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 「SharePoint Server 2007」の特徴の1つは,「ブログ」や「Wiki」,「ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)」,「RSS」といった,インターネットで流行のテクノロジを取り入れたことである。これによって,日本語変換ソフト「MS-IME」ですら,「みんなで編集した辞書をみんなで共有する」という「WikiIME」に進化する可能性が出てきた。

 前回の連載「『打倒ファイル・サーバー』にマイクロソフトが費やした10年」で振り返ったように,SharePoint Serverは基本的に,社内でOfficeファイルを共有する「Office専用Webサイト構築ソフト」である。しかし,それだけではなかなか売れなかったのも事実。そこで,流行の目新しい機能を盛り込んだ--。SharePoint Server 2007のことを,そう冷めた目で見ることも可能である。しかし,それでは事の本質を見誤るだろう。

 企業システムでも今後,ブログやWiki,SNS,RSSなど新技術の重要度が増すのは間違いないだろう。正直に告白すると,筆者はこれらのツールがインターネットに登場した当初,かなり冷めた目でこれらを見ていたものである。

 ブログやWikiは,ただの「コンテンツ・マネジメント・システム」であり,単なるツールを極度に持ち上げる風潮に首をかしげていた。また筆者は,「mixi」のIDが3000番台というかなり初期からのmixiユーザーなのだが,招待された理由が「参加するフットサル・チームのスケジュール調整」だったため,かなり長い間,mixiのことを「使いづらいグループウエア」ぐらいにしか思っていなかった。RSSについても,「記事の見出しが見たいなら,Webサイトに行けばよい」と思っていたクチである。

 その後のブログやWiki,SNSの隆盛はご存じの通りであり,筆者はブログやWiki,SNS,RSSの本質を,大いに見誤っていた。ブログは,その使い勝手の良さから,個人の情報発信力を大いに高めた。Wikiは,インターネット上に無数のデータベース(ただのHTMLファイルの集合ではなく,正しく分類されて,検索も容易なデータベース)を生み出した。SNSは,新しい交友関係を次々と生み出している。

 企業システムとブログやWiki,SNSとの関係にも,同じようなことが言えるだろう。多くの企業には「社内掲示板」や「会議室」のようなネットワーク上の情報共有手段が導入されているし,グループウエアを使ってスケジュール共有などをしている人も多い。ブログやWiki,SNSは,社内掲示板やグループウエアなどとバッティングする要素もある。それでも,「ブログやWiki,SNSでなければできない」ことがあるのも事実である。全国民がブログやWiki,SNSに熱心ではないように,全ての企業に適したソリューションだとは思わないが,今後,企業に普及していくのは間違いないだろう。

 RSSだけは少し様相が異なる。SharePoint Server 2007には,ドキュメント・ライブラリ(ファイル・サーバーのようなもの)などの新着情報をRSSで配信する機能が搭載されている。いちいちファイル・サーバーや共有カレンダーを確認しなくても,新着情報を一元管理できる。Webサイト上のRSSは,諸般の事情により記事の要約しか配信していないことが多いが,SharePoint Server 2007の場合はそうではない。新着情報の入手が,容易になるだろう。

Officeと新技術の相乗効果に注目

 最大の問題は,既に多くのベンダーが,社内ブログや社内Wiki,社内SNSを狙っていて,専用の構築ソフトや運用サービスを手がけている現状で,SharePoint ServerがブログやWiki,SNSを取り込む意義である。専用のブログ・ソフトやWikiソフトではなく,SharePoint Serverを使わなければならない理由はあるのだろうか?

 SharePoint Serverが,ブログやWiki,SNSを取り込む最大の意義は,これらの新技術と「Microsoft Office」の他の製品とを連携させることにある。実例を1つ紹介しよう。

 Office 2007付属の日本語変換ソフトである「IME 2007」には,新しく「SharePoint辞書」という機能が追加された(写真1)。これは,IMEのユーザー辞書を,SharePointサーバーを使って共有する機能である。辞書の内容はWikiのように,Webブラウザを使ってユーザーが編集できる(写真2)。編集した結果は,各ユーザーの辞書にすぐ反映される。

写真1●ネットワーク上にある辞書を利用できるIME 2007の「SharePoint辞書」

写真2●SharePoint辞書の内容は,Webブラウザを使って編集できる

 SharePoint辞書は,「社内用語の表記を統一したい」「製品名の表記を統一したい」といった時に非常に有効だ。従来,ユーザー辞書を社内で統一させる場合は,ユーザー辞書ファイルを全ユーザーに配布する必要があった。この方法では,辞書の内容を変更した際に,ユーザー辞書ファイルを配り直さなければならなかった。それが「SharePoint辞書」なら,ユーザー辞書ファイルを配布しなくても,辞書の共有や内容の変更ができるのだ。

 筆者はこのSharePoint辞書に,大きな可能性を感じている。百科事典がWikiによって「WikiPedia」という「最新用語やスラング,百科事典に載らないようなマイナーな情報にも詳しい百科事典」に進化したように,日本語変換ソフトのIMEも「WikiIME」に進化できるのではないだろうか。

 正確に言うと,SharePoint辞書はWikiの機能そのものではない。また,WikiのようにSharePoint辞書をオンライン編集できる機能は,SharePoint Server 2007の姉妹製品である「GroupBoard Workspace」にしか,現状では搭載されていない。

 それでも,「SharePoint辞書」がWikiのアイデアをOfficeに取り込んだ好例であるのは間違いない。Officeには,まだまだ進化の余地がある。ブログやSNSと連携したOfficeの進化に,今後は期待したい。