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 ITフィールドには有望な技術が次から次に登場してくる。しかし、本当に最高ランクの性能を発揮したり、究極の生産性向上に結びつくような技術となると、数えるほどしかないようである。富士通の石田一雄経営執行役常務も、「大ブレークする技術や製品が非常に少なくなってきた。これもユーザーのIT投資が湿りがちになる一つの要因ではないか」と分析する。“技術不作”がIT業界を覆っている。

 そういう中で、企業の情報システム部門の幹部やCIOが注目している技術はあるのだろうか。「サーバーの仮想化技術とSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が一押しの技術として着目され始めた」と、RITAコンサルティングの伊東玄主席研究員が指摘する。仮想化はサーバーの稼働率を引き上げるソフト技術。SaaSは、インターネットでソフトをサービスとして配信する技術のことである。「二つのツールは情報システム部門に、発想を転換するきっかけを与えてくれる」(伊東氏)。

 サーバー仮想化技術を使うと、どんな効果が期待できるのだろう。まず、個別のサーバーで実行してきた、UNIXやLinux、Windowsなどの複数のOS、あるいは業務ソフトを同時に稼働させることができる。そのため、サーバーの稼働率が高まる。一般的に1種類のOSで動かしてきた従来の分散型サーバーはフル能力の10~20%しか使用していない。だが、仮想化技術で稼働率は50%程度まで向上するという。

 情報システム部門は仮想技術のおかげで、サーバーを統合しやすくなる。運用環境の複雑さを軽減し、長期的には、購入するハードの数を減らすことも可能だ。従来の技術でサーバー統合を進めてきた企業でも、仮想化によってOSの壁を越えたサーバー統合が可能になる。

 サーバー統合とサーバー仮想化の微妙な違いはこうだ。サーバー統合は、以前より少ない数のサーバーで、同一あるいは類似の業務ソフトを数多く走らせる。プリントやファイル・サーバーが典型だ。これに対し、仮想化は稼働する業務ソフトの種類や数を増やせる。そのため、業務処理の柔軟性を高め、少ないサーバーで仕事量の増減に対応できる。

 もう一つのトレンドであるSaaSは、業務ソフトを購入して自社のサーバーに搭載するという利用モデルからの変革だ。サービス・プロバイダがインターネット経由で業務ソフトを提供、従量課金する。複数の業務ソフトを組み合わせたり、自社用にカスタマイズも可能だ。SaaSの利用は、自社購入方式に比べコストが30~40%節約可能という説もある。米マッキンゼーは、1年以内にSaaSを利用する企業は38%に達するとの調査結果を発表した。

 富士通の石田執行役常務によれば、SaaSはソフト・サービス業界の期待の星だ。同社は自前のERPパッケージをSaaS展開できるように手直し中。年度内にはSMB(中堅・中小企業)向けにサービスを開始する計画だ。だが、SaaSの対象はSMBだけではない。SaaS先駆のセールスフォース・ドットコムによると、1000ユーザーを超える大企業がすでに国内で5社。利用開始までのスピードや、ソフトに関する特別な技能を社内で維持する必要がないというのが採用の理由だ。