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岩井 孝夫・佐藤 三智子

企業の大小を問わず,情報システムは社員にとって身近な存在になっている。しかし,システムが本当の威力を発揮しているかというと疑問である。本連載では,情報システムの利用者や経営者にとって本当に役に立つ道具に育て上げるための「工夫」に焦点を当て,これらを「15の鉄則」として紹介していく。鉄則は,情報化プロジェクトにかかわるメンバーに必要な「共通認識」と「やる気の維持」,そして「道具の準備」に大別できる。


 本サイトで,「失敗しない中堅企業の情報化」と題し,専任の情報システム担当者をなかなか持てない中堅企業にあって,情報化をどう乗り切っていくかについて連載してきた。具体的には,企画・開発・運用・定着といった各段階で「失敗に結びつく」問題点の数々を,簡単な事例と対応策を通して把握してもらう形をとった。

 中堅企業の方々が,失敗につながる危険に対する防御措置をある程度想定して情報化を推進することで,トラブルの発生を防ぐとともに,万一問題が発生した場合,筆者が紹介した対応策を参考にしていただこうという狙いであった。

 これに対し,今回の新連載では,情報システムをシステム利用者や経営者にとって本当に役に立つ道具にするための「工夫」に一層焦点を当ててみたい。つまり,現場や経営者が喜ぶシステムにどう育てていくかである。中堅企業のシステム担当者はもちろん,大企業の情報システム部門の方々にも役立ててもらえればと思う。

 システムに正しいデータを入力すれれば,必ず正しい答えが出てくる。しかし,現実の世界はそう簡単に割り切れない。システム開発者が「機能・性能・安定性・使いやすさのすべてで100点満点」と太鼓判を押した情報システムであっても,利用者や経営者からわずか10点にしか評価されないということがざらに起こる。だからこそ,稼働時の実態は50点であっても,利用者や経営者が「90点のシステムだ」と感じる工夫が必要になる。

 情報化に際しては,「上流工程からしっかり作っていかないとよいシステムはできない」と信じられていた。しかし,利用者や経営者は時として,開発者の常識を覆した非常識なことを求める。そして,その非常識な要請がその企業に本当に求められている情報システムの姿である場合が少なくないのである。多くの場合,利用者や経営者にとって,最新鋭のハードやソフトを使っているかどうか,最新かつ精緻な情報処理技術が導入されているかどうかは,主たる関心事ではない。

 そこで,「現場が喜ぶ情報化 15の鉄則」と題し,利用者・経営者の視点から,役立つシステムとは何かを考えていきたい。経営に役立ち,現場や経営者が喜ぶ情報化のポイントを毎回,1項目ずつ解説していく。今回はイントロダクションとして,鉄則の候補を挙げた。

■メンバーで共通認識を持つ

 役立つシステムに育てる鉄則を,システム作りや情報化プロジェクトにかかわるメンバーに必要な「共通認識」と「やる気の維持」,そして「道具の準備」の三つに大別してみた。

 まず,情報化やシステム構築に取り組む経営者,利用者の代表,そしてシステム部門が持つべき共通認識に焦点を当てたい。よくできている,よく使われる情報システムを実現できるかどうかは,それにかかわる人々の「思い」にかかっている。参加者の思いにずれが無いようにしておくことが何よりも大切である。

(1)目的の理解に十分な時間を

 何のためにシステムを作るのかを十分理解している人が多ければ多いほど,長距離マラソンである情報化プロジェクトの中で落伍したり,道に迷ったりする可能性が小さくなる。途中でいろいろな誘惑に出会っても,情報化の目的さえ,しっかり把握していれば道を踏み外すことはない。

 とりわけ,構築中の情報システムによって求めているものが「業務改善」なのか「業務改革」なのかは重要である。業務改善なら今までの延長で効果を挙げていけばよいが,業務改革ならやり方を抜本的に変えなければならない。「改革」を求められているのに実際にやっていることは「改善」ということが往々にして起こっている。

(2)「Give & Take」でやり抜く

 システムの構築はとかく分業になりがちで,同じ場所にいて仕事をしていながら背中合わせの人が何をやっているのかよく分からないというケースが比較的多い。こうした状態のまま開発を進めていくと,個々人は正しいことをやっていながら,システムとしては整合性のないものが出来上がってしまう危険がある。

 共同で仕事をする場合,一方はいつも与えるだけで,もう片方が常にもらう側では,与えるほうにフラストレーションが溜まる。システム作りでは特に,Give & Takeを忘れず,プロジェクトに参加しているメンバーの風通しをよくする必要がある。

 また,プロジェクトのメンバーに対し,「参加することに意義がある」のではなく,「結果がでるまであきらめず最後までやり抜く」ことが至上命令であると認識させておくべきだ。

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