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ガートナー ジャパン
リサーチ グループ バイス プレジデント
山野井 聡

 最終回では,「IT部門みずからを変えてみる」と題して,皆さんの組織を変えていくためのアイデアをご提示したいと思います。

 私は日本のCIO「クラス」の方々にしばしばインタビューします。あえてここではCIOと言わず,CIOクラスと表現します。そう表現する理由は,皆さんの名刺に「CIO」と書いている方は,そんなにいらっしゃらないからです。

 ガートナーの調査では,日本のいわゆる大企業で専任のCIOを任命しているのは,22.5%に過ぎません。大企業でさえ,専任のCIOがいるのは5社に1社なのです。

 そして,専任のCIOの8割が現業部門の出身です。つまり,IT部門の生え抜きではなく,営業や生産など現業部門で働いていらっしゃって,あるタイミングでCIOになったという経歴を持っています。

 こうした現状を見ていて,私は「日本の“CIO”の事情は,米国のCIOとは違う」という感想を持ちました。違うと言っても,別に日本が悪くて米国が良いという意味ではありません。むしろ,日本のこうした事情には,プラスの面があると言いたいのです。

「スーパーマン」でなくてもいい

 米国のCIOは,乱暴な言い方をすると「CEOのスタッフ」です。つまり,経営者のサポート・メンバーとして雇用され,経営陣の立場から現場に指示を出します。米国のCIOは,テクノロジー出身の人材が多く,専門家としての色合いが強いように思います。

 一方,日本のCIOはこれとは逆の位置にいます。良い悪いは別にして,日本のCIOは「現場の代弁者」です。現場の事情を知り,経営者に物申す立場です。しかも過去の経歴から,利用部門の視点で考えることができます。同じCIOという言葉を使っていますが,中身を見ると,そのスタンスは大きく違います。

 私は日米どちらのCIOが優れているかという「比較談義」には,あまり興味がありません。それよりも,「CIOになる人材をどう育成するか」という話題の方が魅力的ですし,重要だと思います。CIOはスペシャリストとゼネラリストを兼ねた存在ですから,かなり高度で,かつ広範なスキルや知見が求められます。要するにスーパーマンのような人を育てることになるわけですから,人材のモデルは構築できても,汎用的な育成プログラムなどは存在しません。

 そこで,「CIOは役職名ではなく機能である」と考えて,2~3人でCIOの役割を分担して務める,というアプローチもあり得ると個人的には考えます。実際,現業部門出身の常務取締役と,IT部門出身の経営執行役のコンビでCIOを担う,あるいは,システム担当常務と,財務部門出身のシステム部長がタッグを組んでいる企業があります。この方が,合理的に課題に対処できることもあります。必ずしも,米国型CIOでなくてもいい,と私は思います。

カルチャーミックスを志向する

 あるべきIT人材のモデルを,ガートナーでは「バーサタイリスト」と称しています。バーサタイリストは造語で,日本語に訳せば「多能人」といったところでしょうか。一つの専門に閉じることなく,ほかの専門にも詳しい。そこまで達していなくても,自分以外の専門について興味を示し,他の専門の人と一緒に仕事ができる人。IT部門はこうした人材を獲得する必要があるでしょう。

 ITへのニーズが多様化している今,IT部門には「カルチャーミックス」が求められています。すでに実施しているIT部門は多いですが,例えば現業部門にIT部門を派遣して現場を知ってもらうというのは一つの理想的なアプローチです。

 もっと大胆なカルチャーミックスを試みてもいいでしょう。例えば,25歳未満の「デジタル・ネイティブ」を積極的に採用する。その原理など知らなくとも,コンシューマITを日常生活で難なく使いこなす人々を,ガートナーはデジタル・ネイティブと呼んでいます。「この人々は間違いなくデジタル・ネイティブだ」と言えるのは,今の子供たちです。ですが,25歳未満の層にも,結構な人数がいらっしゃいます。

 しばしば日本ではテクノロジーを使いこなす若者を「アキバ系」などと呼んでいますが,実はそうした若手の中に,新しいビジネスの種をもたらしてくれる人がいるかもしれません。ITリーダーは自らの組織に,新鮮な感覚を持ち,日常生活でテクノロジーを使いこなすことに長けた,若いスタッフを加えることも必要でしょう。

 また,女性を積極的に採用するのも良いでしょう。日本では,女性のCIOにお目にかかったことはありません。海外では,たくさんいらっしゃいます。

 あるいは,いわゆる外国人の方を採用する。オフショア開発はよく見られますが,自らのIT組織の構成メンバーとして海外の方を採用するのも,あって良い策ではないでしょうか。

 8回にわたり,さまざまなご提案を差し上げました。この連載を読んでくださったITリーダーの皆さんであれば,きっと今すぐ行動できるはずです。最後まで読んでいただき,ありがとうございました。