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ガートナー ジャパン
リサーチ グループ バイス プレジデント
山野井 聡

 日本のITリーダーは2007年,何から始めれば良いでしょうか。ここで私が申し上げるITリーダーには,CIO(最高情報責任者),それから企業のIT部門に在籍されている方々,また,CIOやIT部門のパートナーとなりうる,ITベンダーの方々も含まれます。

 「経営戦略に資するITはどうあるべきか」。このような視点から,ITリーダーの皆さんに助言したいと思います。

経営戦略に資するITとは?

 いま,日本企業はさまざまな課題を抱えています。各種統計を見ると,2007年のGDPは1.8%の伸びとなっています。この伸びを支えているのは,輸出と設備投資です。日本企業は,国内のビジネスについては効率性を高めて収益を伸ばそうとしています。一方,海外のビジネスについては,商圏を拡大する方向に動いています。

 経済産業省の統計によると,製造業の海外における売上高は2005年で約90兆円。これは前年から約13%の伸びを示しています。売上高のシェアを見てみると,一番がアジア圏で41%。二番目が北米で39%です。すでにアジア圏が北米を抜いたのです。特に対中国の伸びは顕著で,2002年から2005年にかけて年平均で24%と高い成長を見せています。

 これらの数字を見ればお分かりになると思いますが,商圏のグローバル化は,企業にとって「今そこにあるチャレンジ」なのです。

 また最近活発化している企業のM&Aも見逃せない動向です。M&Aは年間3000件近く成立しているそうです。つまり,1日10件のM&Aが成立しているということになります。

 一方,企業内についてもIT部門が向き合うべき経営課題が数多くあります。一つは,プロセスの透明化。いわゆる「J-SOX(日本版SOX法)」に象徴されるように,いかに社内の業務プロセスを可視化し,社内外に説明できることが求められています。

 非常に多岐にわたる事象を取り上げましたが,本来,これらすべてに,ITが貢献できるはずなのです。

 ガートナーは全世界で1400人以上のCIOに「CIO Survey」と題した調査を実施しています。いまCIOは,ITをビジネスの成長や収益の拡大に直接絡ませたいと考えています。つまりITで直接経営をドライブしたいと思っているわけです(図1)。

図1●CIOの取り組み課題
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期待する経営者,失望する経営者

 実際,ITの威力を知り,ITに期待を寄せている経営者は数多くいます。ある事務機器メーカーは,全世界に数百もの拠点があるそうです。それぞれが事務機器の在庫を持っています。個々の拠点ごとに,そのステータスは異なります。ある拠点には在庫がない。ところが,ある拠点ではリース期限が終わって余っている。地域間の差異を考慮しつつ,全体で最適な在庫量を導き出したい。あるいは拠点間で在庫を融通し合い,新しい注文に対応できるかどうか顧客にすぐ回答したい。

 これは,ITがなければできないことです。この企業はいま,「テクノロジーありき」でどんな経営が実現できるかを考えています。

 ところが,ITに失望している経営者もいます。ある小売業は,中国に店舗を展開したい。しかし,そのスピードに追従できないのがITであるとのことです。その企業の中で調達が最も遅いのがITである,ということです。ビジネスのスピードに追従できていないITに失望している経営者も,少なからずいます。

「競争優位には2%だけ」という不可解

 経営者がITに失望している原因は,IT投資の現状にも表れています。IT関連の予算の内,8割が維持,2割が新規投資に使われています。3年から4年前から,この状況は変わっていません。実は,米企業もこのような状況です。

 つまり,予算の8割は,いまのシステムを動かすだけに使われています。新規のプロジェクトに使われているのは2割だけです。

 しかも,新規の予算だけを見ても,本当に経営層が期待している差別化や競争力の確保・強化に投じられているのは,20%のうち12%。つまり全予算の2%しか予算が投下されていないのです(図2)。企業経営の視点から見て,ITリーダーの皆様は、IT投資の現状は明らかにおかしい,と認識するべきです。

図2●日本企業のIT支出は使うべきところに使われていない
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 最近景気が上向いていますが,それでも2005年から2006年におけるIT投資の伸びは約3%弱とみています。経済産業省の調査では,民間企業の設備投資の伸びが15%程度ですから,その4分の1程度です。企業におけるIT,あるいはIT部門の地位・重要度はまだまだ低い,というのが私の感触です。

 こうした環境を踏まえて,日本のITリーダーの皆様に進言したいことがあります。まず連載の前半では,「経営戦略に資するITはどうあるべきか」という観点から,次の提案内容について説明していきます。

■顧客との対話時間を増やすこと
■IT支出の“減量策”を実行に移すこと
■経営目標を利用部門と共有すること
■情報とプロセスの設計にIT部門の工数の半分を投じること