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 日本のネットマーケティングの先進事例として引き合いに出されることが多い日産自動車の「TIIDA BLOG(ティーダ・ブログ)」。2004年9月に開設されたこのサイトの構築と運営を受託したカレン(東京都千代田区)の四家正紀氏に、2007年現在のマーケティングコミュニケーションの在り方について聞いた。

 ネットを活用したマーケット・コミュニケーション事業などを手がけるカレンで広報室長と企画本部長を兼務する四家氏は、「図解 ブログ・マーケティング」や「ビジネス・ブログ・ブック」の著者として知られる。TIIDA BLOGが登場してからすでに2年以上経つ。この間、「mixi(ミクシィ)」の台頭などが引き金となって、ブログは特に20代~30代を中心に市民権を得た感がある。

(聞き手は杉山 泰一=日経情報ストラテジー)

ネットを活用したマーケット・コミュニケーション事業などを手がけるカレンの四家正紀・広報室長兼企画本部長
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ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)、電子掲示板などの利用が非常に活性化し、口コミが簡単に広がるようになりました。企業から見ると消費者とのコミュニケーション手段が多様化するいま、商品宣伝を効果的に行うにはメディアをどう使ったらいいのか、悩ましい状況です。

 「ネットマーケティングで成果を出している企業には、もともと(テレビCMなどを活用した)マスマーケティングに疑問を持っていたところが多いようです。マスマーケティングにも利点はありますが、課題もあります。理想を言えば、本来はどんな商品であっても、お客様と相対で接して宣伝すべきです。マスマーケティングはそうした部分を捨ててきた。ネットを活用すれば、そこをある程度までブレイクスルーできます」

 「しかも、テレビに対する消費者の信頼は年々薄れつつあります。それでも『発掘!あるある大事典』に代表される情報番組は、科学的な根拠を示しながら効果を言い切るやり方で、消費者の信頼を得ていました。でも今回の事件で、消費者はいよいよ本当にテレビを信じなくなるかもしれません。その結果、消費者はいままで以上にブログやSNSなどのCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)に頼るようになるのではないでしょうか」

 「それでは企業のマーケッターはどうしたらいいのか。担当した商品をどのくらい売りたいのかをまず考え、それに応じたアテンション(注意)を喚起する戦略を立てればいいのです。具体的には、ターゲット層がメディアに接触する時間で判断します。テレビの視聴時間が長い層に売るなら、テレビは重要でしょう」
 
 「ただしここまでは、商品に対するアテンションを喚起するという入り口だけの話です。特に高額の商品や他社の商品との比較が大切な商品では、マスメディアからの情報はたくさんある情報の中の1つでしかなく、いまやインターネット上には価格や機能などを比較する場がたくさんあります。以上のような環境にある現在、企業にとって大切なのは『消費者に発言してもらうこと』です」

確かに「発掘!あるある大事典」での事件は、マーケティング業界におけるエポックメーキングになるかもしれませんね。消費者のマスメディアに対する信頼が損なわれてしまえばテレビ離れが進み、ネットを介した口コミの重要性が高まるというのはうなずける話です。それでは、どうやって消費者にネット上で発言してもらえばいいのでしょうか。

 「手っ取り早いのは、お金を払ってブログに書いてもらうことです。でもそんな安易な方法は採るべきではありません。『テクノラティ』のようなブログ検索サイトを使って特定商品を検索してみると、似たような内容のブログがわーっと表示されることがあります。それを見た消費者はどう思うでしょうか」

 「重要なのは、ブロガーが自然と発言しやすい環境を用意することです。例えばトラックバックをしやすくしたり、ブログに書きたくなるようなネタ(情報)を継続的に提供するのです。TIIDA BLOGの例で言えば、批判的な内容のトラックバックがあっても削除しないし、日産の担当者はブログ上で名前を名乗って親近感を高めたり、ブログの内容も固い話ばかりにしない、といった工夫をしています」

 「それからもう1つ重要なことがあります。それはテレビCMや雑誌広告、ウェブサイトなど複数のメディアを使って宣伝を仕掛けるときに、コンテキスト(文脈)をしっかり保つことです。マーケッターは(商品のセールスポイントなど)自分が伝えたいことが何であるかを明確にしておき、例えばテレビCMを見てサイトに来た消費者が違和感なくそこにある情報を読んでいき、最終的には購買行動をかき立てられるように各種コンテンツを作るのです。こうした意思こそが、これからのマーケティングで一番大切なことだと思います」