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 東京証券取引所は次世代売買システムの開発で、拡張性の確保を大きなテーマの一つに据えた。2006年1月、いわゆる「ライブドア・ショック」による爆発的な取引増加によって、東証のシステムは負荷の急増に耐えきれずに売買全面停止に陥った。その後も取引時間を短縮して対応しなければならなかっただけに、証券取引所としての信頼を取り戻すには、迅速かつ柔軟にシステムを拡張できることが不可欠だったのである。

 東証の次期売買システムは、サーバーの数を増やすことでシステム全体のパフォーマンスを上げる、いわゆる「スケールアウト方式」を採用することにした。そのため、ベンダー選定では、当初からオープン系に絞っていた。加えて、サーバーごとに処理する銘柄を分け、分散処理することで拡張性を確保する、従来とは異なる運用方式を利用する。

取引銘柄をグループに分割して処理

 東証は、富士通の提案に基づいて、次のように次世代システムの拡張性を確保する計画だ。まず、本番系と二つの待機系を組み合わせた3重化ノードのクラスタ・システムに、銘柄単位で取引処理を分散させる。具体的には、東証で取り扱う約2500銘柄を、取引量が均一になるように10強のグループに分割。あるグループの取引量が増えたら、そこから一部の銘柄を抜き出すと同時にクラスタを追加し、新規のクラスタに抜き出した銘柄を割り当てる。こうすることで、1クラスタの注文処理を1日5600万件以下に抑える。銘柄単位で分散処理することで、取引システムの全面ダウンを回避することもできる仕組みだ。

 2009年後半の稼働時には、クラスタ数は11前後になる見込みだ。単純計算で、システム全体の処理能力は6億件超になる。現行システムの処理能力は1日1400万件。その44倍の処理能力を提供できることになる。

3カ月かかった能力増強を1週間に短縮

 東証はこうしたシステムの能力増強の作業を、1週間以内に終えることができる体制にする計画だ。東証は、ライブドア・ショックから約1カ月経った2月21日、「市場の信頼性確保のための緊急的なシステム能力増強を実施する」と発表した。それでも、売買システムを増強し、1日当たりの注文件数を900万件から1200万件にひき上げることができたのは5月22日だった。結局、東証が取引時間を通常に戻したのは、注文件数などが安定し、システム増強のメドがたった4月24日。3カ月にわたる短縮営業が続いた後である。それだけに東証は、2006年9月に発表した「次世代システム構築の計画概要書」でも、「あらかじめ定めた拡張基準を超えた場合は1週間程度で対応を可能とする」ことを明確にうたっているのである。