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 5年ぶりのリリースとなったWindowsの新版「Vista」。海外メディアでは昨年末から,「Microsoftによる大規模な製品リリースはこれが最後」といった観測を相次いで報じていた。同社CEOのSteve Ballmer氏は,そうした考えを払しょくすべく,米国時間1月29日に開いたVista/Office 2007の発売イベントでWindowsの今後の可能性について言及した。Vistaにはまだまだ発展余地があり,技術革新はこれからも必要だと強調した。

 ただ2008年7月をめどに経営の一線から退くBill Gates氏にとって,同社の2大主力製品の同時リリースはこれが最後となる。折しもVistaの開発責任者で,長年同社でプラットフォーム事業を指揮してきたJim Allchin氏はVistaの発売を機に同社を退社した(関連記事)。Microsoftは今後どのような方向に進んで行くのだろうか。95年のWindows 95,01年のWindows XP,そしてVistaへと,それぞれの時代でその役割を変えてきたWindows。Windowsの今後の位置付けとは---。今回は,Vistaの発売に関連してさまざまに報じた海外メディアの記事などを見ながらレポートしてみる。

「Vistaは質素なデビュー」


 「Windows VistaとOffice 2007の発売は落ち着いたスタート」(Windows IT Proの記事),「Vista,質素にデビュー」(New York Timesの記事)。発売記念イベントの直後から海外メディアにはこんな見出しが躍った。WindowsとOfficeの新版が同時にリリースされるのは実に12年ぶり。そんな理由から,かつての熱狂的なイベントと比較し,この日の“静けさ”を報じたのだ。

 いわく,「スーパー・ボウルとのタイアップ広告はなかった」「エンパイア・ステート・ビルのイルミネーションはWindowsカラーには染まらなかった」「深夜の行列はわずか40分ほどで消えた」---。

 「Bill Gates氏が訪れた欧州のプレゼンテーション会場に集まった報道陣はわずか100人。01年のロンドンのXPのイベントでは1000人を超える報道陣が集まっていたのだが」---こんな文章もつづられた。

 しかし,これらはMicrosoftのキャンペーンが失敗に終わったことを意味するものではない。今回MicrosoftはVistaのマーケティングに5億ドルの費用を投じたが,同社が注力した媒体は95年当時まだ普及していなかったインターネットだった。MySpace.com上では人気コメディアンを起用したキャンペーンを展開し,「Vanishing Point」と呼ぶパズルゲームのオンライン・イベントや,写真/ビデオ共有のサイトを利用したキャンペーンもやった。これらには合計20万人近い人が参加したという。

 人々の生活にパソコンが十分に浸透し,多くが高速インターネットの恩恵を享受している今,Microsoftが訴求したのはかつてのような「パソコンの便利さ」や「Windowsのコンセプト」ではなかった。それは新しくなったWindows Vistaそのもの。Vista機能のディテールだった。「キャンペーン活動の重点がここに置かれたのは自然なこと」---。前述の2つの記事はそう分析している。

 任天堂の「Wii」やソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation 3」のように長い行列ができなかったのは,Microsoftが十分にVistaを用意していたからだという。Vistaは3万9000店もの店舗で発売された。ゲーム・コンソールのように品薄状態でもなく,またAmazon.comのようなネット販売でも手軽に購入できるようになった。ダウンロード提供という販売形態も用意した。すべてがWindows 95とは異なる。今のWindowsは,かつてないほどの販路が広がっており,一般に浸透している。Windowsはすでにそういう成熟製品なのだという(New York Timesの記事

成長企業から成熟企業へ


 このことは,Microsoftという企業についても言えることと思える。04年,Microsoftは大規模な株主還元を実施した(関連記事)。これは同社がもはや成長企業ではなくなった証しと考えられている。企業の成長率ではなく,その成熟度で株主に利益還元するという方針にシフトしたこの時点から,Microsoftは成熟企業になったのだ。

 またこの04年は,MicrosoftとSun Microsystemsが全面和解した年でもある。この年はNovellとも和解に達するなど,Microsoftがそれまで抱えていた数々の係争が一気に解決された年である。加えてパソコン・メーカー各社が過去最高の業績を報告するなど,WindowsやMicrosoftを取り巻く市場環境が極めて平穏になった。

 Windowsは競合他社を寄せ付けない圧倒的な普及率を誇り,Microsoftはみごとに成熟企業へと変ぼうした。そんな時代背景を中心にVistaは開発されてきた(関連記事)。