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日経情報ストラテジー
編集長
多田和市

 ITpro読者の皆さん、新年、明けましておめでとうございます。

 日経情報ストラテジー編集長の多田和市(ただ わいち)です。2007年も、よろしくお願いします。

 企業業績は好調です。少子・高齢化によって国内市場は頭打ちどころか、縮小する方向にありますが、米国や中国など、海外市場が拡大しており、2006年同様に日本企業はその恩恵を受けることになりそうです。

 ただし、油断は禁物です。ちょっと気を抜くと、たちまちライバルに追い抜かれ、業績の悪化につながりかねません。ライバルは日本企業だけではなく、グローバルで増えています。さらに、インターネットの普及・拡大によって、「変化」のスピードが格段に速くなっており、「変化対応力」がますます求められています。

 さて、2007年における企業経営のキーワードについて考えてみましょう。今月末から2月はじめにかけて、日本版SOX法の実施基準が正式にリリースされます。上場企業およびその連結対象企業を中心に、2008年度決算から適応しなければなりません。

 日経情報ストラテジーが2006年10月から11月にかけて上場企業および有力未上場企業のCIO(最高情報責任者)に実施したIT投資に関する実態調査では、今後2~3年で行うIT投資の中身を聞くと、圧倒的な1位が内部統制関連でした(調査の詳細は、1月24日発行の2007年3月号に掲載)。内部統制の整備に力を入れている企業の実態がより明らかになったわけです。

 今後、「漏れなく、無駄のない」内部統制の整備が求められます。SOX法に詳しい会計士やコンサルタントの絶対数が少ないということもあって、どうすればいいのか悩んでいる企業も少なくないのではないでしょうか。

 さらに、内部統制の整備・強化によって、経営効率を高めようと意欲を燃やしている経営者もいます。実際、業務プロセスのフローチャートを書いてみると、いろいろな無駄が見つかるようです。無駄な業務プロセスを改めることによって、効率化を進めることになります。無駄を省けば、統制しなければならないプロセスの数は減り、リスクも減ります。ただし、言うは易く行うは難く、業務手続きやリスク・コントロール・マトリクス(RCM)などの文書化作業を簡単にできるIT(情報技術)ツールへのニーズは膨らんでします。日経情報ストラテジーとしても、ITを駆使した先進企業の事例をどんどん紹介していきたいと考えています。

 内部統制の強化は、企業経営の「品質」を高めることにつながります。2007年以降、「品質」というキーワードはますます重視されます。昨年秋に取材したサイバーエージェント社長の藤田晋さんにウェブ2.0時代の経営について聞きました。その答えはこうです。

 「ウェブ2.0時代は、これまでとは比較にならないくらいに品質が重要な時代になってくると、僕は思います。ウソは全部ネットでバレちゃいます。我々もずっと、『スピード』や『急成長』といったことを打ち出してきましたが、創業して10期目で初めて、クオリティー(品質)ということを言い始めました」(2007年2月号のトップインタビューより)

 藤田さんによれば、ウェブ2.0時代は、いい宣伝をすればものが売れる時代ではなくなるそうです。例えば、いくらテレビCMで映画がおもしろいと宣伝しても、実際に見た人の多くがつまらないと感じ、そのことをネットで書き込んだら、その映画を見に行く人は減ります。そうなったら、宣伝費は無駄になってしまいます。

 「逆に言うと、宣伝費を多くかけなくても、非常にクオリティーの高いものを作ったり、いいサービスを提供すれば、ブロガーが勝手に紹介してくれて、勝手に広がります。意図的に書かせたとしても、それが本当のことであれば、いつかワッと広がります。もうごまかしが通用しないということです」

 その藤田さんから、意外な話を聞きました。いわく、「ネットのビジネスは、ちょっと気を抜くと、出遅れてしまいます。実は、当社はブログビジネスに出遅れたんです。挽回するのに、けっこうな時間がかかりました」。

 「経営者の怠慢です」と藤田さんは率直に話します。「自分がブログをやっていれば、その重要性を十分に理解できていたはずですし、もっと初期のころに手を打てたでしょう」。ネット時代は、ちょっとした判断ミスが命取りになります。

 藤田さんの持論は、「ネットビジネスは、経営者が新しいサービスにどんどん参加し、自分で使ってみて、自分の頭で理解しないと大きな判断ミスを犯してしまう」ということです。ただし、サイバーエージェントは、出遅れたブログ事業で、既にトップグループにいます。しかも、「頭ひとつ出たと思います」と藤田さん。手応えを感じているようです。

 また、ブログのシステムをはじめとして、すべてのシステム開発は自前だそうです。社員がやってしまうという話です。出遅れた場合に、時間を稼ぐために買収という手段を使うことがあります。しかし、サイバーエージェントは他社を買収せず、半年の遅れを挽回したそうです。それだけ、サイバーエージェントには、「底力」があるのでしょう。

 藤田さんの話を聞いていて考えたのは、「会社の寿命」です。以前よりも格段に短くなっているのではないしょうか。

かつて「会社の寿命は30年」、いったい今は何年?

