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 東京証券取引所は、次世代売買システムの開発プロジェクトを機に丸投げ体質からの脱却を目指している。この決意の裏には、発注者としての責任を果たしていなかったことへの反省がある。

 2005年までの東証のシステム部門では、ITベンダーにシステム開発を依頼する際、RFP(提案依頼書)を書かずにITベンダーに口頭あるいは書面で大まかな要件を伝え、見積りを出してもらうケースが少なくなかった。要件定義の中身は、「現行業務を忠実にシステム化してもらいたい」、あるいは「現在のシステムを参考にしてもらいたい」といったレベル。実質的にはベンダーに要件定義書を作らせていた。

要件定義と検収を自前で

 次世代システムのプロジェクトからは、要件定義書の中身あるいは検収結果についての責任を、原則的に東証が持つように改めた。ただ、東証が次世代システムのプロジェクトにアサインできる専任要員は20人しかいない。この人数で、300万ステップに達する次世代売買システムの要件定義と検収のすべてをこなすのはとうてい無理だ。そこで、ベンダーの技術者にも作業を手伝ってもらうのだが、責任の分担については、契約段階で明確に分けることにした。

 設計段階などに入ってから要件定義書に修整が発生した場合、必ず「仕様変更書」を作成する。工数が増えれば、ベンダーと追加契約を結ぶ。わずか1件の仕様変更でも、「このぐらいはいいだろう」などと、うやむやにすることはしない。開発工数やスケジュールに大きな影響を及ぼすような変更案件は、要員の増加や、他の要件の削減、変更の先送り、稼働時期の見直しなどの対策を考える。

 システムの稼働後に不具合が発生した際は、たとえベンダーのコーディング・ミスだったとしても、検収で見つけられなかった東証が責任を負う。

「品質管理部」が進捗チェック

 プロジェクトの進捗や問題点などは、2006年4月に新設した「品質管理部」が第三者の視点でチェックする。次世代システムのプロジェクトを始めるにあたり、開発工程の節目で品質管理部のチェックを義務付けた新しい開発標準プロセスを確立した。

 品質管理部によるチェックは、設計からテストまでのベンダーが担当する工程でも実施。設計の問題は設計フェーズで解決するなど、次工程に持ち越さないようにする。次世代システムの開発は、この標準プロセスに従って進めるという提案条件をRFPに盛り込み済みだ。

 次世代システムのプロジェクトは、今年1月から要件定義を本格化。6月までに要件を固める意向だ。それから設計・開発に取り掛かり、2008年末までにベンダー主導のテストを完了。東証が成果物の納品を受ける。2009年初めから東証が検収をスタートさせ、同年11月の稼働を目指す。プロジェクトの参加メンバーはピーク時で500人に達する見込みだ。