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図 照明や信号の光にデータを紛れ込ませる「可視光通信」 人間は高速で点滅する光の変化を感知できない。この性質を利用して,可視光でデータを送る。
図 照明や信号の光にデータを紛れ込ませる「可視光通信」 人間は高速で点滅する光の変化を感知できない。この性質を利用して,可視光でデータを送る。
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 可視光通信とは,目に見える光を使ってデータをやりとりする通信技術のこと。データを照明や信号に紛れ込ませて,人間に気付かれずに通信を行う。総務省では可視光通信の実用化に向けて,2006年11月に発足させた次世代ブロードバンド技術の利用環境整備に関する研究会で検討を始めた。

 「見える」という特徴を持つ光を使うことで,従来の無線通信では考えられなかった用途での利用を想定している。

 可視光通信の最大の特徴は,送信装置に既存の照明器具や信号灯が使えること(図)。LEDやインバータ型蛍光灯,直流型蛍光灯であれば,変調装置を追加するだけで可視光通信が可能になる(図中の1)。この変調装置が電力をオン/オフしたり周波数を変えることで光源の可視光を変化させ,データを送る(同2)。

 ただし,単純に照明の点滅で信号で送ろうとすると,周囲にいる人が明るさの変化を感じてしまう。可視光通信ではこの問題を回避するために,変調方式に工夫を凝らす。人の眼には照明の光が変化していないように見せる変調方式を採用するわけだ。人は短い時間の光の強度変化を認識できない。そこで,一定間隔に1回ずつ光源を高速に点滅させることでデータを伝送するSC-I-PPM(サブキャリア反転パルス位相変調)などの変調方式を使う。こういった方式を使えば,光はほんの短い時間しか暗くならないので,人はほとんど気付かなくなる。

 信号を受信するレシーバでは,内蔵するLEDで可視光を電気に変換し,そこから信号を取り出す。通信速度の上限は,光源として照明用の白色LEDを使う場合で5Mビット/秒程度になる。3原色ごとにLEDを分け,それぞれに別のデータを乗せれば,理論上は数百Mビット/秒で通信できるという。

 可視光は,無線通信に使う電波よりまっすぐ進む性質が強い。このため,通信できる範囲を予測しやすい。光が直接届く範囲であればほぼ通信できると考えられるからだ。ただし,「光源との距離が離れた光やブラインドから漏れる光などでは高速通信は無理」(可視光通信コンソーシアム会長を務める慶応義塾大学理工学部情報工学科の中川 正雄教授)なので,セキュリティの心配はさほどいらないという。

 可視光通信は,電波による通信を置き換えるものではない。通信範囲が限られ,人間の視覚で確認可能な「光」を使うという特性を生かした用途に向く。「人間の視覚で通信範囲や通信相手が確認できるのが強み」(中川教授)といえる。