態としては派遣で労働者を就労させる行為のこと。中間搾取を禁じた労働基準法および職業安定法違反行為となる。

 大手システム開発業者B社に開発を委託して業務システム開発を進めているA社の情報システム部長はふと、妙なことに気づきました。B社から来た技術者たちの中に、B社の社員ではない人が混じっているのです。B社の主任に尋ねると、「Cさんは、実はうちの社員でなくて個人事業主の技術屋さんです。優秀な人なので当社(B社)と契約して来てもらっています」という返事でした。

 さて、締め切りが押し迫ると、A社はB社に残業や休日出勤を要望せざるを得ないことが増えてきました。「このバグは至急直してほしい」といったことです。A社はCさんにも直接そう要望しました。

 その数日後、A社に突然、労働局が来ました。「A社とB社は職業安定法に違反していると苦情がありました。契約を見直さないと『偽装請負』として刑事告発します」と警告されたのです。

 この「偽装請負」は、業務請負という契約形態にもかかわらず、実態としては派遣で労働者を就労させる行為のことです。職業安定法第44条および労働基準法第6条に違反します。職業安定法第44条は、労働衛生管理といった使用者責任を負うことなく中間搾取だけを行う「人貸し業者」を排除しようと制定されたものです。ここ数年、労働局は製造業や倉庫管理業と並び、IT(情報技術)業界を問題視しています。IT業界では元請けのシステム業者が下請け業者の技術者を助っ人として呼ぶことは珍しくありません。そのために、A社のような一般企業も法律違反に加担してしまうケースがあるのです。

◆効果 懲役・罰金刑の対象

 冒頭の例では、A社は業務指示をB社にのみ出すべきでした。Cさんのような下請け業者に直接、指示を行ってしまうと違反になります。この瞬間、元請けのB社は、A社の指示をとりまとめて割り振る管理業務もせずに、単にCさんの労働対価をピンハネしている形になるからです。

 実際に労働局が行政指導に入ると「A社とCさんはB社を介さずに直接、業務請負契約を結び直しなさい」と指導するのが通例になっているようです。

 もしこの指導を無視し続けると刑事告発され、A社とB社の責任者は1年以内の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑に処される可能性があります。

◆事例 厚労省は監視強化を表明

 厚生労働省の東京労働局はIT業界向けに「情報サービス業に於ける請負の適正化のための自主点検表」をウエブで公開して、啓もうを進めています。

 さらに厚労省は2006年9月、違反を繰り返す業者へは行政処分も検討するといった監視強化方針を発表しました。