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 今回まとめた報告書では、響タグの性能試験などの結果も詳細に盛り込んだ。パレットに載せた段ボール箱に張り付けたICタグの一括読み取り実験の結果などを報告した。「リーダーの設置方法などノウハウに当たる情報も盛り込んである。そうした情報を提供することがUHF帯ICタグの普及を助けると考えた」(日立の中島氏)という。性能試験には響タグの最終試作品を使った。

 まず円偏波と直線偏波のリーダーアンテナを使って、響タグの通信距離を測定した。直線偏波のアンテナでは、ICタグが特定の方向を向いていないと(縦か横かなど)読み取れない。円偏波はICタグの向きに関係なく読めるが、通信距離が短くなる。その円偏波のアンテナを使っても、最大3.01mの距離から読み取れ、2.13mの距離から書き込めることを確かめた(表2、3)。距離の測定は、日米欧で使うことを考えて、各国それぞれの周波数帯で行った。

表2 読み取り時の響タグの最大通信距離 電波暗室で響タグの最小動作電力を計測し、そこから最大通信距離を計算した。響タグの通信距離を実測すると、計算値以上の距離で通信できた。

表3 書き込み時の響タグの最大通信距離 表2と同じ。

 次に、空の段ボール箱にICタグを張り付け、コンベヤに流したときの読み取り性能を調べた。リーダーは、コンベヤの側面の両側に2台と、コンベヤの真上に1台取り付けた。この状態で、ICタグを段ボール箱の側面に張り付けた場合と上面に張り付けた場合、段ボール箱を45度、90度、270度などとコンベヤ上で回転させた位置に置いた場合、コンベヤの速度を76m/分、100m/分、180m/分に変えた場合について、すべての組み合わせで実験したところ、どの場合も間違いなく読み取れた。

 3番目に、ICタグを張り付けた空の段ボール箱をパレットの上に、50個、100個、200個と載せてコンベヤに流した場合も調べた。コンベヤの速度を50m/分、100m/分、200m/分、ICタグリーダー/ライター間の通信速度を(上り下りとも)40kb/s、160kb/sと変えてみた。この実験では、100%の読み取り率は得にくかった。コンベヤが50m/分、通信速度が160kb/sであれば、段ボール箱が50、100個の場合、100%読み取れた。200個の場合は88%だった。通信速度を40kb/sに落とすと50個の場合が98%、100個が94%、200個が73%となった。コンベアが200m/分、通信速度が40kb/s、段ボール箱が200個という最悪のケースでは26%だった。なお、この読み取り率は段ボールの中に商品を入れると、さらに悪くなる。電波が通過しにくくなるからである。

 こうした大量のICタグの一括読み取りは、響タグに限らず、100%の読み取りは期待できないのが実際のところだ。段ボール箱をパレットに一つずつ積む際に読み取るようにするなど、運用による対策が求められる。今回の報告書では、こうした利用ノウハウを盛り込んだ。

参考文献
日立製作所、「平成17年度エネルギー使用合理化 電子タグシステム開発調査事業報告書」、第1分冊/第2分冊、2006年7月.



本記事は日経RFIDテクノロジ2006年10月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです