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 2006年は,YouTubeをはじめとする動画共有配信サービスの利用者が大きく増えました。なかでもYouTubeは,米国発のサービスにもかかわらず,日本からのアクセスも非常に多いことで知られています。他方,TV番組など,著作権者等の許諾を得ないコンテンツも,YouTubeには多数アップロードされています。これは著作権者や著作隣接権者などにとって,無視できない状態です。すでに日本の著作権関連団体がYouTubeに対して,およそ3万ファイルの削除を要請し,さらに,著作権侵害ファイルのアップロードを防ぐ具体策を講じるよう要請するなどの事態となっています(関連記事)。

 日本においても,動画共有配信サービスの始めた企業がいくつか登場しています。ここでも,同様の法的問題が生じる可能性もあります。

 そこで,このような動画共有配信サービスは法的にみてどのような問題があるのか,今後,日本で同様のサービスを展開する上で,法的にどのような対応をとるべきなのかを検討してみたいと思います。

違法コンテンツを速やかに削除すれば直ちに違法とは言えない

 まず,先行してサービスを開始したYouTubeから検討してみましょう。

 YouTubeの合法性については米国でも意見が分かれているようです。合法であるという見解は,米国の著作権法第512条(注1)の,オンライン・サービス・プロバイダの責任制限に関する規定(セーフハーバー条項と呼ばれる)に基づいています。大まかに言えば,「オンライン・サービス・プロバイダがnotice & take down条項 (ノーティスアンドテイクダウン,512条(g)項)に定められた一定の手続に基づいて削除等を行っていれば問題がない。したがって,YouTubeが,著作権者からの通知により速やかに著作権法違反のコンテンツを削除(あるいはアクセス不能に)する対応を行えば法的に問題がない」を,合法性の根拠にしています。

 YouTubeが免責を受けるために,著作権法違反のコンテンツを「速やかに」削除等を行う必要があるとされている点は,今後コンテンツの量が増加した場合に問題になり得るところです。しかし現時点では,YouTubeは著作権者や著作隣接権者からの削除要請に対応しているようなので,直ちに違法であるとは言えない,と考えられます。

 オンライン・サービス・プロバイダの責任制限が認められているのは,オンライン・サービス・プロバイダがサーバーにアップロードされる膨大なデータをコントロールする能力を有しているわけではなく,また,サーバー内のデータが違法なものか否かをチェックさせることが非現実的であること等に基づきます。

 しかし,違法コンテンツか否かをチェックする能力がないからと言って,全く著作権法上の責任を負わないわけではありません。米国の判例法に基づき,「代位責任」や「寄与侵害責任」が認められることがあります。このうち「代位責任」は,侵害行為を監督する権限及び能力及び侵害行為により直接の経済的利得を有する場合に認められるもの。一方の「寄与侵害責任」は,侵害行為の認識またはその可能性及び侵害行為への実質的関与がある場合に認められるものです。

 動画共有配信サービスとは異なりますが,音楽共有サービスを提供していたNapster(現在の同名のサービスとは異なる)について,著作権侵害を認めた判決(代位責任,寄与侵害責任とも肯定)や,P2Pファイル交換ソフト開発会社に対する責任を認めたGrokster事件連邦最高裁判決(注2)もあります。著作権法違反については,侵害した当人だけでなく,間接的に責任を問われる場合があるのです。

 なお,代位責任や寄与侵害責任が生じる場合にセーフハーバー条項の適用があるのかについて,Napster事件やGrokster事件では明確な判断は示されていないようです。ただ,セーフハーバー条項に基づく主張が認められていれば責任が否定されるはずなのですが,2つの事件とも責任が肯定されているので,セーフハーバー条項の適用は難しいのかもしれません(注3)

 YouTubeに対し,代位責任や寄与侵害責任(あるいはGrokster事件最高裁判決が示したような直接侵害を助長・誘因したことに基づく責任)が認められるかといえば,基本的には,セーフハーバー条項を遵守していれば問題がないように思います。ただし,違法コンテンツの削除が追いつかず,結果的に違法なコンテンツが流通していることを漫然と放置,あるいはそのような状態を積極的に利用しているというように認定されれば,直接侵害を助長していると認定される可能性も残ります。このため,著作権者や管理団体との間で今後も緊張関係が続くのではないかと思われます。

 YouTubeは,違法コンテンツを自動的に認識する技術を開発しているようで,著作権者等と提携する動きも始めています。実質的に訴訟等のリスクを下げる努力をしているのですが,これらの行動はそれ自体が代位責任等を否定する理由にもなり得ます。法体系は異なりますが,日本の事業者にとっても,著作権侵害の責任を回避する上で,YouTubeのやり方は参考になるところではないかと考えます。

(注1)米国著作権法の邦訳については,著作権情報センターのサイトに掲載されています
(注2)いずれの判決も井上雅夫氏のサイト「プログラム関連米国判決集」に邦訳が掲載されています
Napster事件判決Grokster事件判決
(注3)Napster,Grokster事件はどちらもP2Pファイル交換システムについての判決ですので,そもそもオンライン・サービス・プロバイダに該当するのかという問題があります(Napster事件の判決では,適用に問題点があることを指摘している)。この理由により,セーフハーバー条項の適用がなかった可能性がありますので,P2Pを採用していないYouTubeでは議論が当てはまらない(セーフハーバー条項が適用しやすい)という違いがあります


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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)

【略歴】
 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。
 2001~2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。

【著書】
 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。

【ホームページ】
 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。