 「会社の寿命は30年」。日経ビジネスが1982年に特集し、話題になりました。当時は、会社の売上高と総資産に注目して100位ランキングを作り、数十年にわたって、その顔ぶれを追かけました。そして、100位ランキングに平均して何年間滞在できるのかを調べたところ、30年でした。こうして「会社の寿命は30年」となりました。

 1990年代半ば以降、インターネットが普及して、変化のスピードが一段と速くなってきました。ネット時代の「会社の寿命」を調べたのが、1999年です。当時、日経ビジネスの副編集長だった私は、特集チームをつくって、ネット時代の「会社の寿命」を調べました。株式時価総額という指標で100社ランキングを作って「会社の寿命」を算出しました。

 その結果は、日本企業は7年。米企業にいたっては、たった5年でした。

 誤解がないように解説すると、「会社の寿命」は、会社が誕生してから倒産するまでではなく、会社に勢いがある期間をさします。それにしても、ネット時代に隆盛を誇れる期間は短くなっています。ネットの利用が本格化してきた今、おそらく「会社の寿命」は7年以下になっているのではないでしょうか。

 そんななか、「300年続く会社にしたい」と話す女性のベンチャー経営者を取材しました。プリント基板の検査装置で、オムロンに続く第2位のマーケットシェアを持つサキコーポレーション(東京・港)社長の秋山咲恵さんです。

 「お客様のニーズと自分たちがやっていることがもし乖離していたら、その会社はいずれ消滅するでしょう。しかし、お客様のニーズとの距離感をしっかりとキープしていくことができれば、会社がずっと世の中に存在し続けられるでしょう。そのためにも私は、昨年と同じことはしないことに決めています。300年続く会社になるために、社員一人ひとりが常に新しいことに挑戦しているのです」

 サキコーポレーションは、1994年4月に設立された若くて伸び盛りの企業ですが、ロボット産業におけるリーディングカンパニーを目指している、非常にユニークな会社です。秋山さんの経営者としての熱い「思い」は、1月24日発行の2007年3月号のトップインタビューで紹介します。

 同社がお客様のニーズを的確につかみ、ロボット市場から乖離せずに進むためにも、イノベーション力が求められます。イノベーションは、よく技術革新と訳されます。が、技術革新力だけでなく、経営革新力や業務革新力が無いと、お客様のニーズに応えていくことはできません。そして、経営革新力や業務革新力を支えているのが、現場社員の「底力」です。

これから問われるのは、現場社員の「底力」

 その意味で、2007年以降、ますます問われるのが、現場社員の「底力」だと思います。土地バブルやITバブルを乗り越えた企業は、例外なく現場社員の「底力」があります。その代表例が、トヨタ自動車です。

 「一人ひとりの社員が常に危機感を抱き、深い問題意識を持って自ら経営課題を見つけて、自らその解決策を考えて、自ら動く」という組織。トヨタのような組織は、世界を探しても見つからないかもしれません。「トヨタに見習いたい」と思う企業経営者は多いと思います。

 だからこそ、「トヨタに学ぶ=トヨタ流企業改革」を導入する企業は後を絶ちません。特に、ここ数年、トヨタ流企業改革に取り組む企業は増えました。しかも、生産現場だけでなく、店舗をはじめとする営業現場でも取り組まれています。そこで、日経情報ストラテジーは、ここ2、3年書いてきたトヨタ流を実践する企業の事例記事を一冊の本にまとめました。日経BPムック「生産から営業現場まで ケースで学ぶトヨタ流企業改革」という本です。興味がある方は、ぜひともお読みください。

 トヨタに学ぶ企業が増えていますが、トヨタ流企業改革を導入してもなかなか成果を出せていないという現実があります。その理由を突き詰めていくと、企業風土の問題にぶち当たります。どんなに優れた経営改革手法やITを導入しても、社員一人ひとりが危機感を持って、自発的に問題点を見つけ出し、改善策を考えて実践する組織風土がないと、イノベーション(革新)を起こすことはできないということです。

 トヨタのような組織になるには、時間がかかります。地道な努力が必要となります。トヨタ流の改善に取り組んでいる帝人の長島徹社長は、「改善活動を根付かせるためには、3年目が勝負です」と話しています。

 2007年は、経営者自らが改善に努め、「改革の旗」を降ろしてはいけません。日経情報ストラテジーとしても、トヨタ流の企業改革にIT活用を加味した企業改革事例などを紹介していきたいと考えています。まさしく「トヨタ流2.0」とでもいえばいいのでしょうか。進化し続けている企業の現場をどんどん取材していきます。

 今年も、日経情報ストラテジーをどうかよろしくお願いします。